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重症外傷後の敗血症をプロカルシトニンで予測~考察 [critical care]

Procalcitonin as a prognostic and diagnostic tool for septic complications after major trauma

Critical Care Medicine 2009年6月号より

考察

重症患者管理において、感染によるSIRSと感染以外の原因によるSIRSを見極めることは基本中の基本である。感染の発生を早期に察知し直ちに適切な治療を行うことが、重症患者の死亡率低下に寄与することは、周知の事実である。今回行った前向き研究では、外傷でICUに入室した患者の早期および晩期発症敗血症の診断にPCTが有用であることが明らかになった。

重症患者では敗血症の診断が困難である。敗血症の徴候があらわれても、外傷自体による強い炎症反応によって隠蔽されて判別しづらいのである。それなのに、外傷患者では敗血症が合併症として発生する頻度が高い。敗血症が起こったとき、白血球数、発熱、循環不全の徴候などの臨床徴候による昔ながらの評価では、SIRSとの鑑別は往々にして容易なことではない。外傷患者の管理においては、多くの場合、生理学的変化を監視するのが常套手段ではあるが、変化が起こるのを待っているうちに、培養結果がなかなか出ないことと相俟って、早期に強力な抗菌薬投与を行う時期を逸してしまう。

PCTは、感染性合併症の診断と予測に用いられてきた。しかし、これまでの報告は、単回測定によるある一時点における感染の有無の診断や、一定期間をおいた複数回測定についてのものが多かった。

過去の報告と同様に、本研究でも、外傷によるPCTピーク値が受傷後24-48時間後に観察された。我々は、PCTを連日測定したので、前日のPCT値と比較することができた。最初のピークに達した後、PCT値は下降し、ついには初日の値を下回った。その後、敗血症が発生するとPCT値は敗血症発症前日の値と比べ有意に上昇した(3.32 vs. 0.85ng/mL)。前日と比較したPCT値上昇は、その上昇がPCTを上昇させる治療上の要因(手術、体外循環、IABPなど)によるものなのか、敗血症によるものなのかを詳しく評価する有益な情報となる。前日よりPCTが上昇を示すと、我々はそれをきっかけに感染源の精査に取りかかった。

過去の研究では、外傷でICUに入室した重症患者の敗血症診断におけるPCTの有用性は示されていない。だが、PCT値による敗血症診断についての報告や、ICU入室時のPCTが高いほど敗血症が発生する可能性が高いことを示した報告はある。後者については本研究でも確認された。経過中に敗血症を発症した患者の入室時PCTは、敗血症を発症しなかった患者と比べ、3~4倍高く、ROC曲線のAUCは0.79であった。

先行研究の多くでは、PCT測定のための検体採取が単回であったり、かなり間隔をおいて行われたり、一定ではないばらばらの間隔をおいて採取されたりしていた。このような方法でも有益な情報は得られるかもしれないが、感染性合併症を早い段階で見つけ、早期に診断し強力な治療を行うことで効果を上げるには、心許ない。今回の対象患者の中には、臨床症状が出現するに先立ちPCTが上昇に転じた症例もあった。

本研究の問題点は、培養が陽性でなかった患者を(本当は敗血症であったかもしれないのに)SIRSに誤分類してしまったかもしれないことである。本研究では、感染源と思われる部位から採取した検体の培養が陽性であった患者だけを敗血症に分類した。敗血症を疑わせる臨床徴候または症状が見られなかったため、培養を行わなかった患者の中にも、敗血症症例が混じっていた可能性がある。だが、対象症例のなかに感染による死亡例は皆無であり、本研究ではPCT値に基づいて治療法を決めたわけではないので、敗血症症例の取りこぼしの可能性が大勢に影響を及ぼしたとは考えがたい。

適切な抗菌薬投与の早期に開始による転帰改善を示すエビデンスは多い。外傷患者では強い炎症反応が起こるため、それと似た徴候および症状を呈する敗血症との鑑別が難しく、治療開始までの、いわゆるgolden hourは、あっけなく過ぎ去ってしまう。本研究では、PCTを毎日測定し前日の値と比較したので、PCTが前日より増加したら直ちに感染の精査を行い、必要であれば先手を打って強力な抗菌治療を開始することができた。

本研究の患者と重症度が同等(ISS 23点から27点)の患者を対象とした他の研究では、敗血症発生頻度は13%から65%であったが、今回の我々の研究ではそれよりやや低かった(17%)。その理由の一つは、脳神経外科手術を要した患者を除外したからであると考えられる。この患者群では感染が発生する頻度が高いのだが、脳外手術を要する患者は他院へ搬送されたため、本研究の対象には含まれなかった。また、培養で敗血症が確認された症例だけを対象としたことも一因であろう。

昨今、治療方針決定の一助としてのPCT連日測定に、注目が集まっている。数種類のPCT自動測定機器が市販されていて、結果は一時間以内に得られる。イタリアでは、PCT測定の費用は約10~15ユーロ(1400円から2000円ぐらい)である。小児ICU患者を対象とした最近の研究では、PCT値を連日測定し、2.5ng/mL以上であると細菌感染の可能性が92%に達することが中間解析で分かった(2.5ng/mL未満では39%)。これとは別の現在進行中の研究に、Procalcitonin and Survival Studyという、多施設無作為化比較対照試験がある。PCT連日測定によるPCT値の日毎変化から早期診断、早期治療を行うと重症患者の死亡率が低下するかどうかの評価が、この研究の目的である。

本研究では、外傷患者に敗血症が起こるか、SIRSにとどまるかの予測を入室時PCT値から行う場合のカットオフ値が1-1.5ng/mLであることが確認された。入室時PCT値はSOFAスコアと相関していたが、入室時CRP値はSOFAスコアとの相関を示していなかった。特に、入室後に敗血症を発症した患者においてはその相関が強かった(カイ二乗値0.596, p<0.001)。つまり、他の研究でも明らかにされている通り、臓器障害のリスクがある患者を予め判別するのにPCTは有用である。

我々が行った先行研究と同様に、本研究でも臨床で簡単に使える回帰式を得た(PCT=-4.5+1.8×SOFA)。例えば、PCT値が13.5ng/mLであればSOFAスコアはおよそ10点ということになる。受傷後数時間以内に得られたPCT値を基に、合併症を防ぐ最も有効な治療方針を立てることができるのである。外傷受傷後のPCT値が高いほど、敗血症、臓器障害および死亡のリスクが高い。したがって、PCTが高い患者には、重点的な監視が必要である。

まとめ

重症外傷患者には激しいSIRSが発生するので、敗血症の生理的徴候が隠蔽されてしまう。本研究では、ICU入室時のPCT値が高いほど、敗血症発生リスクが高いことが明らかになった。PCTを毎日測定することによって、敗血症が発生した場合に遅滞なく診断を下すことができる。CRPと異なり、PCTは受傷後1~2日後から低下する。全身性の細菌感染が続発するか、その他のPCT上昇要因(手術など)がある場合にのみ、再上昇する。本研究は、PCT連日測定の臨床的有用性を明らかにする目的で設計されたわけではないが、重症外傷患者の入院時PCT値は、敗血症リスクの高い患者を見極めるのに有用であり、また、CRPを毎日測定するよりも、PCTを毎日測定する方が、敗血症の診断に役立つと考えられる。

教訓 PCTを毎日測定すると敗血症診断に役立ちます。PCTが上昇する治療要因(手術など)がなく、前日より上昇していれば、敗血症の精査と診断を開始します。また、入室時のPCTが高い患者は、敗血症ハイリスク群です。
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