So-net無料ブログ作成
検索選択

人工呼吸器離脱と副腎不全 [critical care]

American Journal of Respiratory and Critical Care Medicine 2006年2月1日号より

Association between Adrenal Insufficiency and Ventilator Weaning

視床下部-下垂体―副腎系(HPA系)は、ストレス反応において重要な役割を占めている。侵襲が加わるとHPA系が賦活化しACTHが放出され副腎が刺激される。敗血症患者における副腎皮質ステロイド補充の安全性と効用については、未だに必ずしも明確にされていない。だが一方で、ショック状態が持続し昇圧薬を要し、人工呼吸管理が長期化するような非常に重篤な患者では、副腎皮質ステロイド補充療法が有効であるという報告が複数存在する。重症患者は相対的副腎不全状態になっているのではないかと考えられてきた。人工呼吸器離脱は、ICUにおける超重要課題である。理由は定かではないが、再挿管症例では予後が不良で院内死亡率が高いことが明らかにされている。人工呼吸器離脱試行が失敗に終わる症例について、いくつもの原因が指摘されているが、有用な臨床的指標は確立されていないのが現状である。副腎不全と人工呼吸器離脱の関係は未解明の問題である。副腎不全の早期診断および治療によって転帰が改善することが予測されていることから、我々は、副腎の予備能が低下している患者に副腎皮質ステロイドを補充することによって人工呼吸器離脱が容易になるという仮説を立て二重盲検試験を行った。

本研究は2003年5月1日から2003年12月31日にかけて三次教育病院のICU(26床)で行われた。気管挿管され72時間以上人工呼吸器管理を行った患者のうち、呼吸不全の原因が改善し人工呼吸器離脱開始が可能な者を対象とした。昇圧薬および鎮静薬は研究開始の少なくとも24時間前から中止した。入院前または入院中のステロイド投与の既往がある患者や咳反射が消失している患者は除外した。コルチゾル血中濃度は化学発光免疫測定法を用い院内の検査部で測定した。コルチゾル血中濃度が25μg/dL以上であれば副腎機能は正常であるとした。朝のコルチゾル血中濃度が25μg/dL未満の場合、高用量ACTH刺激試験を行った。cosyntropin250μgを筋注し、直後および60分後にコルチゾル血中濃度測定検体を採取した。コルチゾル血中濃度が9μg/dL以上増加した場合を正常副腎機能に分類し、それ未満の場合は副腎不全に分類した。副腎不全患者は無作為に治療群(人工呼吸器離脱中、ハイドロコルチゾン50mgを6時間おきに静注)または偽薬群(生食)に割り当てた。離脱開始基準を満たした患者は、Tピースで2時間自発呼吸をさせた。Tピース自発呼吸に問題がなければ抜管した。抜管から48時間以内に再挿管、NPPVなどの呼吸補助を必要としなかった場合を離脱成功と定義した。離脱ができなかった場合および人工呼吸期間が14日以上の場合を離脱失敗と定義した。

研究期間中に472名の人工呼吸管理患者がICUに入室し、そのうち93名が対象基準を満たした。初回の副腎機能検査後、23名は正常な副腎機能を有し、70名が副腎機能不全であった。副腎機能不全の患者は無作為に治療群(35名)または偽薬群(35名)に割り当てられた。副腎機能不全群においては、副腎皮質ステロイド群と偽薬群の間で朝のコルチゾル血中濃度は同等であった。正常副腎機能群のうち20名は人工呼吸離脱に成功し、3名が抜管はできたものの離脱には失敗した。副腎皮質ステロイド群では32名が離脱に成功し、1名はTピースの段階で脱落し、2名が抜管はできたものの離脱には失敗した。偽薬群においては、24名が離脱に成功し、2名はTピースの段階で脱落し、9名が抜管はできたものの離脱には失敗した。正常副腎機能患者と副腎皮質ステロイド群の離脱成功率は同等であった。偽薬群の離脱成功率は正常群および副腎ステロイド群と比較し有意に低かった(p=0.035)。副腎皮質ステロイド群において、新たに発生した高血糖、院内感染、消化管出血などの合併症の有意な増加は認められなかった。

