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小児肺疾患最前線2009② [critical care]

Update in Pediatric Lung Disease 2009

American Journal of Respiratory and Critical Care Medicine 2010年4月1日号より

BPDのエフェクターと肺の発生

肺傷害は、肺の発生を妨げ、早期産児にBPDを発症させしめる。この場合、肺傷害の主要因は酸素投与と機械的人工呼吸である。臨床上はこれら2つの要因による肺傷害を区別することは不可能に近い。ヒヒの早期産仔を100%酸素に曝露すると、肺胞形成が十分に行われなくなる。マウスやラットの新生仔でも同様である。このような肺胞形成の障害には幾多の炎症性メディエータが関与していることがすでに分かっているが、高酸素症によるミトコンドリア機能障害というメカニズムも関わっていることが新たに認識されはじめている。ヒヒやヒツジの早期産仔では、吸入気酸素濃度を低くし軽い振動換気や低いCPAPで換気した場合は、通常の換気を行う場合に比べ、肺胞発生の停滞の度合いが軽度に止まる。さらにやさしい換気方法を実施したところ、正常な発生様式で見られるのと同じような細胞増殖とアポトーシスが起こるとともに、肺胞隔壁も正常に形成されることが明らかにされた。しかし、マウス新生仔に機械的人工呼吸を行うと、隔壁形成部位の局所エラスチン量が急激に失われ、人工呼吸開始から1日以内に総エラスチン量が肺胞壁全体で瀰漫性に増加する。この際、炎症所見は認められない。肺胞形成調節不全のもう一つの例は、酸素に曝露されたマウスやBPDで死亡した乳児の肺組織における、リシルオキシダーゼ(コラーゲンやエラスチンの合成に必要な酵素)の増加である。この現象はおそらく、トランスフォーミング成長因子-βの増加によって引き起こされているものと考えられている。

BPDを発症している乳児の人工呼吸中に一酸化窒素吸入療法(iNO)を行うと、BPDの進行を防ぐことができる可能性が示唆されている。人工呼吸中のヒヒ早期産仔でも、一酸化窒素吸入療法を行うと肺機能が改善し、肺の発達が促進されることが明らかにされている。同様に、ラット新生仔にブレオマイシンを投与すると肺の構造異常と肺高血圧が引き起こされるが、一酸化窒素を吸入させるとこのブレオマイシンによる肺傷害が緩和される。酸素に曝露されると、内因性一酸化窒素が減少する。これがおそらく一酸化窒素吸入療法が肺の発生を促進する理由であろう。しかし、肺の発生の制御および制御妨害のメカニズムは非常に複雑である。たとえば、胎児のエストロゲンおよびプロゲステロン血漿中濃度は子宮内では非常に高く、出生後には急速に低下する。ブタ胎仔では、エストロゲンおよびプロゲステロン血中濃度が低いと肺胞の形成が阻害される。マウスではエストロゲン受容体によって肺胞容積が調節される。McCurninらは、人工呼吸中のヒヒ早期産仔にエストリオールを投与し、正常ヒヒ胎仔と同程度のエストロゲン血中濃度を達成することによって、エストロゲンによる肺胞形成調節に関する仮説を検証した。そして、対照群と比べエストリオール投与群の方が心血管系機能および肺機能が良好であるという結果を得た。エストリオール投与によって、内因性一酸化窒素合成酵素のアップレギュレーションが起こることが分かった。早期産児にエストロゲンとプロゲステロンの補充療法を行った場合に、内分泌系にどのような長期的影響があらわれるのかは不明である。

どの乳児がBPDを発症するのかを予測するのは非常に難しい。そのため、BPDのバイオマーカーに関する研究が盛んに行われている。Ambalavananらは近頃、複数の血中炎症促進性サイトカインがBPD発症予測には適していないことを明らかにした。その理由の一つは、BPDを発症しない早期産児でも、これらの炎症促進性サイトカインやその他の物質の増加が認められるからである。Laughonらは、在胎28週未満で出生した乳児900名を対象とした研究を行い、出生後14日目までの酸素使用状況がBPDの予測因子として妥当であることを明らかにした。2010年中にNHLBI(米国国立心肺血液研究所)の資金提供によって、BPDの発症予測に有用なバイオマーカーを見いだすことを目的とした多施設共同研究が行われる予定である。

胎児/新生児の炎症やBPDにおける主要な炎症性メディエーターの1つはIL-1であろう。絨毛膜羊膜炎ヒツジ胎仔モデルを用いた実験では、リポ多糖(LPS)による全身性炎症および肺の炎症の成立にIL-1が深く関与することが明らかにされている。成長過程のマウスにおいてIL-1が過剰発現すると、肺の炎症や肺胞形成障害が引き起こされる。Lukkarinenらは遺伝子操作モデル(トランスジェニックモデル)を使い、マトリックスメタロプロテアーゼ9(MMP-9;基底膜の破壊や血管新生を誘導する)がIL-1の介する肺傷害の発生を防ぐことを示した。IL-1は急性期反応の早期に肺胞マクロファージや肺胞上皮から放出されるサイトカインであるが、一部はinflammasome(caspase 1、PYCARD、a NALP 、caspase5、caspase11などからなる複合タンパク。IL1β や IL18の成熟を促進し、アポトーシスの誘導にも関わる。)や細胞内小器官中にプロサイトカインとして貯蔵されている。満期出生児でもinflammasomeが介する IL-1の放出により重症全身性炎症反応が起こりうる。この分野における有望な研究テーマは、BPDなどの疾患でinflammasomeが介する傷害が発生している可能性の解明である。

教訓 BPD患児の人工呼吸中にNOを吸わせると、BPDの進行を防ぐことができる可能性があります。早期産児にエストロゲンとプロゲステロンを補充すると、肺胞形成が促進されるかもしれません。


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小児肺疾患最前線2009① [critical care]

Update in Pediatric Lung Disease 2009

American Journal of Respiratory and Critical Care Medicine 2010年4月1日号より

過去2年間の小児肺疾患に関する本誌のレビューはAndrew Bushが担当した。この2編のレビューでは、血管病変/肺高血圧症、肺傷害および胎児肺の発生と、小児肺疾患が成人期の肺疾患にどのように関与するかといったテーマに重きが置かれた。2009年には、分子および生理的調節因子から、前駆細胞を用いた治療法までの幅広い範囲にわたる研究結果や、肺の発生に影響を及ぼす環境要因についての新しい知見が報告された。今年のレビューでは、2009年の主だった研究の一部を紹介し、今後の新しい研究が進むべき有望な方向性を示すことにする。

肺胞形成、肺の発達、機能

ヒトの肺は当初は嚢状である。妊娠32週頃に、この嚢状肺から肺胞の形成が始まると考えられている。満期出生児の新生児期における肺胞数は、成人の20%程度しかない。最近の研究で重点的に取り上げられているテーマが三つあり、これらは肺胞形成、早期産、気管支肺形成異常(BPD)および乳児の肺関連転帰についての我々の考えに大きな影響を及ぼしている。その三つのテーマを以下に記す。(1)BPDがあると、肺胞数が少なく異常な微小肺血管構造を持つ成人肺ができあがる。この件についての詳細な論文が最近発表された。(2)肺胞形成は2~8歳になっても完了せず、一生を通じて新しい肺胞が形成され得る。(3)乳児期の肺機能が不良であると、青年期における肺機能も芳しくないと予測される。早期産はそれ自体だけで、長じてからの肺疾患罹患の危険因子であると考えられている。在胎30週未満で出生した場合に、肺疾患を引き起こす主要な原因が二つ挙げられる。炎症/感染と子宮/胎盤血管異常である。子宮内感染は肺の発生と血管の発生に影響を及ぼす強力な要因である。子宮内感染があると肺の成熟過程が誘発され、異常な肺胞形成が引き起こされる。子癇前症の原因となったり、胎児成長を妨げたりするような子宮胎盤血管異常があると、肺胞および肺血管の発生にも悪影響を及ぼす。早期産児では、出生後明らかな肺病変がない場合であっても肺に異常がある。BPDに伴う肺胞形成異常は、その極端なかたちであるだけなのかもしれない。

正常満期出生児でも肺機能が低下していると、10歳時における喘息および22歳時における閉塞性障害のリスクが高い。このリスクを踏まえると、早期産児の場合は、肺の発達異常も相まって肺機能の転帰は非常に不良であると思われる。出生時の肺機能と出生以降の肺の異常との関わりについて、2編の論文が最近発表された。Caudriらは、出生時低体重を呈した満期出生児は、2歳から6歳のあいだに呼吸器系症状を訴えることが多いということを明らかにした。幸い、7歳時には正常体重児との差異はなかった。Walterらが行った大規模症例対照研究では、超低出生体重児(<1.5 kg)および中等度低出生体重児(1.5–2.5 kg)は、青年期(18~27歳)に喘息、呼吸器感染症あるいは呼吸不全のため入院する例が多いことが明らかにされた。反対に、Narangらによる2編の報告はもっと楽観的である。その一つである160名の中等度早期産児(平均出生体重1.44 kg、平均在胎週数31.5週)を対象とした研究では、早期産児では呼吸器系症状は多いものの、21歳時に調べてみると正常対照群と遜色のない呼吸機能を示すことが分かった。もう一つの研究では、これと同じ早期産児コホートと正常対照群において、安静時、負荷時および負荷後再安静時の心肺機能を評価した。安静時における一酸化炭素拡散能と実効肺血流は対照群に比べ早期産児群の方がやや低いが、負荷時にはこの差がなくなる事が判明した。安静時の異常についてはうまく説明できないが、負荷時には早期産児群と正常群とのあいだに差がなくなることから、早期産児出身の青年における肺機能障害は微々たるものであることが分かった。

早期産児における長じてからの肺機能の転帰について、現在では数多くの研究が蓄積されている。肺の転帰に関与する要因は、出生時体重、在胎週数、出生後急性・慢性肺疾患(例えばARDSやBPD)および小児期の続発性肺関連疾患(例えばRSウイルス感染)である。しかし、早期産児における出生後の肺機能の発達が、満期出生児における出生後の肺の発達と同様の経過をたどるのだとすれば、早期産児の成人になってからの肺機能は不良であると予測される。早期産児は出生後、満期の時期に至っても、満期出生児よりも気道が狭小である。BPDの乳児は満期の時期に至っても肺機能が異常であることがあり、その場合、小児や成人における呼吸不全と同様の所見(呼吸回数増加、PaO2低下、PaCO2上昇)を呈する。早期産児が概ね問題のない肺の転帰をたどるには、幼少期は及ばずそれ以降までも肺胞と微小肺血管の形成が続かなければならない。

以前は、ヒトの肺胞は2~8歳までは数が増加し、それ以降は大きさが増すと考えられていた。ヒトの肺胞壁の肺胞毛細血管網は二重にはなっていないので、成人の肺では新たな肺胞形成は行われないと思われていた。しかしBurriは、成人肺の胸膜表面に新しく肺胞が形成される部位を発見した。また、Schittnyらは毛細血管網がヒトと同じく単層の肺胞壁を持つラット肺を用い巧みな鋳型標本を作成し画像処理を施すことによって、成体でも肺胞が形成され続けていることを示した。BPDのため肺の発生が停止してしまった乳児が生存するには、成人になっても肺胞がこのように成長または再生することが必須であると考えられる。なぜなら、出生時体重が1kg未満でBPDのある早期産児でも、成人になるまで生存した例では大半がほぼ正常な肺機能を呈することが経験的に知られているからである。成人後の肺胞増大を促進する治療を開発するには、「出生後の肺胞発達」を解明しなければならない。その第一歩が、肺の生検や形態計測を行うことなく肺の発達を評価する手法の開発である。Balinottiらは正常乳児の一酸化炭素拡散能(DLCO)と肺胞容量を測定し、2歳になるまで両者が同じように増大することを明らかにした。すなわち、DLCOと肺胞容量の比が一定であることが分かった。つまり、肺胞数の増加によって肺が発達することを突き止めたのである。この手法は、早期産児における肺の発達を評価する際にも有用であると考えられる。早期産児出身小児の肺機能は、新しく開発された3~7歳の正常児用のスパイロメトリー百分率チャートとの比較でも評価しうる。

教訓 ヒトの肺胞は2~8歳までは数が増加し、それ以降は大きさが増すとされていましたが、現在では成人でも新しく肺胞が形成され数が増えるのではないかと考えられています。
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集中治療文献レビュー2010年4月② [critical care]

Anesthesia Literature Review Critical Care Medicine

Anesthesiology 2010年4月号より

International Study of the Prevalence and Outcomes of Infection in Intensive Care Units
JAMA. 2009;302(21):2323-2329.

