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頭部外傷にアルブミン製剤はよくない [critical care]

NEJM 2007年8月30日号より

Saline or Albumin for Fluid Resuscitation in Patients with Traumatic Brain Injury

外傷性脳損傷患者にどの輸液製剤を選択すべきか、という問題についてはこれまで十分な統計学的検出力を持った無作為化比較対照試験は行われておらず、明確な解答は得られていなかった。そのため、晶質液主体の管理法と膠質液主体の管理法のどちらともがそれぞれの支持派によって喧伝されてきた。

SAFE study(The Saline versus Albumin Fluid Evaluation study )ではICU入室した多種多様な患者群を対象として輸液管理にアルブミン製剤を使用した群と生理的食塩水を使用した群の死亡率を比較した。この研究では全体的にはアルブミン製剤群と生理的食塩水群との間で死亡率について有意差は認められなかったが、外傷患者と非外傷患者を比較すると外傷患者のアルブミン群の死亡相対危険度は非外傷患者アルブミン群の死亡相対危険度より高いという結果が得られている。これは外傷性脳損傷患者のうちアルブミン投与群の死亡数が多かったことによるものである。

SAFE studyで得られた主要結果の重要性を鑑み、SAFE studyの対象患者のうち外傷性脳損傷患者について事後追跡調査を行う運びとなった(the SAFE-TBI study)。本調査の目的は外傷性脳損傷の転帰に影響を与える基準時点における諸要因についてアルブミン群と生理的食塩水群に分けて分析し、無作為化後24ヶ月間の死亡および神経学的転帰を二群間で比較することである。

本研究は2001年から2003年にかけて、オーストラリアおよびニュージーランドに所在するICU16施設において二重盲検無作為割当比較対照試験の形式で行われた。研究対象候補はすべて成人患者であり4%アルブミン製剤(Albumex, CSL)投与群または生理的食塩水投与群に無作為に割り当てた。SAFE studyのデータベースから全ての外傷性脳損傷患者を抽出してSAFE-TBI studyを行った。
 
ICU入室後48時間の輸液量は、アルブミン群の方が生理的食塩水群より有意に少なかった。それ以降の輸液量については二群間で差は認められなかった。アルブミン群ではICU入室第二日の赤血球製剤投与量が生理的食塩水群よりも多かったが、それを除けばICU入室後4日間に割当輸液製剤以外の輸液製剤の投与量は同等であった。ICU入室後4日間の平均動脈圧および心拍数について有意差は認められなかった。平均中心静脈圧は入室後24時間はアルブミン群の方が有意に高かった。無作為割当後の頭蓋内圧亢進発生数については有意差は認められなかった。

アルブミン群214名(92.6%)、生理的食塩水群206名(90.0%)の主要転帰が判明した。24ヶ月後の時点でアルブミン群214名のうち71名(33.2%)が死亡していた。一方、生理的食塩水群では206名のうち42名(20.4%)が死亡していた(相対危険度1.63 ; 95%信頼区間1.17~2.26 ; P=0.003)。アルブミン群と生理的食塩水群を比較すると、24ヶ月後死亡の調整オッズ比は1.70(95%信頼区間1.03~2.83 ; P=0.04)であった。重症外傷性脳損傷患者に限ると24ヶ月後死亡の調整オッズ比は2.38(95%信頼区間1.33~4.26 ; P=0.003)であった。

24ヶ月後の神経学的転帰が良好な患者数については、アルブミン群(203名中96名[47.3%])の方が生理的食塩水群(198名中120名[60.6%])より有意に少なかった(相対危険度0.78 ; 95%信頼区間0.65~0.94 ; P=0.007)。同様の結果は重症外傷性脳損傷症例に限っても認められ、アルブミン群(139名中51名[36.7%])の方が生理的食塩水群(140名中77名[55.0%])より神経学的転帰が良好な患者が少なかった(相対危険度0.67 ; 95%信頼区間0.51~0.87 ; P=0.002)。生存者の神経学転帰については二群間で同等であった(相対危険度0.95 ; 95%信頼区間0.83~1.08 ; P=0.41)ため、アルブミン群において神経学的転帰が良好な患者数が少ないことが高い死亡率につながった。アルブミン群と生理的食塩水群の生存率には有意差が認められた(P=0.007)。

