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過換気は脳傷害によくない⑥ [critical care]

Hypocapnia and the injured brain: More harm than benefit

Critical Care Medicine 2010年5月号より

低二酸化炭素症によって脳以外の臓器にも障害が生ずるか?

脳以外の他の臓器も低二酸化炭素症によって傷害される可能性があり、なかでも肺および血管に対する作用が詳しく解明されている。低二酸化炭素症により心臓、肝臓、消化管、骨格筋および皮膚への血流が低下する。本レビューでは、酸素化と血流が特に重大な意味を持つ脳について詳述してきたが、本項では低二酸化炭素症が肺傷害および心筋酸素化におよぼす影響について紹介する。

急性肺傷害
重症頭部傷害患者の20%以上に、ALI/ARDSが発生する。ALI/ARDSが発生すると転帰が悪化する。欧州で行われた前向き多施設研究で、低二酸化炭素症を導入するために行う高一回換気量の人工呼吸が、ALI/ARDS発症の独立予測因子であることが明らかにされている。残念ながら、ARDS症例では高一回換気量が死亡率上昇につながることが広く知られているにも関わらず、肺傷害が発生したことが判明した症例でも継続して過換気のまま管理されていることが分かっている。

ALI/ARDSにおいて低二酸化炭素症がよくない影響をもたらす可能性があることは、1971年にTrimbleらが指摘している。低二酸化炭素症は急性肺傷害の原因となると考えられている。その本態は、高一回換気量の人工呼吸による直接的な肺傷害と、低二酸化炭素症自体による様々な機序を介した肺傷害であるとされている。様々な機序とは、肺の血管透過性亢進、肺水腫、コンプライアンス低下、サーファクタント機能障害の可能性、急性炎症の惹起などである。以上のような悪影響の多くは、肺胞内の二酸化炭素分圧を正常化すれば元に戻る可能性がある。反対に、高二酸化炭素症性アシドーシスが実験モデルの肺傷害を緩和することが明らかにされている。低二酸化炭素症は低酸素性肺血管収縮(HPV)を減弱させるので、肺内シャントが増える。急性脳傷害症例では、高一回換気量の肺傷害発生への関与と、低二酸化炭素症の肺傷害発生への関与のそれぞれを識別することは困難である。

心筋虚血
急性低二酸化炭素症は、収縮性の増強、左室後負荷や心拍数の変化などの様々な機序を通じて心筋への酸素運搬量を減らし、酸素需要量を増やすので、酸素需給バランスを崩すことになる(Table 4)。低二酸化炭素症に陥ると、冠動脈血流が低下し、組織毛細血管透過性が亢進する。場合によっては冠動脈攣縮が起こり、昔から自発的過換気の患者で発生すると言われる「異型狭心症」に至る可能性がある。低二酸化炭素症は、血小板数を増加させたり血小板凝集能を亢進させたりするので、血栓症を悪化させることがある。以上のような理由で、脳傷害患者に対し低二酸化炭素症管理を行っていると、急性冠症候群が発生し臨床的な問題となることがある。

不整脈
低二酸化炭素症は、発作性心房頻拍や、まれではあるが心室頻拍や心室細動などの不整脈を引き起こす。低二酸化炭素症が不整脈を招来する機序は、心筋虚血を除いては不明である。しかし、低二酸化炭素症性アルカローシスは、局所麻酔薬中毒や三環系抗うつ薬中毒の治療においては有効である可能性がある。

教訓 低二酸化炭素症の肺に対する作用:コンプライアンス低下、気道抵抗の増大、肺実質の直接的傷害、肺内シャントの増加、HPVの減弱など。低二酸化炭素症の心臓に対する作用:心筋酸素供給量の減少、心筋酸素需要量の増加、心拍数上昇、心収縮量増強、全血管抵抗の上昇、心筋再灌流傷害の増悪、不整脈など。
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過換気は脳傷害によくない⑤ [critical care]

Hypocapnia and the injured brain: More harm than benefit

Critical Care Medicine 2010年5月号より

様々な状況における低二酸化炭素症の影響

自然発生的低二酸化炭素症 vs. 人為的低二酸化炭素症
本論文では人為的低二酸化炭素症を取り上げているが、臨床で遭遇する低二酸化炭素症の多くは自然発生的なものである。外傷性脳傷害、クモ膜下出血および脳卒中症例では、自発的な過換気が発生する場合は転帰が不良であることが、古くから知られている。しかし、自発的過換気が病変の重症度を反映しているのかどうかは不明である。最近では、外傷の場合は自発的であろうが人為的であろうが、どちらにせよ過換気になると転帰が不良であることが明らかにされている。しかし、転帰悪化に関する独立予測因子であるのは人為的過換気のみであるとされている。