世界中どこのICUでも、合併症および死亡の大きな原因は感染である。そして、感染関連死亡例は増えている。ICUにおける感染に関する世界規模のデータはあまり多くはない。

世界各国におけるICUで発生した感染の数と様式についての調査を行う目的で、The Extended Prevalence of Infection in Intensive Care Ⅱ(EPIC Ⅱ)研究を実施した。この研究は、ある特定の一日における感染有病率の評価と追跡調査を行う前向き研究であり、対象患者数は14,414名であった。

感染有病率評価日において対象患者の51%において感染が認められ、その大半(64%)が呼吸器感染症であった。感染有病率評価日に先立つICU滞在期間が長いほど、感染有病率が高かった。特に、耐性ブドウ球菌、Acinetobacter、Pseudomonas属、およびカンジダ属による感染でその傾向が顕著であった。

中南米における感染有病率が最も高く(60%)、アフリカが最低であった(46%)。北米以外ではグラム陰性菌による感染の方がグラム陽性菌による感染よりも多かった(全体ではグラム陰性菌62%、グラム陽性菌47%、真菌19%。北米ではグラム陰性菌49.9% vs グラム陽性菌55.1%)。医療支出の少ない国ほど感染発生率が高かった。

感染患者(6659名)
ICU死亡率25.3%、院内死亡率33.1%、ICU在室日数16日、入院期間29日

非感染患者(6352名)
ICU死亡率10.7%、院内死亡率14.8%、ICU在室日数4日、入院期間13日

ICU在室日数以外はいずれもP<0.001であった。

解説
この大規模国際疫学研究は、75ヶ国に所在する1265か所のICUで行われた。現在のICUにおける感染の全体像を示すものである。感染は依然として合併症および死亡率に直接的な影響を与える、大きな頭痛の種である。感染の発生率およびタイプ、そして感染による死亡率は国によって大きく異なることが明らかになった。感染症予防および管理の改善策の国際的な違いを明らかにし、十分な対策が講じられていない地域では適切な改善策を実施すべきであると考えられる。

Hospitalized Patients with 2009 H1N1 Influenza in the United States, April–June 2009
N Engl J Med. 2009 Nov 12;361(20):1935-44.

2009年には、新型インフルエンザA(H1N1)ウイルスが出現し世界中に広がった。9月までに191ヶ国から新型インフルエンザ感染患者の報告があった。重症化の危険因子および臨床的特徴については、今も発表が相次いでいる。この論文では、2009年4月から2009年6月までの期間に米国でH1N1インフルエンザにより入院した患者の臨床的特徴が報告された。

インフルエンザ様症状を呈しH1N1インフルエンザ検査陽性であった24州272名(当該期間中にCDCへ報告のあった全症例の25%)のデータを収集した。18歳未満の患者が45%、65歳以上が5%を占めた。患者の73%には1つ以上の基礎疾患(喘息、糖尿病、心疾患、呼吸器疾患、神経疾患、妊娠など)があった。小児では60%、成人では83%、65歳以上の高齢者では100%に基礎疾患があった。入院時に胸部X線写真が撮影された249名のうち、40%に肺炎の所見が認められた。抗ウイルス薬使用の有無に関するデータが記録されていた268名のうち、抗ウイルス薬が使用されていたのは200名であり、発症後3日目(中央値)に投与が開始されていた。

全体の25%がICUへ収容され、7%が死亡した。死亡患者の大半(68%)には基礎疾患があった。死亡例では全例で抗ウイルス薬が投与されていた。しかし、症状発現から48時間以内に抗ウイルス薬の使用が開始されていた例は皆無であった。

解説
この論文は、米国における2009年のH1N1インフルエンザ入院症例についてのはじめての疫学データである。H1N1インフルエンザ入院例の背景因子(65歳未満、妊娠、免疫抑制など)の検討が行われた。さらに病的肥満をはじめとするその他の因子も、H1N1インフルエンザ重症化に関与していることが明らかにされた。症状が発現してから48時間以内に抗ウイルス薬の投与を開始すると、患者によっては有効であることが分かった。

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集中治療文献レビュー2010年4月① [critical care]

Anesthesia Literature Review Critical Care Medicine

Anesthesiology 2010年4月号より

Intravenous Drug Administration During Out-of-Hospital Cardiac Arrest
JAMA. 2009;302(20):2222-2229.

エピネフリンはACLSに必須の薬剤として広く使用されている。だが、心肺蘇生におけるエピネフリン使用の有効性を裏付ける臨床データは不足している。最近の諸研究では、エピネフリン投与が転帰の悪化につながる可能性があることを示す結果が報告されている。

ACLSプロトコルから薬剤の経静脈投与を除外した場合に、病院外心停止症例の生存退院率が改善するかどうかを検証するため、前向き無作為化比較対照試験を行った。外傷以外の原因による成人病院外心停止で救急隊が治療にあたった症例を連続的に対象とした(経静脈薬剤投与を行うACLS群418名、経静脈薬剤投与を行わないACLS群433名)。

短期生存率は、経静脈薬剤投与を行うACLS群の方が経静脈薬剤投与を行わないACLS群よりも高かった(P=0.004)。しかし、生存退院率(10.5% vs 9.2%; P=0.61)、良好な神経学的転帰を呈する生存者の割合(9.8% vs 8.1%; P=0.45)および一年後生存率(10% vs 8%; P=0.53)については有意差は認められなかった。心肺蘇生の質については両群間に差はなかった。心室細動、心肺停止から救急隊到着までの時間および目撃者がいるか公共の場での心停止といった要素についての調整を行ったところ、経静脈薬剤投与を行うACLSと経静脈薬剤投与を行わないACLSのあいだに、生存退院率の有意差は認められなかった。

解説
病院外心停止症例において、エピネフリンをはじめとする経静脈薬剤を使用しても長期的転帰は改善しないことが明らかにされた。ただし、この研究を解釈するに当たっては、薬剤非投与群の生存率が過大評価されていることに注意を払う必要がある。とは言え、ここに示されたデータは、院外心停止後の長期転帰には経静脈薬剤以外の要因が関与していることを示唆している。

Prolonged mechanical ventilation after cardiac surgery: Outcome and predictors
J Thorac Cardiovasc Surg 2009;138:948-953

心臓手術後の人工呼吸期間が長期におよぶと、院内死亡率は40%にものぼり、医療制度全体に対しても大きな経済的負担がのしかかることになる。しかし、人工呼吸期間長期化の可能性を予測することは困難である。この前向き観測研究では、手術3日後に人工呼吸が行われている患者を連続的に登録し、術前・術中・術後のデータが記録された。

心臓手術後第3日に生存していた2620名のうち、163名に人工呼吸が行われていた。術後第10日までに、このうち50名(31%)が人工呼吸器離脱に成功し、78名(48%)には依然人工呼吸が行われ、35名(21%)は死亡した。術後第3日までの人工呼吸器離脱成功に関連する要因は、尿量500mL/day以上、GCS15点(満点)、動脈血炭酸水素イオン濃度20mM以上、血小板数10万/μL以上、エピネフリンまたはノルエピネフリン不使用および肺傷害なしであった。この研究で得られたデータは、スコアリングシステムの開発に用いられた。このスコアリングシステムを用いれば、迅速な人工呼吸器離脱が可能な患者を同定し、抜管できる患者に余計な医学的介入を行うのを防ぐことができる可能性がある。

人工呼吸器離脱成功のオッズ比
尿量500mL/day以上   16.47
GCS15点(満点)     9.75
動脈血炭酸水素イオン濃度20mM以上 6.09
血小板数10万/μL以上  3.18
エピネフリンまたはノルエピネフリン不使用  2.84
肺傷害なし    2.40

解説
ここに示されたデータは、心臓手術後に人工呼吸器離脱が成功する可能性の高い患者に気管切開のような侵襲的手技を行ってしまうことの歯止めになるだろう。この研究で作成されたスコアリングシステムの外的妥当性を検討するには、心臓手術後患者の管理を行っている他のICUでこのスコアを使用した場合の有効性の前向き評価を行う必要がある。

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麻酔文献レビュー2010年4月② [anesthesiology]

Anesthesia Literature Review Perioperative Medicine

Anesthesiology 2010年4月号より

Downwardly Mobile:The Accidental Cost of Being Uninsured
Arch Surg. 2009;144(11):1006-1011.

2007年の時点で、米国民のうち4570万人(15.3%)が無保険者であり、今後10年間のうちに無保険者がさらに1000万人増加すると予測されている。医療保険の内容や有無によって、スクリーニング検査、入院適応、治療内容および転帰が異なることが複数の研究で明らかにされている。成人無保険者は、医療保険に加入している成人と比べ死亡リスクが25%も高い。救急医療および出産に関する法律(Emergency Medical Treatment and Active Labor Act; EMTALA: 1986年成立の連邦法。メディケア患者を受け入れる病院では、救急患者および急な分娩症例を病状が安定するまで治療しなければならないという法律。)などの規制が実施され、医療保険の有無によって受けられる医療の質に差が生ずることのないように対策が講じられてはいるが、外傷患者の転帰(院内死亡率)も保険の有無によって異なる可能性がある。外傷患者における転帰の差を評価するため、National Trauma Data Bankに保管されている2002年から2006年までのデータを集めた。このデータは、米国に所在する900ヶ所以上の外傷治療センターに収容された270万人の患者についての情報である。

黒人およびヒスパニックの患者は白人患者よりも無保険である者が多かった(オッズ比3.29 vs 4.36)。同様に、女性よりも男性の方が無保険者が多かった。院内死亡を独立変量として解析したところ、調整前の結果では無保険者の方が有意に死亡率が高かった(オッズ比1.39; P<0.001)。性別、人種、年齢、ISS(injury severity score)、RTS(revised trauma score)および受傷機転についての調整を行ってもなお、無保険者の方が死亡率が有意に高かった(オッズ比1.80; P<0.001)。基礎疾患を持っている可能性の低い若年患者を対象としたサブグループ解析でも、無保険者の方が死亡率が有意に高かった(オッズ比1.89; O<0.001)。頭部外傷患者を対象としたサブグループ解析でも、無保険者の方が有意に死亡率が高く(オッズ比1.65; P<0.001)、基礎疾患が一つ以上ある患者のサブグループでも同様であった(オッズ比1.52; P<0.001)。

解説
貫通創または鈍的外傷を負った無保険患者のリスク調整後死亡率は、医療保険に加入している場合よりも高い。このような差が生ずる理由として考えられるのは、治療開始の遅れと治療内容の違いである。

Impact of Left Ventricular Assist Device Bridging on Posttransplant Outcomes
Ann Thorac Surg 2009;88:1457-1461

ドナー心臓の数は、需要が供給を上回っている。そのため、保存的治療では状態が十分に安定しない移植待機患者ではLVAD (左心補助装置)の使用や強心薬の経静脈投与などが、移植までの間をもたせるための治療法として選択されることがある。しかし、LVADの短期的および長期的な有効性については、肯定的データも否定的データも報告されている。

移植臓器供給全米ネットワーク(UNOS; United Network for Organ Sharing)のstatus 1(移植の医学的緊急度が最も高い)に該当する心移植待機患者のうち、1994年から2007年までの期間に移植までのつなぎの治療として植え込み型LVADが使用された患者(86名)と、強心薬の経静脈投与のみが行われた患者(173名)を対象とした遡及的調査を実施した。

基準時点の背景因子および移植前の血行動態は両群で同等であったが、LVAD群の方が移植時点において人工呼吸が行われている患者が占める割合が高かった(6.7% vs 4.6%; P<0.02)。LVAD群ではLVAD使用によって血行動態(心係数、肺血管抵抗、中心静脈圧およびPCWP)が有意に改善した。

移植後1年間の感染性合併症および拒絶反応の発生率はLVAD群と強心薬のみの群とで同等であった。しかし、移植後腎機能障害の発生率は、強心薬のみの群の方が高かった。

解説
末期心不全患者では、心移植までのつなぎの治療として強心薬の経静脈投与およびLVADが選択される。昔はLVAD植え込み患者の死亡率が高かった。しかし、新世代のLVADを使用すれば、短期および長期の移植後生存率および合併症発生率は、強心薬のみを使用した場合と遜色ない。
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麻酔文献レビュー2010年4月① [anesthesiology]

Anesthesia Literature Review Perioperative Medicine

Anesthesiology 2010年4月号より

Strokes after cardiac surgery and relationship to carotid stenosis.
Arch Neurol. 2009 Sep;66(9):1062-4.

