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術後血糖管理~臨床研究 [critical care]

Glycemic Control in the Intensive Care Unit and during the Postoperative Period

Anesthesiology 2011年2月号より

血糖管理:臨床観測研究

色々なタイプの重症疾患患者を対象とした新旧様々な観測研究では、ICU入室時の高血糖は、死亡及び重症合併症の独立予測因子であることが一貫して示されている。急性心筋梗塞、脳血管障害および脳出血において、この相関関係が最も顕著に認められる。大規模な重症患者コホートを対象とした遡及的研究では、血糖値を144mg/dL未満になるように管理すると経過が良好であるという結果が得られている。さらに、この研究では平均血糖値が144mg/dL未満であった患者は、そうでなかった患者よりも転帰が良好であることが明らかにされている。

心臓手術後の血糖値が180mg/dL以上であると、深部胸骨創感染も死亡率も有意に上昇することが分かっている。糖尿病患者300名を対象として最近行われた前後比較研究では、血糖管理を術中から術後第3日まで行うと、生存率が改善するという結果が得られた。反対に、心臓手術後の血糖管理が芳しくないと転帰が悪化することが明らかにされている。

脳動脈瘤破裂によるクモ膜下出血の患者を対象としてThieleらが実施した前後比較試験では、厳格血糖管理プロトコル(血糖値を120mg/dL未満になるように管理する方法)を導入したところ、院内死亡率は対照群と同等であるという結果が得られた。厳格血糖管理を行った群では低血糖の発生リスクが高かった。低血糖は、死亡率上昇につながる独立予測因子である。つまり、この研究のような患者群では厳格血糖管理による転帰の改善を目指して注意深く血糖値を管理しても、その効果は低血糖という有害事象によって打ち消されてしまう可能性がある。

血糖管理:臨床介入研究

ICUにおける血糖管理

ICUにおける血糖管理についての大規模無作為化比較対照試験の嚆矢となった研究では、外科系ICU患者1548名(主に心臓手術後の患者)が強化インスリン療法(IIT; 目標血糖値80~110mg/dL)もしくは従来の血糖管理法(目標血糖値180~200mg/dL)に無作為に割り当てられた。そして、強化インスリン療法によってICU死亡率が8%から4.6%へと低下し、院内死亡率も10.9%から7.2%へと低下するという結果が得られた。この効果は、ICU在室日数が5日以上の患者群ではより顕著に認められた。さらに、強化インスリン療法によって、全身感染、急性腎不全、輸血および多発神経炎の発生率、人工呼吸期間、ICU在室期間が改善することが分かった。これに続きルーベン(ベルギー)の同グループが内科系ICU患者を対象として同じ方法と目的の研究を行った。対象患者数は1200名であったが、厳格血糖管理群と対照群とのあいだに院内死亡率の有意差は認められなかった。ただし、入院期間が長期におよぶ患者においては厳格血糖管理に有効性があるという結果が得られた。ルーベン研究の外的妥当性の評価と目標血糖値の最適値の検討のため、インスリン強化療法による厳格血糖管理についての大規模前向き試験や多施設試験が相次いで行われた。いずれの研究においても、異なる二つの目標血糖値が比較された。この後続する諸研究は、先行研究と似てはいるが全く同じではない(table 1)。いずれの研究も、インスリン強化療法群では目標血糖値は先行研究と同じく80~110mg/dLに設定された。しかし、対照群の目標血糖値は先行研究と異なった。Glucontrol研究およびNICE-SUGAR研究では対照群の目標血糖値は140~180mg/dLであったが、ルーベン研究、VISEP研究およびその他二編の大規模単一施設研究では、180~200mg/dLが目標値とされた。

NICE-SUGAR研究では、強化インスリン療法を実施すると90日後死亡率が上昇するという結果が得られたが、前述のその他の研究では二群間に転帰についての有意差は認められなかった。予想に違わずインスリン強化療法群では低血糖発生頻度が対照群の4~6倍にのぼった(インスリン強化療法に割り当てられた患者の5~25%に低血糖が発生)。このように低血糖の発生頻度が高いことが、インスリン強化療法導入にあたって最も憂慮される問題点であるとともに、医療従事者の仕事量を増やす主因となる。VISEP研究およびGlucontrol研究では、低血糖(血糖値40mg/dL未満)を一度でも起こした患者の死亡率は、一度も起こさなかった患者よりも高いという結果が得られている。一方、両ルーベン研究(van den Bergheらの二編の研究)では、低血糖を起こした患者と起こさなかった患者とで転帰を比較しても有意差は認められていない。だからといって、低血糖が遷延して、ブドウ糖をエネルギー源としている組織へのブドウ糖供給が低下した場合に、転帰が悪化したり危機的状況が発生したりする可能性が否定されたわけではない。重症患者における低血糖の影響を正しく理解するには、さらに研究を重ねる必要がある。

周術期の血糖管理

周術期におけるインスリン強化療法についての前向き無作為化比較対照試験は、ICUを舞台にした研究よりも数が少ない。2007年に発表された無作為化比較対照試験では、CABGを受けた糖尿病患者73名と非糖尿病患者371名が対象となった。これは術中の血糖管理のみに特化した研究で、厳格血糖管理群(目標血糖値90~110mg/dL)と従来管理群(目標血糖値180mg/dL未満)とが比較された。術後の血糖値は両群とも同等に目標値を達成していた。術中という極めて短期間の血糖管理では術後転帰を改善する効果はないということが明らかになった。心臓手術においては、周術期の血糖管理によって術後転帰が改善することが遡及的研究で判明しているものの、前向き研究では確認されていない。

Subramanianらは末梢血管バイパス術患者を対象として前向き非盲検無作為化試験を行い、周術期インスリン持続静注が術後合併症発生率および死亡率におよぼす影響を検討した。手術当日の血糖値は、インスリン持続静注群(目標血糖値100~150mg/dL)の方がインスリン間欠ボーラス群(目標血糖値150mg/dL未満)よりも低かった。インスリン持続静注群の方が間欠ボーラス群よりも、術後心血管系有害事象の発生率が有意に低かった(3.5% vs 12.3%; P=0.013)。

2009年にLipshutzとGropperは、周術期血糖管理のエビデンスについての総説を発表した。この総説では、周術期血糖値は150mg/dL未満に管理すべきであり、周術期における実地診療で定番的に厳格血糖管理を行うことには賛成できない、とされている。

教訓 術中という極めて短期間の血糖管理では術後転帰を改善する効果はないようです。
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