外傷性脳傷害
低二酸化炭素症によって急性脳傷害の転帰が改善することを示すエビデンスはない。反対に、長時間の過換気を実施すると転帰が悪化する。外傷性脳傷害患者を対象とした有名な無作為化臨床試験では、患者を通常換気群(動脈血二酸化炭素分圧の目標値35mmHg)または予防的過換気群(動脈血二酸化炭素分圧の目標値25mmHg)のいずれかに割り当てた。その結果、予防的過換気群の方が、重症度の低い患者(GCSの運動反応が4~5点)および3ヶ月後、6ヶ月後、12ヶ月後の転帰が良好であった患者の数が少ないことが分かった。予防的過換気群では転帰が不良であったのに加え、長時間の低二酸化炭素症のせいで全体的傾向として、頭蓋内圧が高く、その変動幅も大きかった。特に、過換気を60時間以上続けた場合にこの傾向が顕著であり、低二酸化炭素症が時間が経つと無効になり、さらにはかえって頭蓋内圧を上昇させる作用をおよぼすものと考えられる。

新生児の脳傷害
新生児は低二酸化炭素症になることが珍しくない。低二酸化炭素症は未熟な脳に有害であり、新生児白質傷害などの様々な脳合併症を引き起こす原因となる(Fig. 4およびTable 2)。脳室周囲白質軟化症の誘因が低二酸化炭素症以外には考えられない症例も多い。脳室周囲白質軟化症は、新生児の死亡率上昇や神経発達障害を引き起こし、新生児に発生する別の急性脳傷害である橋鉤状回壊死の原因となり得る。低二酸化炭素症が脳性麻痺の原因となるか否かについてはまだ解明されていない。

高度の低二酸化炭素症(動脈血二酸化炭素分圧<15mmHg)に未熟児が曝露されると、たとえそれが短時間であっても、長期にわたる看過し得ない神経学的異常(感音性難聴など)を招く。このような状況における白質傷害の増悪因子は、血管が未発達なことによる脆弱部位の存在、興奮性アミノ酸による抗酸化物質の減少およびリポ多糖やサイトカインの影響である(Fig. 4)。過換気、高頻度換気または膜型肺によって低二酸化炭素症に陥った症例では転帰が不良であることが示されている。過換気を唐突に中止すると、それに呼応して脳に鬱血が起こるので、未熟児では脳室内出血の危険性が上昇する。

急性脳血管障害
従来、脳卒中の管理において過換気の実施が提唱されてきた。これには二つの理由がある。第一に、低二酸化炭素症によっていわゆる「逆盗血」が起こり、正常な自動調節脳が作動する部位の血管が収縮し、血液が虚血部位へ優先的に流入すると考えられていたことが挙げられる。すでに本論文で述べたとおり、「逆盗血」なる現象が発生することはない。第二の理由は、虚血領域の周囲のアシドーシスが低二酸化炭素症によって是正され、梗塞巣の拡大が最小限に抑えられると信じられていたことである。実際には、脳卒中症例は低二酸化炭素症がると予後は不良である。過換気刺激試験を行うと右半身麻痺および失語が再発するという報告がある、ただしこの場合に、過換気が原因であるのか結果であるのかを判別するのは困難である(広範囲な脳卒中では自発的な過換気が見られることが多いため)。

神経機能障害
術後患者では、たとえ短時間であっても低二酸化炭素症に陥ると神経障害が発生する可能性があることが明らかにされている。健康な患者を低二酸化炭素症にすると、術後最長48時間にわたり精神運動機能の有意な低下が認められる。高齢者ではこのような作用が強くあらわれ、より軽度の低二酸化炭素症でも生ずる。術中に高度の低二酸化炭素症(<24mmHg)にすると、たとえそれが短時間であっても、最長6日間にわたって反応時間の延長が認められる。低二酸化炭素症が起こると、注意力および学習能力が低下したり、人格が変化したりすることがある。さらに高度の低二酸化炭素症(<15mmHg)では、健康被験者を対象とした実験で、精神運動機能が著しく低下するという結果が得られている。低二酸化炭素症が以上のような神経機能障害を引き起こすことは、麻酔中の動脈血二酸化炭素分圧が高いと神経精神機能が良好に保たれることからも裏付けられる。ただし、心強いことに、健康な患者を対象として低二酸化炭素症が術後認知機能に及ぼす影響を検証した諸研究によると、低二酸化炭素症により認知機能の低下が長期間認められることが多いものの、例外なく可逆性であるとされている。

長時間の低二酸化炭素症曝露によって、永続的な障害が引き起こされる可能性がある。高度5500m以上の高山に挑戦する登山家に認められる神経機能障害は、低酸素症の程度ではなく低二酸化炭素症の程度と相関する。高山病で見られる急性の中枢神経系症状の原因は、アルカローシスである。アセタゾラミドによる前処置によって高山登山によるアルカローシスを予防することができる。