脳卒中をはじめとする脳血管合併症は、心臓手術後の重篤な合併症や死亡の大きな原因の一つである。術後脳血管障害の発生には複数の要因が関与するものの、予測因子として頸動脈の有意狭窄が挙げられる。頸動脈手術および心臓手術が、脳血管障害のリスク低減を目的として合併手術として実施されることは珍しくない。しかし、このような合併手術が実際には脳血管障害を含む有害事象をかえって増やしている可能性もある。

この遡及的研究は、単一の高次機能病院で行われた。目的は、頸動脈の有意狭窄が心臓手術後の脳血管障害の発生に及ぼす影響についての厳密な検証である。冠動脈バイパス術、大動脈弁置換術、または両者の合併手術を受けた計4335名の患者が対象となった。臨床的に確定診断が下された脳血管障害は、全体の1.8%において当該手術による入院中に発生した。脳血管障害発生例のうち大血管型(large vessel type)はわずか5.3%を占めるに過ぎず、大半(76.3%)は頸動脈の有意狭窄がないのに術後脳血管障害が発生していた。脳血管障害発生例のうち60%の症例では、頭部CT所見から単独の頸動脈領域の病変ではないことが示されていた。

術後脳血管障害発生例のうち94.7%では、頸動脈の有意狭窄との直接的な関連は見出されなかった。頸動脈と心臓の合併手術が行われた症例では、術後脳血管障害発生のリスクが高かった(15.1%)。同程度の頸動脈狭窄があっても、心臓のみの手術を受けた患者では術後脳血管障害発生例は皆無であった(P=0.004)。

解説
心臓手術(冠動脈バイパス術および大動脈弁置換術)後に脳血管障害が発生する症例は少ない。脳血管障害発生例のうち、頸動脈の有意狭窄との関連のないものが90%以上を占める。心臓および頸動脈の合併手術は、脳血管障害のリスクを上昇させる。この研究の著者らは、心臓手術と頸動脈手術を同時実施する必要はないと結んでいる。

Pediatric Pain After Ambulatory Surgery: Where's the Medication?
Pediatrics. 2009 Oct;124(4):e588-95. Epub 2009 Sep 7.

米国では年間500万人以上の子供が手術を受ける。このうち実に75%もの患児がひどい術後痛に見舞われているというのに、帰宅後の疼痛管理を検証する臨床試験は全くと言っていいほど行われていない。術後疼痛管理が適切に実施されないと、予定外の受診が増えることにつながる。このような予定外受診時の診察は、たいていの場合小児科医が行っている。

この研究では、扁桃摘出術またはアデノイド切除術のいずれかの予定手術を受ける12歳以下の患児261名を対象とし、小児の術後疼痛管理の評価が行われた。基準時点のデータは術前に収集し、統一された麻酔方法および術式が全例に適用された。帰宅後の疼痛および鎮痛薬使用量について2週間にわたり記録した。

退院の時点で、看護師が患児の疼痛レベルを0~100までのスケールを用いて評価したところ、30以上の強さの疼痛を訴える患児が27%を占めていた。自宅における親による疼痛評価では、痛みがひどいと評価された症例は退院当日が77%、手術1週間後が49%、手術2週間後では7.5%を占めていた。しかし、対象患児の24%では退院当日の自宅における鎮痛薬使用回数は0回または1回にとどまっていた。手術2週間後までの全期間中に、鎮痛薬を3回以下しか投与されていなかった症例が23%を占めていた。対象患児のうち71%では、自宅における疼痛評価を行った全16回のうち、その評価に従い親が鎮痛薬を投与したのは8回未満であった。

小児手術症例の多くでは、術後疼痛管理が不十分である。術後疼痛が軽度、中等度もしくは重度のいずれの群でも、投与されている鎮痛薬の量に有意差は認められなかった。術後疼痛評価と鎮痛薬投与量のあいだにこのような大きな乖離が認められる理由は不明である。

解説
扁摘後の子供の術後疼痛は、親の評価によるとかなりひどい。しかし、痛みがひどくても多くの場合、鎮痛薬は投与されていない。術後の子供たちに適切な疼痛管理を実施する上での障壁を明らかにするには、さらに研究を重ねる必要がある。
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プロバイオティクス投与とVAP発生率~考察② [critical care]

Impact of the administration of probiotics on the incidence of ventilator-associated pneumonia: A meta-analysis of randomized controlled trials

Critical Care Medicine 2010年3月号より

我々がここに示した知見は、プロバイオティクスによるVAP予防というテーマについて行われる今後の研究に役立つ興味深いヒントとなるだろう。人工呼吸患者には、乳酸菌を主体としたプロバイオティクス製剤が有用であると考えられる。だが、乳酸菌以外の菌種、例えば酵母など、を用いたプロバイオティクス製剤の有効性についてのデータは、今のところ我々は持ち合わせていない。さらに、今回のメタ分析におけるサブグループ解析で、シンバイオティクス製剤が肺炎の予防に有効であるという結果が得られたことから、単独菌種のプロバイオティクス製剤を投与するのではなく、プロバイオティクスとプレバイオティクスの併用(つまりシンバイオティクス)の方が好ましい可能性がある。本メタ分析の対象としたRCTsのうち外傷患者のみを対象とした2編ではプロバイオティクスが有望であることを示す結果が得られていることを踏まえると、プロバイオティクスによるVAP予防効果についての研究は外傷患者に絞って行うとよいかもしれない。

今回のメタ分析の対象となったRCTsのうち、プロバイオティクス投与に起因する菌血症についてのデータを示したもの(3編)では、該当する症例の報告はなかった。残念ながらこの3編では、各患者における血液培養施行回数や血液培養が実施された患者の割合が示されていない。プロバイオティクス製剤は薬品ではなくサプリメントとして市販もされているため、医薬品のような厳しい規制の対象ではない。プロバイオティクスによる疾患、つまり乳酸菌によるVAP、菌血症および心内膜炎などの報告および監視は行われていないため、弱っている患者に対するプロバイオティクス投与の安全性が懸念されている。例えばICU患者は弱っている患者の代表例である。ICU患者はたいてい免疫能低下の既往があったり、現に進行中の重篤な免疫能低下を抱えていたりする。しかし、プロバイオティクス擁護派は、移植患者やHIV患者などの極めて脆弱な患者にも乳酸菌製剤は投与されていて重篤な合併症の報告もない、と反駁するであろう。今回のメタ分析の対象となったRCTのうち除外基準を設けていたものでは、奇しくもすべてが免疫抑制患者を対象から除外していた。したがって、今回のメタ分析で得られた知見からは、免疫抑制状態にある患者に対しするプロバイオティクス投与の安全性について見解を述べることはできない。副作用の可能性を理由にプロバイオティクス関連の研究を躊躇すべきではなく、それよりむしろ、プロバイオティクス製剤を用いた研究を実施するのであれば期間中のプロバイオティクスに起因する感染の監視と積極的な調査を行う必要がある、という考えを専門家は共有しているように見受けられる。

本研究を解釈する際は、問題点がある可能性を念頭におくべきである。第一に、プロバイオティクス関連のエビデンスを統合しようとすれば、どんなやり方であっても結局は、研究デザイン、評価対象となる病態および使用するプロバイオティクス製剤にばらつきがあるという制限がつきまとう。例えば、プロバイオティクスが重症患者の転帰に及ぼす影響の評価を目的とした試験はいくつも行われているが、VAP発生率については触れられていないものも多い。今回のメタ分析では、VAPについてはっきりと言及しているRCTのみを対象とした。VAP以外の病態について検討していたり、RCT以外の研究デザインで行われたりした研究は対象としなかったのである。さらに、対象としたRCTのすべてが、乳酸菌を主成分としたプロバイオティクス製剤を用いていた。5編のうち3編では奇遇にも全く同じプロバイオティクス製剤が用いられていた。この3編についてのサブグループ解析を行ったところ、5編すべてを対象とした主解析と同様の結果が得られた(つまり、プロバイオティクスによるVAP予防効果が確認された)。

第二に、データ不足のためプロバイオティクスが人工呼吸器非使用日数に及ぼす影響については検討することができなかった(VAPについてのメタ分析では、発生率とともに人工呼吸器非使用日数が評価されるのが普通である)。第三に、肺炎ではなく実は気管支炎であったのにVAPと診断された症例を除外することはできなかった。第四に、対象となった5編のRCTは、抗菌薬の全身投与に関しての情報が十分には示されていなかった。例えば、抗菌薬全身投与の適応、開始時期、適切な抗菌薬が選択されていたか否か、平均投与期間などである。第五に、プロバイオティクス製剤の投与量、投与期間および投与経路の違いが交絡因子として作用した可能性がある。そのため、プロバイオティクス投与様式に関する情報を慎重に収集し、Table 1にまとめた。さらに、プロバイオティクスを胃管から投与した試験のみを対象としたサブグループ解析を実施し、やはりプロバイオティクス群では対照群よりもVAP発生率が低いという結果を得た。

まとめ

今回の研究では、プロバイオティクス投与によってVAP発生率が低下するという、臨床に有益な知見が明らかになった。臨床試験を一つ行うだけでは、おそらく検出力不足のためこのようなはっきりした結果を得るには至らないと思われる。本研究で得られた知見を踏まえるとこのテーマは有望であり、今後もさらなる研究が重ねられるべきである。プロバイオティクスによるVAP予防効果についてのRCTは、今のところ少なくとも2編が進行中である。今回のメタ分析の結果は、この現在行われているRCTの結果を解釈する際に役立つ新しい視点を示したであろうし、より説得力のある仮説をより質の高いデザインで研究する上でも貢献することであろう。今後行われる同種の研究では、プロバイオティクスの安全性を厳密に評価するため、血液培養をしっかり行うべきである。

教訓 乳酸菌だけを投与するよりも、乳酸菌とプレバイオティクスとの混合投与(=シンバイオティクス)の方が肺炎予防効果が高いようです。
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プロバイオティクス投与とVAP発生率~考察① [critical care]

Impact of the administration of probiotics on the incidence of ventilator-associated pneumonia: A meta-analysis of randomized controlled trials

Critical Care Medicine 2010年3月号より

考察

今回のメタ分析では人工呼吸患者総勢289名についてのデータを統合・解析し、プロバイオティクス投与によりVAP発生率が低下するという結果が得られた。様々なサブグループ解析も実施し、いずれにおいても一貫して同様の結果が得られたことから、本メタ分析で得られた主要な知見の確からしさがさらに増したと考えられる。さらに、プロバイオティクスを投与するとICU滞在期間が短縮し、緑膿菌の気道定着が減ることも分かった。しかし、全死因死亡率の低下と人工呼吸期間の短縮は認められなかった。

