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劇症肝不全の頭蓋内圧コントロール [critical care]

Critical Care Medicine 2008年8月号より

Results of a protocol for the management of patients with fulminant liver failure.

脳浮腫は劇症肝不全の主死因である。肝性脳症グレード4の患者の80%に脳浮腫が認められる。脳浮腫の指標として精度が高いのは頭蓋内圧亢進である。頭蓋内圧が20mmHg以上である場合を頭蓋内圧亢進とする。劇症肝不全患者には頭蓋内圧モニタリングの使用が推奨されている。頭蓋内圧モニタリングは治療法の選択に役立ち、神経学的予後がより良い患者に優先して肝移植を行うことができるのだが、一方で頭蓋内出血の危険性が上昇する。頭蓋内圧を低下させる治療法として、過換気、マンニトール、低体温およびバルビツレートが挙げられる。しかし、いずれについても臨床的転帰を改善するという結果は得られていない。本研究では劇症肝不全の治療プロトコルを作成し、その有効性を検証した。移植候補患者の神経学的転帰が良好な状態での生存を主要転帰とした。このプロトコルの特徴は、頭蓋内圧モニタリングの使用と標準化された止血療法および頭蓋内圧管理の実施である。

肝疾患の既往がなく、黄疸出現から二週間以内に肝性脳症および凝固能障害に陥った症例を劇症肝不全とした。そのうちAmerican Association for the Study of Liver Diseases criteriaの肝性昏睡グレード3-4の患者を対象とした。以下のように管理を実施した。

頭蓋内圧亢進予防のための対策
20°以上の頭部高位、興奮時はフェンタニル25-200mcg/hr静注、清拭・体位変換・気管内吸引は最低限しか行わない、腎機能障害の場合は持続的血液浄化法を実施、血清ナトリウム濃度が145-150mmol/Lとなるような輸液管理、脳還流圧(CPP)が判明するまでは平均動脈圧が75mmHgを上回るようにノルエピネフリンまたはフェニレフリンを投与

止血療法
頭蓋内圧モニタ設置前に止血療法実施。血小板数>100,000/mm3を目標に単一ドナーからの血小板製剤を投与。活性化第Ⅶ因子(40-90mcg/kg静注)とFFPはPT<16秒を目標に投与。フィブリノゲン値100mg/dL以上を目標にクリオプレシピテートを投与。肝不全および腎不全による血小板機能低下を軽減するためデスモプレッシン(30mcg/kg静注)を投与。血小板数、PT、フィブリノゲンは12時間ごとに測定し、必要であれば目標値を満たすように各製剤を投与した。

頭蓋内圧モニタ
頭蓋内圧モニタ(Codman MicroSensor)は脳神経外科医が局所麻酔下に非優位半球の前頭葉に設置した。設置後は頭蓋内圧(ICP)とCPP(=MAP-ICP)を持続的に監視した。

頭蓋内圧が20mmHg以上になった場合、プロトコルで定められた治療法を実施した。プロトコル中の治療法の実施の詳細については担当集中治療医の判断に任された。

頭蓋内圧亢進時の治療プロトコル
頭蓋内圧>20mmHgが5分間以上つづいたら以下の治療を段階的に開始する
・CPP>60mmHgを目標にノルエピネフリンまたはフェニレフリンを投与する。
・マンニトール1g/kgをボーラス投与する。血清浸透圧<320mOsm/kgならば追加投与してもよい。
・PaCO2 30-35mmHgを目標に過換気にする。
・冷却ブランケットを使用し核温33-34℃を目標に低体温にする。筋弛緩薬が必要であればシスアトラクリウム0.2mg/kgをボーラス投与 後、3mcg/kg/minで持続投与する。TOF2/4となるように投与量は調節する。
・ペントバルビタール5mg/kgをボーラス投与。必要であればICPを観察しながら3-5mg/kgの追加投与を繰り返す。
・血清Na濃度を145-155mEq/Lに維持するのに必要なナトリウム投与量を計算し3%食塩水を投与。

対象となったのは22名。平均年齢は32.7歳(15歳-56歳)で、17名が女性であった。劇症肝不全の原因は、アセトアミノフェン中毒12名、A型肝炎3名、B型肝炎1名、抗痙攣薬、サルファ剤による薬剤性過敏症症候群各1名、ウィルソン病1名であった。18名が移植候補者となり、そのうち9名がICPモニタ設置3日後(中央値; 1-6.5日)に肝移植手術を受けた。ICPモニタによる出血性合併症の精査ができたのは17名であった。ICPモニタ設置部位の頭蓋内出血があったのは3名で、2名が前頭葉の血腫、1名が硬膜下血腫であった。このうち1名は神経学的後遺症を残さず生存した。2名は敗血症で死亡した。

21名(95%)に頭蓋内圧亢進が認められた。頭蓋内圧亢進エピソードは全部で82回あり、そのときの平均頭蓋内圧は33mmHg、持続時間は60分であった。29回(36%)が患者搬送、気管内吸引、ACSで発生したと考えられた。4名の患者にACSの解除が行われた。

治療プロトコルにより78回(95%)の頭蓋内圧亢進において改善が認められた。プロトコル実施中に4名が死亡した。

全生存率は22名中12名(55%)であった。18名が移植候補となった。そのうち12名(67%)が生存し、11名は神経学的転帰が良好であった。頭蓋内圧亢進が認められた移植候補患者17名のうち11名が生存し、10名は神経学的転帰が良好であった。移植後30日生存率は88%であった(移植後死亡1例。肺炎で死亡。)。移植候補となったが移植が行われなかった9名のうち5名は死亡した。移植候補とならなかった患者4名は全員死亡した。今回の対象患者では、脳浮腫もしくはICPモニタによる頭蓋内出血が直接死因であった症例はなかった。4例では頭蓋内圧亢進が死因に関与している可能性が考えられた。移植が行われなかった症例の死因は、ARDS、敗血症、ACS、腸管穿孔、ICPモニタによるものではない頭蓋内出血であった。

本研究の頭蓋内圧亢進治療プロトコルは頭蓋内圧を低下に有用であり、かつ神経学的転帰の改善にも寄与した。このプロトコルでも頭蓋内圧が管理できなかったのは1例のみであり、この症例は移植候補から除外された。今回のプロトコルで管理が困難であったのは、平均動脈圧低下によるCPP低下症例である。このような症例はほとんどが敗血症によって死亡した。低体温とペントバルビタールはショックを増悪させる可能性があり注意が必要である。ACSが発生した場合、その解除が頭蓋内圧管理に必須であることが分かり、本研究以降、持続的膀胱内圧モニタリングを実施している。

この研究は小規模であり比較対照試験ではないため、ICPモニタリングの有用性については大規模な比較対照試験で確認する必要である。しかし、今のところはICPモニタを利用した積極的な頭蓋内圧管理によって肝移植候補者の頭蓋内圧が低下し、神経学的転帰が改善すると言えよう。

教訓 肝移植候補の劇症肝不全には頭蓋内圧と膀胱内圧のモニタリングが必要。頭蓋内圧モニタ設置やACS解除の前後には厳重な凝固・止血機能の監視と治療が重要です。

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