SAFE studyの対象となった患者のうち外傷性脳損傷症例について事後追跡調査を行った。基準時点における患者背景因子と脳損傷の重症度については、初期輸液管理に使用する輸液製剤としてアルブミン製剤を割り当てられた群と生理的食塩水を割り当てられた群との間に有意差は存在しなかった。24ヶ月後の時点における死亡率と身体機能の神経学的転帰を調査し、アルブミン群の方が生理的食塩水群よりも有意に死亡率が高いことが明らかになった。この死亡率の差は、アルブミン群の方が重症外傷性脳損傷症例(GCS3点から8点)の無作為割当後28日以内の死亡率が高かったことに由来する。

外傷-蘇生プロトコールでは晶質液主体の初期輸液管理がすすめられているが、脳損傷がある場合について晶質液の使用が望ましいことを裏付ける医学的根拠は乏しい。循環血液量を迅速に補正し低血圧を避ければ脳損傷患者の転帰が改善するであろうという推測から導かれた蘇生に関する実践的アプローチに基づいて、大抵のプロトコールが作成されているため、医学的根拠が乏しいのも致し方ない。高張食塩水投与によって血漿浸透圧が上昇し脳浮腫が軽減されるであろうという考えに基づき、本剤の使用も複数のプロトコールで提唱されてきた。アルブミン製剤を含めた膠質液主体の初期輸液管理も、晶質液推奨派が依拠するのと同様の生理学的原理に基づき提唱されてきた。膠質液推奨派は、血漿膠質浸透圧を維持または上昇させて血管内水分が血管外つまり脳実質へ漏出するのを最小限に止めることを目的に膠質液使用をすすめている。しかし、動物実験では外傷性脳損傷モデルにおいても脳卒中モデルにおいても、アルブミン投与により頭蓋内水分の移動が影響を受けるかどうかについて結果はまちまちであり判然としていない。単一施設で行われた縦断的症例集積調査ではアルブミン製剤投与を含む治療法を導入したところ死亡率が低下したことが明らかにされた。その後、この症例集積調査の研究者らが、アルブミン製剤投与を含む治療法導入後、神経学的転帰が不良な患者数が以前より増加したことを報告した。

今回行った研究の結果は、外傷性脳損傷患者の初期輸液管理に用いる輸液製剤の選択に資するものではあるが、観測された死亡率の差がどのような生物学的機序によって生じたものなのかははっきりしない。蘇生における血行動態エンドポイントや、死因および死亡の時期については二群間に差はないため、アルブミン製剤投与によって血管原性または細胞毒性による脳浮腫悪化が死亡率の差を生んだ機序の一つとして考え得る。初回測定の頭蓋内圧はアルブミン群のほうが高い傾向ではあったが生理的食塩水群との間に有意差はなかった。頭蓋内圧の差による影響は並行して行われた治療手技によって打ち消された可能性があるが、しかしその治療手技自体が臨床経過に悪影響を及ぼしたとも考え得る。我々は、無作為割当後における頭蓋内圧亢進を30分間以上の間隔をあけて測定した頭蓋内圧が二回連続して30mmHgを上回った場合と定義したが、このレベルには至らない程度の頭蓋内圧亢進の発生について群間差が生じていたかもしれず、そうであればそのことによって転帰の差が生じた可能性がある。頭蓋内圧亢進による生物学的機序についてはさらに詳細な検討を要する。
 
教訓 重症頭部外傷患者の急性期輸液管理にはアルブミン製剤よりも生理的食塩水を使用するのが望ましいようです。

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