我々の行ったメタ分析の主要結果は、同じ案件について過去に発表されたレビューの主旨とは相反する。先行レビューでは、重症患者におけるプロバイオティクスの有用性に疑義が呈されている。Watkinsonらが行ったそのメタ分析では、「プレバイオティクス、プロバイオティクスもしくはシンバイオティクスを成人重症患者に投与しても、ICU滞在期間、院内死亡率および院内感染発生率のいずれにも有意な改善は認められない」と述べられている。同じくIsacowらによるプロバイオティクスによる院内感染予防についてのレビューでも、メタ分析は行われていないものの、「現時点では、プロバイオティクス投与によって院内肺炎が減少することを裏付ける臨床エビデンスは存在しない」と結ばれている。しかし、上記二編のいずれの文献も、著者らがはっきり明言している通り、検討対象となるエビデンスが論文作成時には不足していたため決定的な結論を得ているわけではない。さらに、二編ともVAPには的を絞っていない。反対に、我々の行ったメタ分析では新しく発表されたRCTs(つまり前述の二編が上梓された後に世に出たRCTs)も対象とし、プロバイオティクスによるVAP予防効果に限定して解析を行った。

今回のメタ分析で得られた主要な結果(プロバイオティクスにはVAP予防効果があること)と同じ結果が、今のところ梗概だけしか発表されていない二重盲検RCTでも確認されている。この研究を行ったMorrowらは成人人工呼吸患者40名を対象とし、プロバイオティクス製剤(乳酸菌GG株)投与群とプラセボ群を比較した。そして、プロバイオティクス製剤投与群の方が有意ではないもののVAP発生率が低いという結果が得られた(プロバイオティクス製剤vsプラセボ群:19名中5名[26%] vs 21名中10名[45%];p=0.21;カイ2乗検定)。我々の行ったメタ分析に、このMorrowらのRCTを加えて解析を行っても、元々の主要結果(プロバイオティクス投与によってVAPが減少する)と一致した結果が得られたことは、注目すべき点である(患者総数729名;固定効果モデル:OR, 0.59; 95%CI, 0.40-0.86;変量効果モデル:OR, 0.54; 95%CI, 0.33-0.90;対象RCTs 6編)。つまり、プロバイオティクスによってVAP予防効果が得られるという我々の主張が、さらに盤石なものとなったというわけである。

重症患者におけるプロバイオティクスの役割を検討した体系的総説で俎上にあげられたRCTsのうち3編を今回のメタ分析では対象としなかったことに疑問が投げかけられるかもしれない。この3編は、術後患者だけが対象とされている。術後患者は大半がICU滞在期間48時間未満、人工呼吸期間48時間未満であり、この期間内に肺炎が発生したとしてもそれはVAPとは言い難い。この点については、前述の体系的総説でも指摘されている。今回のメタ分析では確実な結果を示したいと思い、厳密な方法を採用した。つまり、人工呼吸管理が行われている患者が対象とされ、VAPについてはっきりと言及されているRCTsのみを対象としたのである。さらに、前述の3編(本研究では対象としなかったが、過去の総説では触れられている論文)を我々のメタ分析に組み入れると、我々の得た結果が覆るどころか、プロバイオティクスにVAP予防効果があることがさらに強調されることになるのである(患者総数859名;固定効果モデル:OR, 0.62; 95%CI, 0.42-0.91;変量効果モデル:OR, 0.61; 95%CI, 0.39-0.95;対象RCTs 6編)(Fig. 4)。

今回のメタ分析で得られたもう一つの興味深い知見は、プロバイオティクス投与群では緑膿菌の気道定着が見られる患者が少なかったことである。これが、プロバイオティクスを投与された患者では、緑膿菌によるVAPの発生率が(統計学的には有意ではなかったが)
低いことにつながってものと考えられる。プロバイオティク群では、緑膿菌によるVAPは少ない傾向が認められたが、腸内細菌や黄色ブドウ球菌によるVAPの減少は確認されなかった。したがって、プロバイオティクス群で緑膿菌の気道定着が少なく、緑膿菌によるVAPも少ないことは、プロバイオティクスが緑膿菌という特定の細菌に特異的に作用することを意味している可能性がある。しかし、抗緑膿菌活性を持つ抗菌薬を投与されていた患者の数が、対照群よりプロバイオティクス群に多かっただけなのではないか、という反論も成り立つかもしれない。我々は、この反論について正確に答えることはできない。なぜなら、VAPの診断が下されるより前の時点における抗緑膿菌抗菌薬の使用状況についてのデータが少ないからである。実際のところ、本メタ分析の対象RCTのなかで1編のみで抗緑膿菌抗菌薬の使用状況に関するデータが示されていたに過ぎない。このRCTでは、「抗緑膿菌抗菌薬使用の既往と緑膿菌感染症の発生のあいだには統計学的に有意な相関は認められない」と報告されている。この問題については、今後の研究に期待したい。

教訓 重症患者におけるプロバイオティクスの有用性を検討した過去のレビューでは否定的な見解が示されていますが、今回のメタ分析ではVAPに的を絞り、新たに発表されたRCTも対象にしたところ、プロバイオティクスにはVAP予防効果がありそうだ、という結果が得られました。
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プロバイオティクス投与とVAP発生率~結果② [critical care]

Impact of the administration of probiotics on the incidence of ventilator-associated pneumonia: A meta-analysis of randomized controlled trials

Critical Care Medicine 2010年3月号より

VAP発生率
今回のメタ分析で検討した各種転帰をTable 2にまとめた。5編すべてでVAP発生率が報告されていた。統計学的に有意な異質性(heterogeneity)は認められなかった(p=0.06; I^2=39%)。プロバイオティクス群の方が対照群よりもVAP発生率が有意に低かった(患者総数689名;固定効果モデル:OR, 0.61; 95%CI, 0.41-0.91;変量効果モデル:OR, 0.55; 95%CI, 0.31-0.98)。各RCTにおけるVAP発生率のオッズ比および5編の統合オッズ比をFigure 2に示した。
サブグループ解析:1編のRCTを除いた残り4編についてのサブグループ解析を行ったところ、やはり対照群よりもプロバイオティクス群の方がVAP発生率が低いという結果が得られた(患者総数645名;固定効果モデル:OR, 0.62; 95%CI, 0.41-0.94;変量効果モデル:OR, 0.56; 95%CI, 0.30-1.06)。サブグループ解析にあたって除外した1編では、プロバイオティクス製剤が胃管から投与される代わりに口腔内に塗布されていた。同じプロバイオティクス製剤(Synbiotic 2000 FORTE)を使用した3編についてのサブグループ解析でも同様の結果が得られた(患者総数437名;固定効果モデル:OR, 0.44; 95%CI, 0.25-0.75;変量効果モデル:OR, 0.44; 95%CI, 0.24-0.79)。また、VAP発生率が非常に高かった1編を除外したサブグループ解析でもプロバイオティクス群の方がVAP発生率が有意ではないが低い傾向が認められた(患者総数624名;固定効果モデル:OR, 0.68; 95%CI, 0.44-1.05;変量効果モデル:OR, 0.64; 95%CI, 0.35-1.17)。

VAPの起因菌については、5編のうち2編でデータが示されていた。報告されていた起因菌は、腸内細菌、緑膿菌、黄色ブドウ球菌、Haemophilus influenzae、Acinetobacter baumanniiおよびStenotrophomonas maltophiliaであった。プロバイオティクス群と対照群のあいだに、腸内細菌、緑膿菌および黄色ブドウ球菌によるVAP発生率の有意差は認められなかった(腸内細菌患者総数77名;固定効果モデル:OR, 1.87; 95%CI, 0.71-4.93;変量効果モデル:OR, 1.87; 95%CI, 0.71-4.94、緑膿菌患者総数77名;固定効果モデル:OR, 0.31; 95%CI, 0.08-1.19;変量効果モデル:OR, 0.31; 95%CI, 0.08-1.18、黄色ブドウ球菌患者総数77名;固定効果モデル:OR, 1.05; 95%CI, 0.36-3.02;変量効果モデル:OR, 1.06; 95%CI, 0.36-3.11)。

全死因死亡率
4編のRCTsのICU滞在中全死因死亡率の解析を行った。異質性(heterogeneity)は認められなかった(p=0.58; I^2=0%)。プロバイオティクス群と対照群のあいだに全死因ICU死亡率の差は認められなかった(患者総数481名;固定効果モデル:OR, 0.75; 95%CI, 0.47-1.21;変量効果モデル:OR, 0.76; 95%CI, 0.47-1.21)(Fig. 3)。

5編のうち2編では、入院中の全期間における全死因死亡率が報告されていた。この2編についても異質性は認められなかった(p=0.90; I^2=0%)。プロバイオティクス群と対照群のあいだに全死因院内死亡率の差は認められなかった(患者総数303名;固定効果モデル:OR, 0.75; 95%CI, 0.46-1.24;変量効果モデル:OR, 0.75; 95%CI, 0.46-1.24)。

ICU滞在期間
メタ分析の対象RCTs 5編のうち3編でICU滞在期間が示されていた。対照群と比べプロバイオティクス群の方がICU滞在日数が有意に短かった(患者総数368名;固定効果モデル:加重平均の差,-0.99日; 95%CI, -1.37~-0.61)。しかし、変量効果モデルではこの差は有意ではなかった(加重平均の差,-1.93日; 95%CI, -5.82~1.95)。ICU滞在日数が最長であった1編を除いたサブグループ解析でも同様の結果が得られた(患者総数303名;固定効果モデル:加重平均の差,-0.97日; 95%CI, -0.31~-0.29;変量効果モデル:加重平均の差,-0.49日; 95%CI, -2.25~1.27)。

人工呼吸期間
メタ分析対象文献5編のうち3編で、人工呼吸期間が示されていた。プロバイオティクス群と対照群とのあいだに人工呼吸期間の差は認められなかった(患者総数338名;固定効果モデル:加重平均の差,-0.01日; 95%CI, -0.31~0.29;変量効果モデル:加重平均の差,-2.24日; 95%CI, -6.65~2.16)。

緑膿菌の気道定着
緑膿菌の気道定着について報告していたのは、メタ分析対象文献5編のうち2編にとどまった。この2編についての異質性は認められなかった(p=0.82; I^2=0%)。対照群と比べプロバイオティクス群の方が緑膿菌定着症例が少なかった(患者総数252名;固定効果モデル:OR, 0.35; 95%CI, 0.13-0.93;変量効果モデル:OR, 0.35; 95%CI, 0.13-0.93)。

下痢
下痢が発生した患者数についてのデータが報告されていたのは5編中2編であった。この2編についての異質性は認められなかった(p=0.19; I^2=42%)。プロバイオティクス群と対照群とのあいだに下痢患者数の差は認められなかった(患者総数324名;固定効果モデル:OR, 0.61; 95%CI, 0.28-1.34;変量効果モデル:OR, 0.60; 95%CI, 0.21-1.73)。

プロバイオティクスによる合併症
プロバイオティクス製剤に起因する菌血症について触れた3編では、該当する症例は無かったと報告されていた。

教訓 プロバイオティクス群の方がVAP発生率が低く、ICU滞在期間が短く、緑膿菌の気道定着が少ないという結果が得られました。ICU死亡率、院内死亡率、人工呼吸期間、および下痢発生率については対照群と差がありませんでした。
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プロバイオティクス投与とVAP発生率~結果① [critical care]

Impact of the administration of probiotics on the incidence of ventilator-associated pneumonia: A meta-analysis of randomized controlled trials

