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AKIによる腎外遠隔臓器障害~消化管、肝 [critical care]

Acute Kidney Injury and Extrarenal Organ Dysfunction: New Concepts and Experimental Evidence

Anesthesiology 2012年5月号より

AKIと消化管機能障害

肝臓と小腸は門脈循環を介してつながっていて、AKI後の多臓器不全の進展に一体となって関与する。腸には免疫防御バリアという重要な機能があり、腸管内に大量に存在するTLRリガンド、サイトカインおよび細菌抗原などの炎症促進物質が門脈循環を経由して全身の血流へ広がるのを防いでいる。つまり、腸管のバリア機能が破綻すると、肝傷害が生じたり増悪したりするのである。このことは重症疾患では重大な問題となる。肝臓はタンパク合成、薬物代謝および解毒などの大切な代謝作用を司っているからである。

腎虚血再灌流と両側腎摘除のいずれにおいても、IL-17Aが制御を失い小腸で過剰発現する。IL-17Aは炎症促進サイトカインであり、アレルギー反応において好中球遊走、T細胞活性化およびTNF-αやIL-6などのサイトカインやケモカインの発現誘導といった重要な作用をもたらす。実際、AKIを発症したマウスでは、大量の好中球、マクロファージ(fig. 4)およびTリンパ球が小腸上皮および血管へ集積する。こういった炎症促進作用によって腸管バリア機能が破綻する。この状態でエバンスブルーを投与すると血管外漏出が観察される。そして、本当なら腸管内に止まっているはずの炎症促進物質が門脈循環内へ侵入し、炎症反応カスケードがさらに賦活化されて事態が悪化する。腸管バリアの破綻は腸絨毛の組織学的変化にもあらわれ、絨毛内皮のアポトーシス、絨毛上皮の壊死、絨毛毛細血管の鬱血および絨毛の萎縮といった所見が見られるようになる。絨毛のアポトーシスはTUNEL染色をすると確認できる。特に、血管周囲の内皮細胞では分かりやすい所見が得られる。

腸管で産生されたIL-17Aは門脈循環に流入し、肝臓においてTNF-αおよびIL-6の発現を促進する。このことは、肝組織におけるTNF-αおよびIL-6のメッセンジャーRNAの増加によって裏付けられる(fig. 5)。TNF-αおよびIL-6の発現量が増えると肝傷害が起こり、ASTおよびALTの血中濃度が上昇する。腎虚血再灌流および腎摘除のいずれによるAKIであっても肝傷害を引き起こし、組織学的には好中球浸潤、肝細胞空胞変性および門脈周囲壊死が出現する(fig. 6)。IL-17A、TNF-αまたはIL-6欠損マウス、もしくはIL-17A、TNF-αまたはIL-6の中和抗体を投与されたマウスでは、AKI後の肝傷害が起こらないという瞠目すべき知見が示されている。つまり、AKI後に起こる小腸におけるIL-17Aの産生および肝臓におけるTNF-αとIL-6の発現が、肝傷害を直接的に増強するものと考えられる。

肝臓における酸化ストレスの増大と活性酸素の産生量増加も、炎症反応の惹起と遷延において不可欠の役割を担っていると考えられている。腎虚血再灌流および両側腎摘除のいずれであっても、脂質過酸化のマーカであるマロンジアルデヒドが肝内で増加する。また、重要な内因性フリーラジカルスカベンジャーで肝保護作用を発揮するグルタチオンは、AKIが起こると減ってしまう。腎虚血再灌流を行うに先立ちグルタチオンを投与すると、投与しなかった場合よりも肝傷害による組織学的変化が緩和され、マロンジアルデヒド濃度が低下し、トランスアミナーゼが減少する。腎虚血再灌流は、ミエロペルオキシダーゼ、SODおよびカタラーゼなどの抗酸化酵素の濃度を低下させることも知られている。

腎臓-肝臓虚血再灌流による二重侵襲モデルの実験では、虚血または片側/両側腎摘除によるAKIを起こす上に肝臓にも虚血再灌流を施すモデルで、肝虚血再灌流に加え対照(sham)腎手術を行ったマウスと比べ、肝傷害が有意に重篤であることが示されている。この知見は、AKIに肝機能低下が合併すると転帰が悪化することを裏付けていると言えよう。

AKIが引き起こす腸管傷害および肝傷害を防ぐ上で抗炎症物質が死活的に重要な役目を担っていると考えられている。吸入麻酔薬のイソフルランには強力な抗炎症作用がある。マウスを用いた実験では、抗炎症作用がほとんどないペントバルビタールと比べイソフルランは腎虚血再灌流を軽減し、続発する腸管傷害および肝傷害も防ぐ作用があることが明らかにされている。この効果はスフィンゴシン-1-リン酸を介した直接的な作用であることが分かっている。スフィンゴシン-1-リン酸はGタンパク共役型受容体に結合するリゾリン脂質で、細胞の成長や生存を促し、アポトーシスを阻害する作用があることで知られている。

教訓 AKIはサイトカインを介して腸管のバリア機能が破綻させます。すると腸管内のTLRリガンド、サイトカインおよび細菌抗原などの炎症促進物質が門脈循環を経由して肝臓に至り肝傷害を引き起こします。
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