本研究では、副腎機能不全患者に対し抜管前にストレス量の副腎皮質ステロイドを投与することによって、偽薬群と比較し人工呼吸離脱成功率が有意に上昇し、離脱期間が短縮することが明らかになった。抜管前の副腎機能評価に朝のコルチゾル血中濃度とACTH刺激試験を用い、副腎機能不全と抜管後転帰の相関を明らかにしたのは本研究が嚆矢である。我々が得た結果から、離脱前に副腎機能を評価することはICUの日常診療に有用であると考えられる。副腎機能不全の定義については諸説があるのが現状である。多くの教科書および最新の諸論文ではコルチゾル血中濃度が25μg/dL以上を正常としている。ACTH刺激試験は副腎機能不全を除外するのに必須の検査であり、特にコルチゾル血中濃度が25μg/dL以下の場合は重要な意味を持つ。ACTH刺激試験後のコルチゾル血中濃度上昇のカットオフ値については一致した意見は未だ得られていないが、重症患者においては9μg/dL未満の上昇は副腎機能が低下していると診断するのが通例である。朝のコルチゾル血中濃度とACTH刺激試験によって副腎機能評価の精度が高くなる。

生理的範囲内の副腎皮質ステロイド補充が効果的なのは敗血症性ショックのみならず、その他の重症疾患患者、たとえば、外傷、熱傷、副腎機能不全を伴う内科系および外科系疾患でも有用であろう。現在までのところ、ストレス量の副腎皮質ステロイド投与によってICUにおける人工呼吸離脱成功率が上昇するという報告はない。我々の研究では、正常副腎機能患者とストレス量のハイドロコルチゾンを投与された副腎機能不全患者の離脱成功率は同等であるという結果が得られた。一方、院内死亡率、ICU在室期間、入院期間についてはハイドロコルチゾン群と偽薬群の二群間に有意差は認められなかった。

近年行われている諸研究から、副腎皮質ステロイド補充療法が敗血症性ショック患者に有用であることが分かっているが、この現象の病態生理学的側面は未だ明らかになっていない。Kehらは敗血症性ショック患者における低用量ハイドロコルチゾン補充療法によって動脈圧および体血管抵抗が上昇し、強心薬投与量が低下すると報告している。人工呼吸器離脱中の呼吸仕事量増加によって、心血管系および視床下部-下垂体―副腎系に負荷がかかり、循環動態が不安定になる可能性がある。低容量ハイドロコルチゾン療法によって人工呼吸器離脱成功率が上昇するのは、おそらく血行動態が安定することが原因であろう。Annaneらは、重症敗血症患者が高率に(>75%)副腎不全に陥ることを明らかにした。我々の研究でも副腎不全患者が驚くほど多く認められ(75.3%)、今までこのような症例を見過ごしていたという問題点が浮かび上がった。CooperとStewartは、理学的所見による診断には限界があるため副腎不全診断のための検査は躊躇することなく行うべきであるとし、特に敗血症性ショックにおいては多くの症例で検査を行うことが妥当であろう、と報告している。人工呼吸離脱に通常必要とされる検査については様々な意見があり一致を見るに至っていない。Manthousらは、現在使用されている離脱指標は、呼吸不全の原因を同定するには役立つが、どの患者が離脱成功するかを予測するにはあまり有用ではないと報告している。Shirokaらは、予測呼吸仕事量基準を満たしても、48時間以内に再挿管を要する患者はかなり多いことを明らかにしている。

まとめ
重症患者の副腎不全は、朝のコルチゾル血中濃度が25μg/dL未満のとき疑うべきであり、さらにACTH刺激試験によるコルチゾル血中濃度上昇が9μg/dL未満の場合に確定診断に至る。抜管に先立ち全ての患者において副腎機能評価を行うことが望ましい。なぜならば、ストレス量の副腎皮質ステロイド補充療法によって人工呼吸器離脱成功率が上昇し、副腎不全患者でも正常副腎機能患者と同程度にまで離脱期間を短縮することができるからである。

教訓 weaningに際し、副腎不全の診断と治療が大切です。
コメント(0) 

コメント 0

コメントを書く

お名前:[必須]
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

※ブログオーナーが承認したコメントのみ表示されます。
メッセージを送る

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。

×

この広告は1年以上新しい記事の更新がないブログに表示されております。