Critical Care Medicine 2010年3月号より

結果

選定したRCT
今回のメタ分析の対象としてふさわしい文献を選定するまでの流れをFigure 1に示した。初回検索で得られた115編の文献のうち、大半がFigure 1の図中に示す理由によって除外された。3編のRCTsは、重症患者が対象に含まれていたものの人工呼吸中に肺炎を発症した患者の割合が不明であったので除外した。最終的に5編のRCTsが、本メタ分析の対象となる基準を満たした。

選定したRCTの特徴
選定した5編のRCTsの特徴をTable 1にまとめた。標本数の平均値は159名(50-300名)であった。5編すべてが2005年以降に出版されたものであった。3編が二重盲検試験、4編が単一施設試験であった。Jadadスコア(ハダッドスコア;RCTの質を評価するスコアリングシステム。最低0点、最高5点。3点以上であれば比較的質が高いことを意味する。)が3点以上であったのは3編であった。対象となった人工呼吸患者のうち外傷症例が100%であったのは2編、20%~25%であったのは2編、残りの1編では外傷症例が占める割合は10%未満であった。対象患者のICU入室時における重症度については、5編すべてで報告されていた(Table 1)。

5編のうち4編では、VAPの診断を細菌学的に確定するのには、気管内採痰の定性培養で十分であるとされていたが、1編ではVAPの確定診断には定量培養(気管内採痰、BAL、PSB[保護的標本擦過]のいずれかの検体)が必要とされていた。

研究手順
各試験におけるプロバイオティクス製剤の種類、投与量、投与方法および投与期間の詳細をTable 1にまとめた。5編のうち3編のRCTsでは同じプロバイオティクス製剤(Synbiotic 2000 FORTE; Medipharm, Sweden and Des Moines, IA)が用いられていた。このシンバイオティクス製剤には、4つの乳酸菌(プロバイオティクス:Pediococcus pentosaceus, Leuconostoc mesenteroides, Lactobacillus paracasei subspecies paracasei, およびLactobacillus plantarum)と食物繊維(プレバイオティクス:βグルカン、イヌリン、ペクチンおよび難消化性デンプン)が含まれている。残りの2編では、単一の乳酸菌のみを含むプロバイオティクス製剤が用いられていた。具体的には、1編ではLactobacillus caseirhamnosus、もう1編ではLactobacillus plantarum 299が投与された。対象となった5編のRCTsの大半で、プロバイオティクス製剤は経鼻胃管または経口胃管から一日二回投与されていた。投与期間はICU退室または死亡までであった。

3編の対象RCTsでは、プロバイオティクス群および対照群における抗菌薬の全身投与の有無が示されていた(Table 1)。各試験の対象患者の大多数(>90%)において、ICU滞在中のいずれかの時点で抗菌薬の全身投与が行われていた。抗菌薬全身投与については、両群間に有意差は認められていない(Table 1)。5編中3編で、対象患者のうち研究登録時に抗菌薬の全身投与が行われていた患者の割合(~93%)が示されていたが、2編ではこれに相当するデータは記載されていなかった。抗菌薬はVAPだけでなく、血流感染や尿路感染といった他の種類の感染を治療する目的でも使用されていた。

教訓 2005年以降、プロバイオティクスとVAP発生率についてのRCTが行われています。メタ分析の対象となった5編のRCTにおけるプロバイオティクス群と対照群のVAP発生率は、9% vs 13%、24% vs 23%、4% vs 14%、15% vs 39%、54% vs 80%でした。


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プロバイオティクス投与とVAP発生率~方法 [critical care]

Impact of the administration of probiotics on the incidence of ventilator-associated pneumonia: A meta-analysis of randomized controlled trials

Critical Care Medicine 2010年3月号より

プロバイオティクスは、市販の微生物である。適量を投与すれば、単一菌種であっても複数菌種であっても宿主の健康増進に資する。プロバイオティクスは、細菌の増殖や活性を助ける難消化性の食品添加物(プレバイオティクス)と一緒に投与されることが多い。プロバイオティクスとプレバイオティクスの両者を含有する製品は、シンバイオティクスと呼ばれている。VAPをはじめとするICUで発生する様々な感染を予防するのに、プロバイオティクス投与が有効であると言われている。プロバイオティクスにVAPを予防する効果があると想定されるのは、プロバイオティクス製剤中の細菌がVAPの起因菌と闘う可能性が期待されているからである。つまり、人工呼吸患者の口腔咽頭内および胃内に存在する病原菌が、プロバイオティクスの投与により減ると考えられているのである。最近では、プロバイオティクスの感染予防効果は、免疫能増進作用によってもたらされている可能性が高いという報告が相次いでいる。

プロバイオティクスによって引き起こされる疾患についての報告が稀にあるため、安全性に疑念が持たれているとは言うものの、プロバイオティクスには安価、投与が簡便、毒性がほとんどない、といったいくつもの利点があることが広く知られ、市中肺炎などの呼吸器感染症の予防効果が期待されている。特に、耐性菌が増えている現代では、研究者および臨床医のあいだで、感染症治療における抗菌薬以外の補助治療法に対する関心が高まっている。

過去数ヶ月間に、プロバイオティクスのVAP予防効果を検討した良質の無作為化比較対照試験(RCTs)がいくつも発表された。つまり、有用なエビデンスが相当増えたというわけである。そこで我々は、続々と発表されるRCTsを対象としたメタ分析を行い、プロバイオティクス投与によるVAP発生率の変化について得られたエビデンスの評価と統合を試みた。

方法

1950年1月から2009年4月に発表された文献をPubMed、Scopus、Current Consents、およびCochrane Central Register of Controlled Trialsで検索した。検索キーワードは、[“pneumonia” OR “critically ill”] AND [“probiotics” OR “prebiotics” OR “synbiotics” OR “lactobacillus” OR “bifidobacterium”]とした。メタ分析の対象としたのは、検索の結果得られた文献のうち、成人人工呼吸患者にプロバイオティクスと対照薬(プラセボなど)のいずれかを投与しVAP発生率を比較したものとした。プロバイオティクスは単独投与、プレバイオティクスとの混合投与のいずれでもよいこととした。

解析の対象とした転帰とその定義は以下の通りである。

転帰:今回のメタ分析の主要転帰はVAP発生率である。二次転帰は、全死因死亡率(ICU死亡率およ院内死亡率の両方)、ICU滞在期間、人工呼吸期間(死亡または抜管までの期間)、呼吸器への緑膿菌定着、下痢の発生数、プロバイオティクスによる菌血症/真菌血症とした。

VAP:臨床所見(発熱または低体温、膿性痰)、検査所見(白血球数増加または減少)および画像所見(胸部X線写真で新たな浸潤影が認められる)が見られた場合を肺炎とした。人工呼吸を48時間以上行われている患者に肺炎が発生したときをVAPと定義した。

教訓 プロバイオティクスは、生きた乳酸菌やビフィズス菌のことです。プレバイオティクスは、オリゴ糖、食物繊維、ラクトフェリンなどのことです。シンバイオティクスはプロバイオティクスとプレバイオティクスを併用することです。たとえば、ヤクルトBL整腸薬とヤクルトオリゴメートHPを併用するとシンバイオティクスになります。
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ARDS人工呼吸中の肺胞虚脱・再開通~考察③ [critical care]

Lung Opening and Closing during Ventilation of Acute Respiratory Distress Syndrome

American Journal of Respiratory and Critical Care Medicine 2010年3月15日号より

ここに至り、自問自答してみる。虚脱・再開通を呈する肺組織がVILI発生の重大な要因であり、そのためにALI/ARDSの生存率に影響を与えるということを確認できるような臨床的エビデンスが存在するだろうか?すっきりした明快な答えは出せないものの、答えはおそらくイエスである。Villarらは、低一回換気量で高PEEPの換気をALI/ARDS患者に行い、比較的大きい一回換気量で低PEEPの換気を行った場合よりも死亡率が低いことを示した。研究第1日のプラトー圧(プラトー圧は肺胞の歪みを間接的にあらわす指標と考えられる)には両群で差がなかった。つまり、虚脱と再開通を繰り返す肺組織量の差が生存率の差につながっていることを間接的に証明しているものと考えられる。同様に、HagerらはARDSネットワークのデータベースを二次解析し、プラトー圧の高低に関わらず一回換気量が減ると死亡率が低下することを明らかにし、一回換気量を小さくすることの重要性を示した。これもまた、全体的な肺胞の歪みよりも虚脱・再開通を繰り返す肺組織の量が死亡率に大きな影響を及ぼす要因であることを示している。ExPress(Positive End-Expiratory Pressure Setting in Adults With Acute Lung Injury and Acute Respiratory Distress Syndrome)研究とLOVS(Lung Open Ventilation to Decrease Mortality in Acute Respiratory Distress Syndrome)研究という、最近行われ発表された二編の臨床試験では高いPEEPと低いPEEPの比較が行われ、高いPEEPをかけると肺の障害が進展するのが抑制されることが示された。また、Talmorらは、食道内圧(経肺圧とほぼ同じ)を測定しその結果に応じてPEEPを設定したところ、ARDSネットワーク推奨の人工呼吸管理を行った場合よりも死亡率が低下することを明らかにした。この研究における食道内圧群とARDSネットワーク準拠群の吸気終末経肺圧は同等であったが、呼気終末経肺圧は食道内圧群の方が有意に高かった。つまり、この研究からも虚脱・再開通を繰り返す肺組織が生存率に影響を及ぼしている可能性があることが窺われる。我々が行った今回の研究では、リクルートメント可能な肺組織が占める割合が非常に高かったが生存した患者に対しては、死亡した患者よりも高いPEEPで人工呼吸管理が行われていた、ということを最後に強調しておく。

まとめ
ALI/ARDSでどれぐらいのPEEPをかけるのが妥当なのか、まだ明らかにはされていないという現況を踏まえ、本研究は行われた。そして、特にリクルートメント可能な肺組織が多い患者では、高いPEEPが有効であることを示唆する結果が得られた。実際、リクルートメント可能な肺組織が占める割合が少ない患者に15cmH2OのPEEPをかけると、肺胞の歪みの増大は必発であるが、肺胞の歪みが大きくなっても(少なくとも本研究で観測された程度の中等度の増大であれば)死亡リスクは上昇しない。反対に、クルートメント可能な肺組織が占める割合が高い患者に15cmH2OのPEEPをかけると、虚脱・再開通を繰り返す肺組織が大幅に減り、人工呼吸による有害な作用から肺を「保護する」可能性があることが示された。およそ25-28cmH2Oのプラトー圧を安全であるとみなすのであれば、リクルートメント可能な肺組織が占める割合が高い患者ではPEEPを15-20cmH2Oとすれば虚脱・再開通を繰り返す肺組織の量を、許容可能でありかつ悪影響が非常に少ないレベルまで減らすことができるであろう。

教訓 ALI/ARDSの診断基準に合致する患者の中でも、PEEPを高めにした方がいい患者と高めにはしない方がいい患者がいます。ALI/ARDSの人工呼吸管理を行うときは、①含気が保たれている部分にstrainをあまりかけない、②虚脱・再開通を繰り返す部分を減らす、③リクルートメント不能な部分に含気を取り戻そうとしない、ということに注意をするといいでしょう。
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ARDS人工呼吸中の肺胞虚脱・再開通~考察② [critical care]

Lung Opening and Closing during Ventilation of Acute Respiratory Distress Syndrome

