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横紋筋融解症と急性腎傷害~疫学 [critical care]

Rhabdomyolysis and Acute Kidney Injury

NEJM 2009年7月2日号より

横紋筋融解が起こると、電解質、ミオグロビンおよびその他の骨格筋細胞質タンパク(CK、アルドラーゼ、LDH、AST、ALTなど)といった筋細胞内の物質が循環血液中に漏出する。たくさんの筋肉が壊死に陥ると、四肢の脱力、筋肉痛、腫脹などの症状が現れ、多くの場合、肉眼的着色尿(血尿ではない)が見られる。これらの症候は、外傷性、非外傷性の横紋筋融解症のどちらにも共通して見られる。横紋筋融解症の原因が外傷であれ、それ以外のものであれ、重症であれば急性腎傷害を合併することがある。その結果、腎不全に至れば予後は極めて不良である。一方、それほど重症でない横紋筋融解症や、慢性のまたは間欠的な横紋筋融解(この状態は時に、高CK血症と呼ばれる。)の患者にはあまり目立った症状は見られず、通常は腎不全に進展することはない。本レビューでは、横紋筋融解症による急性腎傷害の病態生理と治療法をまとめた。

横紋筋融解症は通常8種類に分けられる(Table 1)。アルコール、違法薬物、高脂血症治療薬などの筋毒性のある外因性物質が、非外傷性横紋筋融解の主要原因である。反復する横紋筋融解は、筋代謝の異常を示唆する場合がある。

筋肉構造の異常を伴うミオパチーの患者では、激しい運動、麻酔、筋毒性物質の摂取またはウイルス感染を契機に急性横紋筋融解が発生することがある。急性横紋筋融解が疑われる症例では、筋生検を行い組織化学検査、免疫組織化学検査もしくはミトコンドリア機能の検査を行うと、確定診断に至ることができることがある。ただし、筋生検は、横紋筋融解発生後、数週間から数ヶ月経過してから実施しなければならない。というのも、横紋筋融解発生後早い段階で筋生検を行うと、正常所見であったり壊死以外には特段の所見が見られなかったりすることが多く、あまり有用な情報は得られないことが多いからである(Fig. 1)。

横紋筋融解の病因に関与する機序は、骨格筋の直接的傷害(例;外傷)または筋細胞内のATP欠乏による細胞内カルシウムの無秩序な増加である。骨格筋細胞内のカルシウムは、一連のポンプ、チャネルおよびNa-Ca交換機構によって厳密に調節されている。この仕組みが正常に働いていると、安静時には筋細胞内のカルシウム濃度は低く維持されている。筋細胞内カルシウム濃度が上昇するとアクチン-ミオシン結合が起こり、筋肉が収縮する。ATPが減少すると、各種ポンプの機能が障害され、筋細胞内のカルシウム濃度が上がりっぱなしになり、そのため筋肉は収縮したままの状態になってしまう。すると、筋肉はエネルギー欠乏に陥り、カルシウム依存性プロテアーゼおよびフォスフォリパーゼが活性化される。その結果、最終的には筋原繊維、筋骨格および膜タンパクが崩壊し、細胞内容物はリソソームによって消化されてしまう。ここまで来ると、筋原線維の形成するネットワークはばらばらになり、筋細胞は壊れる。外傷による横紋筋融解では、受傷後に虚血再潅流傷害が発生したり、損傷した筋肉に好中球や浸潤して炎症が起こったりすると、事態が悪化する。

ミオグロビン尿による急性腎傷害の疫学
外傷性、非外傷性を問わず、横紋筋融解症による最も深刻な合併症は、ミオグロビン尿に起因する急性腎傷害であり、生命に危機を及ぼすこともある。横紋筋融解症の合併症として急性腎傷害が発生することは珍しくはなく、米国における急性腎傷害の約7~10%を占めるとされている。横紋筋融解症による急性腎傷害は、定義が定まっていないことや、臨床経過にばらつきがあることから、正確な発生頻度を知ることは困難である。報告によれば、横紋筋融解症のうち13%から約50%に急性腎傷害が発生する。横紋筋融解症による入院患者475名を対象としたMelliらの研究では、急性腎傷害の発生頻度は46%であったことが示されている。横紋筋融解症が発生すれば、その原因が何であれ急性腎傷害が発生する可能性があるが、この研究では、筋疾患患者と比べ、違法薬物使用者、アルコール乱用者、外傷患者の方が急性腎傷害を合併する頻度が高いことが明らかにされた。そして、横紋筋融解症の発生要因が二つ以上ある患者では、急性腎傷害合併率が特に高かった。

腎不全を合併しなければ、横紋筋融解症の転帰は一般的に良好である。だが、死亡率に関するデータにはばらつきが大きい。対象患者や研究実施施設の特性、基礎疾患の数や重症度などによって、死亡率はかなり左右される。血管病変があり、四肢の虚血により横紋筋融解症に至った症例の割合が多い研究では、全体の死亡率は32%であった。一方、違法薬物またはアルコール乱用を原因とする横紋筋融解症の症例が最多であったMelliらの研究では、急性腎傷害を合併した患者であっても死亡率は3.4%にとどまった。横紋筋融解症でICUに入室した症例では、急性腎傷害合併例では死亡率は59%、非合併例では22%であるという結果が報告されている。急性腎傷害を合併した横紋筋融解症患者の長期生存率は80%弱であり、大多数の患者では腎機能は回復することが分かっている。

教訓 横紋筋融解症のうち13%から約50%に急性腎傷害が発生します。横紋筋融解症でICUに入室した症例では、急性腎傷害合併例では死亡率は59%、非合併例では22%です。

コメント(2) 

コメント 2

mauian

マウイ島の総合病院で看護師として働いています。Rhabdomyolysis を発症した患者さんを担当して、acute careに関して、英語の文献しかなかったので、vrilさんの日本語のサイトを見つけて、とても参考になりました。日本語では横紋筋融解症と言うのですね。ありがとうございました。
この患者さんも確かにstage3のESRDを併発しています。これからもどうぞよろしくお願いします。
by mauian (2012-09-13 16:58) 

vril

mauianさん、コメントをいただきありがとうございます。お役に立てたのであれば光栄です。現在、本ブログは開店休業中です。いずれ再開するつもりではありますが、その節はまたお越し下さい。
by vril (2012-09-24 21:59) 

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