American Journal of Respiratory and Critical Care Medicine 2010年3月15日号より

異なる二通りのPEEP設定における肺胞の歪みを局所的に解析したところ、リクルートメント可能な肺組織の占める割合の大小に関わらず肺全体で同じような分布が認められた。一方、虚脱と再開通を繰り返す肺組織の量については、リクルートメント可能な肺組織の占める割合が高い患者では、肺尖部および肺門部の背側(下位側)で多く、肺底部では少なかった(オンライン補遺中のFigure E5)。以上のデータから、肺門部下位側の肺組織では虚脱と再開通が呼吸する度に起こる傾向が強いため、人工呼吸によって傷害が起こりやすい部分であると考えられる。この仮説を裏付けるように、CT画像を用いた肺の形態の解析でも、人工呼吸管理を長期にわたって行われたARDS晩期患者ではブラが多数出現し、肺門部および肺底部の下位側で特に顕著であることが明らかにされている。さらに、ARDS患者の剖検で得られた検体を用いた組織学的解析でも、背側に位置する肺区画では「気管支肺炎」像(炎症が全体に広がっている像)が認められる頻度が高いという結果が得られている。したがって、一呼吸周期中に発生する虚脱と再開通は、主に背側の肺胞に剪断応力を発生させるので、背側に病的変化(ブラや仮性嚢胞)が生ずるのであろう。このような病変は肺胞の過伸展に直接起因するものではないし、肺胞の過伸展は主に腹側(上位側)で発生する。

リクルートメント可能な肺組織の増加に伴いICU死亡率が正比例的に上昇することを我々は以前に報告した。そこで今回は、同じ対象患者において研究開始前に行われていた人工呼吸器設定でのVILI発生要因についての検討を行った。同じ一回換気量およびPEEPであっても、過去にGrassoらが指摘したごとく、リクルートメント可能な肺組織が多いほど、虚脱・再開通を繰り返す肺組織の量が正比例的に増えることが分かった。肺胞の歪みについては、リクルートメント可能な肺組織が占める割合が非常に高い患者を除いては、大した差は認められなかった。さらに、虚脱・再開通を呈する肺組織は、死亡の独立危険因子であることが明らかになった。以上の知見から、肺の病変の重症度とリクルートメント可能な肺組織量の多寡とは切り離せないとは言うものの、リクルートメント可能な肺組織が多い患者ほど死亡率が高いのは、過去に報告されているように肺傷害の重症度だけが原因なのではなく、人工呼吸器設定によって生ずる虚脱・再開通が繰り返される肺組織の量が多いことも関係しているものと考えられる。さらに以上から、虚脱・再開通が繰り返される肺組織の量が多い患者でこそ、10cmH2Oを上回るPEEPが有効であるという仮説が裏付けられる。実際、PEEPを1cmH2Oずつ上昇させたときの、肺胞の歪みの増大と虚脱・再開通部位の減少の二つの影響を考える場合、そこには二つの解答が出現する:第一に、リクルートメント可能な肺組織が占める割合が低い患者においてPEEPを増やすと、肺胞の歪みが増えすぎ、かつ、虚脱・再開通部位は無視できるほどの減少しか得られない(オンライン補遺のFigure E7)。したがってPEEPを増やすのはよくない。第二に、リクルートメント可能な肺組織が占める割合が高い患者においてPEEPを増やすと、虚脱・再開通部位が大幅に減少し、肺胞の歪みは中等度の増大を示すに止まる。

教訓 肺門部背中側の肺組織では虚脱と再開通が呼吸する度に起こる傾向が強く、人工呼吸によって傷害が起こりやすい部分であると考えられます。

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ARDS人工呼吸中の肺胞虚脱・再開通~考察① [critical care]

Lung Opening and Closing during Ventilation of Acute Respiratory Distress Syndrome

American Journal of Respiratory and Critical Care Medicine 2010年3月15日号より

考察

ALI/ARDS症例においてPEEPを上昇させると、二つの現象が同時に発生すると考えられる:一方では、呼気終末に圧がかかることによって含気が保たれている部分が余計に膨らみ、過膨張と歪みが発生する。もう一方では、PEEPを上昇させると虚脱を免れる部分が増え、肺胞の虚脱と再開通が呼吸するごとに繰り返し発生する部分が減る。リクルートメント可能な肺組織量の割合が低い患者では、高めのPEEPをかけても虚脱・再開通を繰り返す部分の量には有意な影響はあらわれず、低めのPEEPであっても虚脱・再開通を繰り返す部分は肺重量のうち無視しうる程度を占めるに過ぎない。反対に、リクルートメント可能な肺組織量の割合が高い患者では、PEEPを5cmH2Oから15cmH2Oへと上昇させると、虚脱・再開通を繰り返す肺組織量が概ね半減する。リクルートメント可能な肺組織量の多寡によらず、PEEPを上昇させると、上昇させた分だけ肺胞の歪みが増大することが分かった。リクルートメント可能な肺組織量の割合が高い患者は予測FRCが小さかったにも関わらず、リクルートメント可能な肺組織量が少ない患者と同じようにPEEP上昇による肺胞の歪みの増大が認められた。驚くべきことである。以上の結果から、一回の呼吸周期中のリクルートメント量が吸気終末の肺胞の歪みに及ぼす影響の大きさは、人工呼吸器設定によって左右されると考えられる。実際、リクルートメント可能な肺組織量が多い患者では、吸気開始時に一回換気量が送り込まれるのは、「開存している」肺組織(つまりFRC)であると考えられるが、この部分の容量は比較的小さい。一方、吸気終末に「開存している」肺組織は、吸気開始時にすでに開存している部分と、吸気開始時には無含気であったが吸気中にリクルートメントされた部分(つまり虚脱・再開通を呈する肺組織)との合計である。このようにして、吸気開始時の「新生児肺(baby lung)」が、吸気が送り込まれて大きくなる。したがって、リクルートメント可能な肺組織が多いほど、ある一定の一回換気量およびPEEPによる吸気終末における肺胞の歪みの実質増大量は小さいと考えられる。つまり、PEEPによる過膨脹から肺が「守られている」ということである。

気道内圧を45cmH2Oまで上昇させても無含気のまま残る肺組織の量を観測した過去の報告によると、その量はALI/ARDS患者ではほぼ一定である(全肺組織量の~25%)。このことから、ALI/ARDS発生時からの「中心病変」、つまりリクルートメント不能な肺組織またはconsolidationが起こっている肺組織を取り囲む炎症部位の大きさがリクルートメント可能な肺組織の量に相当すると我々は考えた。本研究における局所解析で、この考えがうまく説明されたと思われる。実際、リクルートメント可能な肺組織の割合が高い患者では、consolidationは肺実質全体に均一に分布していたが、リクルートメント可能な肺組織の割合が低い患者ではconsolidationは主に肺底部に局在し、「大葉性」パターンの分布であることが示唆された。リクルートメント可能な肺組織の占める割合が低い患者では、気道内圧を45cmH2Oにしたときに、一旦リクルートメントされた肺組織が再虚脱する現象(derecruitment)が認められた(肺を10等分し肺尖から数えて8番目から10番目の領域;Figure 2A)。一方、リクルートメント可能な肺組織の占める割合が高い患者では気道内圧を45cmH2Oにすると、リクルートメント可能な肺組織の占める割合が低い患者でderecruitmentが見られた部分(上乗せ圧が両群で同等の部分)でも、中等度のリクルートメントが得られた。したがって、肺底部における無気肺の成因は、リクルートメント可能な肺組織量の多寡によって異なると考えられる。実際、リクルートメント可能な肺組織の占める割合が低い患者では、虚脱肺組織は大葉性とも称すべき分布を示すため、虚脱肺胞の開放圧閾値が高く、したがって過去に報告されている通り、開放圧が十分でないと(45cmH2O程度の高い圧でも閾値に達していなければ)局所的な肺胞虚脱が生ずるものと考えてもよかろう。以上をすべて踏まえると、本研究で得られた結果から以下の仮説が裏付けられる。リクルートメント可能な肺組織の占める割合が低い患者では、初期病変が解剖学的にも機能的にも限局化(区画化)されている。反対に、リクルートメント可能な肺組織の占める割合が高い患者では、病変が肺実質全体に広がり、限局化は認められず、浮腫を伴う炎症が全体に認められ、肺重量が増え、虚脱肺胞が広範囲に出現する。さらに、本研究で得られた結果は、CTや胸部X線写真で得られる所見を、ALI/ARDS患者の肺の機能形態を明らかにするのにどのように役立てればよいのかということについても、道筋を示すことができる可能性がある。事実、リクルートメント可能な肺組織の占める割合が低い患者では(Puybassetらが過去に明らかにした通り)、無気肺が「大葉性」パターンの分布を呈することが多いことを踏まえると、画像上の肺の形態を視覚的に検討することによって、高いPEEPをかけても効果が得られず過膨脹が発生する危険性の大きい患者を、最初から選別することができるかもしれない。

教訓 無気肺が「大葉性」パターンの分布を呈している場合、リクルートメント可能な肺組織が少ない可能性が高いようです。ALI/ARDS発生時からの「中心病変(リクルートメント不能な肺組織)」を取り囲む炎症部位の大きさがリクルートメント可能な肺組織の量に相当します。
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ARDS人工呼吸中の肺胞虚脱・再開通~結果② [critical care]

Lung Opening and Closing during Ventilation of Acute Respiratory Distress Syndrome

American Journal of Respiratory and Critical Care Medicine 2010年3月15日号より

虚脱・再開通を呈する肺胞と肺胞歪みの局所分布
Figure 3Aに示す通り、リクルートメント可能な肺組織が占める割合が少ない患者ではPEEP 5cmH2O、15cmH2Oのいずれであっても頭尾軸上の位置に関わらず虚脱・再開通を繰り返す肺組織量は、非常に少なかった。反対に、リクルートメント可能な肺組織が占める割合が多い患者では、PEEP 5cmH2Oのときには虚脱・再開通を繰り返す肺組織量は比較的多かった。特に肺尖部から肺門部(肺を10等分し肺尖から数えて2番目から7番目までの領域;Figure 3B)では虚脱・再開通を繰り返す肺組織量が多かった。PEEP 15cmH2OのときにはPEEP 5cmH2Oのときよりも虚脱・再開通を繰り返す肺組織量が全体で有意に少なかったが(PEEP 5cmH2Oのときと比べP<0.05)、8番目から10番目までの領域では有意差は認められなかった(P=1.00)。

リクルートメント可能な肺組織が占める割合が少ない患者では、PEEP 5cmH2Oにおける肺胞の歪みは肺底部へ行くほど有意に小さかった(P=0.002、両側ANOVA;オンライン補遺中のFigure E3)。一方、リクルートメント可能な肺組織が占める割合が多い患者では、頭尾軸のどの部位でも肺胞の歪みは同等であった(P=0.40、両側ANOVA)。PEEPを15cmH2Oとしたところ、リクルートメント可能な肺組織量の多寡に関わらず肺胞の歪みが有意に増加した(P<0.001、両側ANOVA)。しかし、リクルートメント可能な肺組織が占める割合が多い患者における肺胞歪みの増大は、主に肺尖から肺門にかけての特定の領域にのみ限定して発生していることが窺われた(Figure E3)。

生存率に与える影響
リクルートメント可能な肺組織量の多寡がVILIの発生と臨床転帰に与える影響の評価を試みた。まず、研究開始前の人工呼吸設定における、虚脱・再開通を呈する肺組織量と肺胞の歪みの分析を行った。この分析に当たり、対象患者をリクルートメント可能な肺組織が占める割合によって4群に分類した。過去に我々が発表した通り、一回換気量とPEEPは4群とも同等で(オンライン補遺中のTable E1)、それぞれ約9mL/kg(予測体重)と11cmH2Oであった。リクルートメント可能な肺組織が占める割合が最少の群から三つ目の群までの三群では、肺胞の歪みはほぼ同一であった。リクルートメント可能な肺組織が占める割合が最大の群のみにおいて、肺胞の歪みが他の群より有意に大きかった(Figure 4およびTable E1、P=0.03、片側ANOVA)。翻って、虚脱・再開通する肺組織量は、リクルートメント可能な肺組織量の割合の増大に伴い正比例に増加することが分かった(最小群21±12g → 最大群254±78g、P<0.001、片側ANOVA;Figure 4)。リクルートメント可能な肺組織量の割合が増えるほど、虚脱・再開通する肺組織量が増えるのと同時に、ICU死亡率も比例的に上昇した(Hosmer-Lemeshow の適合度検定でP=0.34、c統計量=0.72)。

VILI発生要因と死亡率のあいだに相関がある可能性について検討するため、死亡の独立予測因子についての多変量解析を行った。SAPSⅡスコアと、研究開始前の人工呼吸器設定で虚脱・再開通を呈する肺組織量の二つの要因が死亡リスク増大と独立した相関を有することが分かった(Hosmer-Lemeshow の適合度検定でP=0.86、c統計量=0.81)。SAPSⅡスコアが1点上昇するころによる死亡のオッズ比は1.10(95%信頼区間1.02-1.18)であった。虚脱・再開通を呈する肺組織量が10g増えることによる死亡のオッズ比も1.10(95%信頼区間1.02-1.18)であった。注目すべき点は、生存群と死亡群のあいだで肺胞の歪みに差が認められなかったことである(Table 2)。PEEPの値と死亡リスク増大とのあいだには独立した相関関係は見出されなかったが、リクルートメント可能な肺組織量の割合が非常に高い患者群における研究開始前の人工呼吸器設定では、生存群の方が死亡群よりもPEEPが有意に高かった(14±4 vs 10±2、P<0.05;Figure 5)。

教訓 リクルートメント可能な肺組織量が多いほど、虚脱・再開通する肺組織量が増え、死亡率も上昇します。リクルートメント可能な肺組織が多い場合は、PEEPが高い方が死亡率が低くなるようです。
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ARDS人工呼吸中の肺胞虚脱・再開通~結果① [critical care]

Lung Opening and Closing during Ventilation of Acute Respiratory Distress Syndrome

American Journal of Respiratory and Critical Care Medicine 2010年3月15日号より

結果

呼吸周期中に開閉する肺組織と全肺胞の歪み
まずVILIの発生要因に対して人工呼吸が与える影響と、VILI発生要因とリクルートメント(加圧再膨脹)可能肺組織量との関係を知るため、全肺についてPEEP 5cmH2Oのときと15cmH2Oのときの肺胞虚脱・再開通と肺胞の歪みを分析した。PEEP 5cmH2Oでは、リクルートメント可能な肺組織量が占める割合が高い患者の方が虚脱・再開通する肺胞が著しく多いことが分かった(141±85 vs 20±22g, P<0.001; Figure 1A)。リクルートメント可能な肺組織量が少ない患者では、虚脱・再開通する肺胞は無視できるほど少なく、肺の総重量(1266±327g)のわずか2±2%を占めるに過ぎなかった。PEEPを15cmH2Oまで上昇させたところ、リクルートメント可能な肺組織量が占める割合が高い患者においてのみ虚脱・再開通肺胞が有意に減り(63±87gへ減少, P<0.001)、リクルートメント可能な肺組織量が占める割合が小さい患者では虚脱・再開通肺胞の量に有意な変化は認められなかった(7±35g, PEEP 5cmH2O のときとの比較でP=0.23; Figure 1A)。

PEEP 5cmH2Oで一回換気量を一定にした場合、リクルートメント可能な肺組織量が占める割合が高い患者における肺胞の歪みは、リクルートメント可能な肺組織量が少ない患者よりも有意に大きかった(1.29±0.58 vs 0.93±0.41, P<0.001; Figure 1B)。この原因は、リクルートメント可能な肺組織量が占める割合が高い患者の方が予測FRCが有意に少なかったからだと考えられる(P=0.005; Table 1)。一方、PEEP 15cmH2Oで一回換気量を一定にした場合は、両群において同程度に肺胞の歪みが増大した(それぞれ1.82±0.79 、1.55±0.70, P=0.89; Figure 1B)。

リクルートメント可能な肺組織の分布
ALI/ARDS肺において病変が不均一に分布することが、VILIの決定要因に影響を及ぼす可能性を検討するため、リクルートメント可能な肺組織の局所分布を頭尾軸に沿って調べた。

リクルートメント可能な肺組織が占める割合が少ない患者では、PEEP 5cmH2Oにおける無含気部位の量は、頭側から尾側へ行くほど比例的にどんどん増えることが分かった。肺尖では肺重量の約10%、肺底部では約50%が無含気部分であった(P<0.001, 片側ANOVA; Figure 2A)。反対に、無含気部位のうち気道内圧45cmH2Oにしたときに再膨張する部分、つまりリクルートメント可能な肺組織は、肺全体において無視できるほど少なかった。肺底部(肺を10等分し肺尖から数えて8番目から10番目の領域)では気道内圧を45cmH2Oにすると肺胞の再虚脱(derecruitment)が起こることが分かったことが、特筆すべき点である。リクルートメント可能な肺組織の占める割合がマイナスになっているのが、derecruitmentが起こった肺組織の量である(第9および第10領域 vs その他の領域の比較でP<0.05; Figure 2A)。

反対に、リクルートメント可能な肺組織が占める割合が多い患者では、PEEP 5cmH2Oにおける無含気部位の量は頭側から尾側へ肺を10等分した各領域(肺尖に位置する1番目の領域を除く)において肺重量のおよそ40-50%と一定の割合を占めていた。肺尖に位置する1番目の領域では、無含気部位の量がやや少なかった(P=0.03, 片側ANOVA)。同様に、リクルートメント可能な肺組織が占める割合は頭尾軸に沿って均一に分布し、各領域の肺重量のおよそ20-30%であった(P=0.14, 片側ANOVA; Figure 2B)。

肺実質の重量が増えることにより下位に位置する肺に加わる重力が増大するため肺胞虚脱が起こる可能性がある。そこで、リクルートメント可能な肺組織が占める割合が少ない患者群と多い患者群の両群において、頭尾軸に沿って最下位に位置する肺領域に加わる上乗せ圧の分布を解析した。リクルートメント可能量の多少に関わらず、頭尾軸全体にわたって上乗せ圧は比較的大きかった(Figure 2C)。さらに、リクルートメント可能な肺組織が占める割合が多い患者では、割合が少ない患者よりも上乗せ圧がかなり大きかった。ただし、肺底部の二領域では上乗せ圧の大きさは同等であった((9番目、10番目ともにP=1.00)

教訓 リクルートメント可能な部位が多いと虚脱・再開通を繰り返す部分も多く、PEEPを上げると虚脱・再開通を繰り返す部分が減ります。リクルートメント可能な部位が少ないと虚脱・再開通を繰り返す部分は少なく、PEEPを上げてもこの部分は減りません。
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ARDS人工呼吸中の肺胞虚脱・再開通~方法 [critical care]

Lung Opening and Closing during Ventilation of Acute Respiratory Distress Syndrome

American Journal of Respiratory and Critical Care Medicine 2010年3月15日号より

方法

ALI/ARDS肺のリクルートメントについての多施設研究で構築されたデータベースのデータを解析した。以下にその研究の概要を記す。

対象患者

4ヶ所の大学病院で総勢68名の患者が対象となった。ALI/ARDSの標準的な診断基準に合致する患者を研究対象とし、除外条件は16歳未満、妊娠およびCOPDとした。

研究設計

鎮静および筋弛緩下に、三つの異なる気道内圧における全肺のCTを撮影した。吸気終末圧45cmH2Oの吸気プラトー圧をかけた吸気終末ポーズ中に全肺CT撮影を行い、次に無作為な順番で、PEEP 5cmH2O、PEEP 15cmH2Oとしそれぞれ呼気終末ポーズ中に全肺CT撮影を行った。基準時点における人工呼吸器設定は、治療経過におけるその日の設定と同じにした。各回のCT撮影に先立ち、リクルートメント手技を行った(方法の詳細はオンライン付録に掲載)。

CTの画像解析

各横断像を処理し、この研究のために誂えたソフトウェアを用いて解析を行った。各ボクセルの「CT値(Hounsfield単位)」を基に全肺重量を算出し、含気の程度に応じたそれぞれの部分の肺組織重量を計算した。胸骨-脊椎軸および頭尾軸における肺の形態を知るため、全肺CT画像を胸骨から脊椎まで4等分し、次に肺尖から肺底部へと10等分した。

CT画像から得た変数

1. 加圧再膨張(リクルートメント)可能な肺組織量は全肺重量に対する割合として表し、無含気肺組織のうち気道内圧を5cmH2Oから45cmH2Oへと上昇させることによって含気が回復する肺組織重量の全肺重量に対する比率と定義した。対象患者を、加圧再膨張可能な肺組織割合が中央値である9%以下の群と、9%を超える群の二群に分けた。以上は、先行研究の論文で発表した通りである。

2. ALI/ARDS患者における圧-容量曲線と圧-リクルートメント曲線は、ほぼ一定であるという知見に基づき、各患者において得られた容量と圧に関する4つの値から呼吸器系全体の圧-容量曲線を表すシグモイド関数式を作成した。容量は、全肺気量に対する割合として表した。全肺気量は、気道内圧45cmH2Oのときの含気量と定義した。得られたそれぞれの式を用い、各プラトー圧における吸気終末無含気肺組織量を算出し、各患者のいろいろなプラトー圧における加圧再膨張(リクルートメント)可能な肺組織量全体に対する割合として表した(気道内圧5cmH2Oのときはリクルートメントされている肺組織量は皆無で0%、45cmH2Oのときはリクルートメントされている肺組織量は全肺組織量と等しい100%と仮定)。

3. 呼気終末および吸気終末に無含気である肺組織量の差から、PEEP 5cmH2Oおよび15cmH2Oにおける呼吸周期中に開閉する肺組織の量を算出した。つまり、呼吸ごとに一回換気量が送り込まれることによって周期的に増減する無含気肺組織量の差を求めたということである。

4. PEEP 5cmH2Oおよび15cmH2Oにおける肺胞の歪みを算出した。つまり、吸気終末肺容量から気道内圧ゼロにおける肺容量を引いた容量(一回換気量とPEEPによってこの容量差が生ずる)と、気道内圧ゼロにおける肺容量(FRC)との比を求めた。求めた値は、PEEPによるリクルートメント肺組織量と一回換気量によるリクルートメント肺組織量を用いて補正した。

5. 下側肺に、それより上位にある肺重量によって余分に加わる静水圧を上乗せ圧と定義した。

教訓 本研究は、Lung Recruitment in Patients with the Acute Respiratory Distress Syndromeのデータを用いて行われました。この研究ではSAPSⅡスコアが同等であっても、リクルートメント可能な肺組織量が全肺組織に占める割合が高い患者ほど死亡率が高いという結果が得られています。著者らは、リクルートメント可能な肺組織量が少ない症例ではPEEPを10cmH2O未満とし、15cmH2O以上のPEEPをかけるのはリクルートメント可能な肺組織量が多い症例に限っているとのことです。その妥当性を検証したのが今回の研究です。


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ARDS人工呼吸中の肺胞虚脱・再開通~はじめに [critical care]

Lung Opening and Closing during Ventilation of Acute Respiratory Distress Syndrome

American Journal of Respiratory and Critical Care Medicine 2010年3月15日号より

ARDS患者についての研究が端緒についたときからというもの、ARDS治療における呼吸管理では、肺のリクルートメント(意図的に肺内外圧差を一過性に増大させて、含気が失われていたり少なかったりして虚脱しやすい肺胞を十分に開存させること。加圧再膨張。)が重要であることが指摘されてきた。ARDS肺の主な病像の一つが無気肺であることが、その理由である。そんなわけで、ARDSに対する人工呼吸法が模索されはじめた当初から、PEEPを付加し肺の虚脱を防ぐ方法が採られてきた。高いPEEPの効果、つまり、PEEPを付加することによって虚脱を免れる肺組織の量は、リクルートメント(加圧再膨張)可能な肺組織の量(全肺気量に達するぐらいに肺が膨らむように気道内圧を上げて測定される)と密接に関与し、だからこそ、高いPEEPを付加することによって得られる効果はARDS患者の中でも大きなばらつきがあるということを、我々はこれまでに明らかにしてきた。したがって、最適なPEEP値を設定するには、リクルートメント可能な肺組織の量の臨床的評価が不可欠である。

ALI/ARDS患者では、陽圧換気を行うと、そもそも呼吸不全を来す原因となった肺傷害を、さらに悪化させてしまうことがある。人工呼吸による肺傷害(VILI)の機械的原因として広く認識されている主要因が二つある。一つは肺胞の歪み(ひずみ)である。これは、一回の呼吸で送り込まれる気体の量と、それによって含気が得られた肺組織の量との比で表される。もう一つが、呼吸一周期中に発生する肺胞開存と虚脱である。これは、虚脱肺のうち吸気中には再開通し呼気中に再虚脱する部分の量として定量的に表される。ALI/ARDS肺に高いPEEPを付加すると、理論的には二つの相反する現象が起こる。一方では、開存と虚脱を周期的に繰り返す肺組織の量が減るが、他方では、すでに開存している部分の肺胞の歪みが増す。つまり、高いPEEPが有効か否かは、この二つの相反する作用のいずれが優勢かによって決まるのである。

今までのところ、ALI/ARDSの診断基準に合致することのみを条件として対象患者を設定して行った臨床研究では、高めPEEPの付加による生存率改善効果は証明されていない。ALVEOLI(Assessment of Low tidal Volume and elevated End-expiratory volume to Obviate Lung Injury)研究に続き、二編の多施設無作為化臨床試験が行われたが、低一回換気量による人工呼吸中に高めPEEPを付加しても、低めPEEPの場合に優る効果は得られないという明白な結果が示されて終わった。しかし、患者一人一人で異なるリクルートメント可能な肺組織量は患者一人一人で異なり、そしてそれがPEEP値の高低による作用の違いにつながり、さらにはその組合せ如何によってVILI発生が促進されるか、抑止されるかが左右されるということを考慮して行われた研究は皆無である。そこで我々は、ALI/ARDS患者にPEEP付加した場合、リクルートメント可能な肺組織量の多寡が、肺胞の歪みや周期的開閉による影響とどのような関わりを持つのかを明らかにすることを目指して研究を行った。

教訓 ALVEOLI試験(Assessment of Low Tidal Volume and Elevated End-Expiratory Volume to Obviate Lung Injury trial)では、各患者の酸素化に応じて設定された標準的PEEP値とそれより高いPEEPが比較されましたが、PEEPを高くすることによる有効性は認められませんでした。この研究では、リクルートメントできる肺組織量の多寡によってPEEPの作用がどのように異なるのかが検討されました。
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硬麻・脊麻による感染性合併症の予防・診断・管理~管理 [anesthesiology]

Practice Advisory for the Prevention, Diagnosis, and Management of Infectious Complications Associated with Neuraxial Techniques: A Report by the American Society of Anesthesiologists Task Force on Infectious Complications Associated with Neuraxial Techniques

Anesthesiology 2010年3月号より

科学的エビデンス
カテゴリーA:有力な文献あり。RCTで特定の臨床転帰について有意差が認められている。レベル1~3に分類。
カテゴリーB:可能性を示唆する文献あり。観測研究で有効または有害であることが示されている。レベル1~3に分類。
カテゴリーC:有効か有害か決着がついていない。レベル1~3に分類。
カテゴリーD:十分なエビデンスがない。

見解に基づくエビデンス
カテゴリーA:研究作業部会に関わった顧問の見解が一致している。
カテゴリーB:ASA会員から無作為に選ばれた麻酔科医の見解。強く肯定されている、肯定されている、賛否両論、否定されている、強く否定されている、の5段階に分類。
カテゴリーC:非公式見解。学会、インターネット、学会誌のレターや論説など。

Ⅲ. 硬膜外麻酔・脊髄クモ膜下麻酔による感染性合併症の管理

硬膜外麻酔・脊髄クモ膜下麻酔による感染性合併症の管理についての論点を以下に挙げる:
(1) 抗菌薬の投与
(2) 適切な専門医に相談し手術以外の治療法における最適な選択肢を選択する
(3) 外科医に相談し手術もしくは経皮的ドレナージの要否を決定する

(1) 抗菌薬の投与
多数の症例報告で、適切な抗菌薬治療が感染に対する有効な治療法であることが示されている(カテゴリーB3)。

作業部会顧問およびASA会員の両者ともが、重篤な感染があることを示す早期症状および徴候が認められる場合は、適切な抗菌薬治療が必須であることに強い同意を示している。

(2) 適切な内科系専門医と協同した上での手術以外の治療法における最適な選択肢の選択
適切な内科系専門医と協同し治療に当たることによって転帰が改善するかどうかを判断する材料となる文献は不足している(カテゴリーD)。本作業部会は、重篤な感染を示す早期症状が認められる症例では、全例に適切な抗菌薬を投与すべきであり、さらに感染症診断及び治療の専門医へのコンサルトを考慮すべきであると考える。ただし、迅速に内科的治療を開始したとしても、はかばかしい改善が認められないこともある。

作業部会顧問およびASA会員の両者ともが、重篤な感染を示す徴候が見られれば直ちに感染症診断および治療の専門医にコンサルトすべきであることに強い同意を示している。

(3) 外科医に相談し手術もしくは経皮的ドレナージの要否を決定する
神経学的転帰の差異について経皮的ドレナージと手術を比較した研究は見当たらなかった(カテゴリーD)。症例報告によると、経皮的膿瘍ドレナージは症状の改善に有効である可能性があることが示されている(カテゴリーB3)。硬膜外膿瘍に対し手術(ドレナージ術、デブリードメント、椎弓切除など)が有効である可能性があり、神経機能の改善につながることがあるという症例報告が発表されている。ただし、中には運動または感覚麻痺が残る症例もある(カテゴリーB3)。

作業部会顧問およびASA会員の両者ともが、膿瘍がある場合には外科医に相談し、経皮的膿瘍ドレナージまたは手術(椎弓切除など)の要否を決定すべきであることに強い同意を示している。

勧告

硬膜外麻酔・脊髄クモ膜下麻酔による重篤な感染が発生したことを示す早発症状または徴候が認められる場合には、全例で直ちに適切な抗菌薬の投与を開始すべきである。感染症診断および治療の専門医へのコンサルトを考慮すべきである。膿瘍がある場合には、外科医にコンサルトし、経皮的膿瘍ドレナージまたは手術(椎弓切除など)の要否を決定しなければならない。

教訓 硬膜外麻酔・脊髄クモ膜下麻酔による感染が疑われる場合には、すぐに抗菌薬を投与します。そして、整形外科医にコンサルトしなければなりません。



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硬麻・脊麻による感染性合併症の予防・診断・管理~診断 [anesthesiology]

Practice Advisory for the Prevention, Diagnosis, and Management of Infectious Complications Associated with Neuraxial Techniques: A Report by the American Society of Anesthesiologists Task Force on Infectious Complications Associated with Neuraxial Techniques

Anesthesiology 2010年3月号より

科学的エビデンス
カテゴリーA:有力な文献あり。RCTで特定の臨床転帰について有意差が認められている。レベル1~3に分類。
カテゴリーB:可能性を示唆する文献あり。観測研究で有効または有害であることが示されている。レベル1~3に分類。
カテゴリーC:有効か有害か決着がついていない。レベル1~3に分類。
カテゴリーD:十分なエビデンスがない。

見解に基づくエビデンス
カテゴリーA:研究作業部会に関わった顧問の見解が一致している。
カテゴリーB:ASA会員から無作為に選ばれた麻酔科医の見解。強く肯定されている、肯定されている、賛否両論、否定されている、強く否定されている、の5段階に分類。
カテゴリーC:非公式見解。学会、インターネット、学会誌のレターや論説など。

Ⅱ. 硬膜外麻酔・脊髄クモ膜下麻酔による感染性合併症の診断

硬膜外麻酔・脊髄クモ膜下麻酔による感染性合併症の診断についての論点を以下に挙げる:
(1)感染の徴候と症状の有無の定期的評価(発赤、疼痛、発熱など)
(2) 血液検査(白血球数、ESR、CRPなど)の実施
(3) 培養または髄液検査の実施
(4) 画像診断(MRI、CT、脊髄造影)
(5)神経学的所見の定期的評価

(1) 感染の徴候と症状の有無の定期的評価
観測研究および症例報告では、感染性合併症が発生すると、まず早期徴候および徴候(発熱、腰背部痛、頭痛、穿刺部位の発赤および疼痛など)があらわれたり、さらに進行すればさらに他の症状(頸部硬直、羞明、放散痛、運動麻痺、昏迷など)が出現したりすることがあるとされている(カテゴリーB2-B3)。

感染の症状および徴候は、硬膜外麻酔または脊髄クモ膜下麻酔実施後数時間以内に出現することもあれば、数週間経過しても現れないこともある、というのが本作業部会の見解である。

作業部会顧問およびASA会員の両者ともが、感染性合併症の早期発見には、症状および徴候(発熱、頭痛、腰背部痛、穿刺部位の発赤および疼痛など)の定期評価が不可欠であるという説に強く同意している。また、症状および徴候の評価の頻度を一日一回とすることに対しては肯定、症状及び徴候が認められた場合には速やかに対応し感染性合併症による悪影響を極力抑止することに対しては強い同意が示されている。そして、感染が疑われる場合にカテーテルを直ちに抜去することに対しても強い同意が示された。

(2) 血液検査の実施
感染が発生していることを明らかにするのには血液検査(白血球数、ESR、CRPなど)が有用である可能性があることが多数の症例報告で明らかにされている(カテゴリーB3)。

作業部会顧問およびASA会員の両者が、感染が疑われる場合には血液検査を行うべきであるという説に同意している。

(3) 培養または髄液検査の実施
観測研究および症例報告では、感染性合併症が発生した場合に起因微生物(ウイルス、細菌または真菌)を同定するのに培養(血液、皮膚、膿、髄液など)が有用であることが示されている(カテゴリーB2-B3)。

作業部会顧問およびASA会員の両者が、感染が疑われる場合にはカテーテル先端の培養を行うべきであることに強い同意を示している。また、その他の検体についても培養を行うべきであることに同意を示している。

(4) 画像診断
観測研究および症例報告では、感染性合併症の診断(硬膜外膿瘍、脊椎椎間板炎、骨髄炎)にはMRI、CTもしくは脊髄造影が有用であることが示されている(カテゴリーB2-B3)。

作業部会顧問およびASA会員の両者が、硬膜外膿瘍が疑われたり、神経学的所見に異常が認められたりする場合には画像診断を行うべきであることに強い同意を示している。

(5)神経学的所見の定期的評価
複数の症例報告で、神経学的所見の異常(運動および感覚麻痺や対麻痺など)が認められる場合には感染性合併症が示唆されることが明らかにされている(カテゴリーB3)。

作業部会顧問およびASA会員の両者が、硬膜外膿瘍が疑われたり、神経学的所見に異常が認められたりする場合には、速やかに該当する適切な専門医の診察を受けさせるべきであることに強い同意を示している。

勧告

カテーテル留置中の患者においては、感染性合併症の早期症状および徴候(発熱、腰背部痛、頭痛、カテーテル挿入部位の発赤および疼痛など)について入院期間を通じて一日一回は評価を行うべきである(注;免疫抑制患者では典型的な症状や徴候はあらわれないことがある)。感染性合併症による悪影響を最小限に抑止するには、出現している症状および徴候に対しては速やかに策を講ずる必要がある。感染が疑われる場合の対策を以下に挙げる:(1) カテーテルを抜去する。カテーテル先端の培養を行うことを考慮する。(2) 相応の血液検査を行う。(3) 適切な培養検体を採取する。(4) 硬膜外膿瘍が疑われるか、神経学的所見に異常が認められたりする場合には、画像検査を行い直ちに該当する専門医の診察を要請する。

教訓 硬膜外カテーテル留置中の患者では、感染の症状と徴候を一日一回確認しなければなりません。症状や徴候が認められたらカテをすぐ抜いて、カテ先端の培養を行います。
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