教訓 健康な手術患者を術中に低二酸化炭素症にすると、術後最長48時間にわたり精神運動機能が低下します。高齢者ではこのような作用が強くあらわれ、より軽度の低二酸化炭素症でも術後に精神運動機能の低下が認められます。麻酔中の動脈血二酸化炭素分圧が高いと神経精神機能が良好に保たれることが明らかにされています。
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過換気は脳傷害によくない④ [critical care]

Hypocapnia and the injured brain: More harm than benefit

Critical Care Medicine 2010年5月号より

低二酸化炭素症が持続すると余計によくない理由

頭蓋内圧低下作用の経時的減弱
低二酸化炭素症になると脳脊髄液および中枢神経系細胞外液の両者のpHが急速に上昇し、それに伴い脳血流量が低下する。Severinghausらは40年前に行った研究で、低二酸化炭素症が長時間続くと脳脊髄液のpHは緩衝され正常に戻り、脳血流量も正常化することを明らかにした。この緩衝作用は二段階の過程を経て発揮される。第一段階は組織による緩衝である。低二酸化炭素症になると細胞内液の二酸化炭素が即座に減り、その結果、塩素イオンが細胞内液から細胞外液へと移動し、その代わりに炭酸水素イオンが細胞外液から細胞内液へ移動する。このようにして細胞外液中の炭酸水素イオン濃度が低下する。第二段階は腎臓による緩衝である。低二酸化炭素症になると直ちに、近位尿細管における水素イオンの分泌と炭酸水素イオンの再吸収が阻害される。腎による緩衝作用が効果を発揮するには、数時間から数日かかる。脳脊髄液のpHが緩衝されると、動脈血二酸化炭素分圧が低いままであっても6時間ほどで脳血流量は正常に復する。健康被験者を対象とした実験では、動脈血二酸化炭素分圧が20mmHg低下すると、脳血流量は即座に40%減少するが、4時間後には脳血流量は平時の90%までに回復するという結果が得られている。

低二酸化炭素症が正常に復すことによる反跳性頭蓋内圧亢進
低二酸化炭素症をnormocapniaに戻すと、頭蓋内圧が反跳して上昇することがよく知られている。脳の細胞外液では炭酸水素イオンが唯一の緩衝物質である。低二酸化炭素症が起こると炭酸水素塩が不可避的に減少するので、脳の細胞外液の緩衝能は大幅に低下する。したがって、動脈血二酸化炭素分圧が正常化すると脳脊髄液のpHは二酸化炭素分圧の戻り分を超えて上昇し、するとそれに応じて脳血流量も極端に増える。動物実験で、低二酸化炭素症を導入し(麻酔ウサギ、動脈血二酸化炭素分圧25mmHg)、続いて10分間normocapniaにするという一連の事象を4時間ごとに引き起こすと、低二酸化炭素症による血管収縮作用が回を追うごとに減弱することが明らかにされている。この実験では、4時間ごとに一時的にnormocapniaとすると血管は拡張することが分かった。実験開始から20時間後には動脈血pHは基準時点と同程度に戻り、実験開始から24時間後までには脳脊髄液pHは正常化した。麻酔ヤギでも同様で、低二酸化炭素症からnormocapniaへ戻すと脳に著明な鬱血が認められるという結果が得られている。

以上の知見は重要な意味を持っている。第一に、脳脊髄液pHは緩衝されるので低二酸化炭素症の作用が打ち消され、低二酸化炭素症導入4時間後までには脳血流量は正常値に復してしまう。第二に、低二酸化炭素症を長時間続けると、頭蓋内圧をさらに低下させるべく二酸化炭素を一段と減らすのは、肺傷害が起こるような無理な換気設定にしない限り困難である(脳ヘルニア初期などの場合)。第三に、二酸化炭素症からnormocapniaへ戻した際には反跳性頭蓋内圧亢進症が起こることに留意し、場合によっては脳幹ヘルニア(または未熟児では脳室内出血)が発生する可能性も念頭に置かなければならない(Fig. 5)。極度の低二酸化炭素症にした場合には特にこの注意が重要である。というのも、低二酸化炭素症の程度が甚だしい場合、脳脊髄液pHの変化に対する脳血流量が急峻な増減を示すからである。以上を踏まえ、低二酸化炭素症を導入する場合は、頭蓋内圧を制御する根本的な対処法を実行するまでの短時間のみにとどめ、可及的速やかに動脈血二酸化炭素分圧を正常化するよう心がけなければならない。

低二酸化炭素症は神経細胞を損傷するか?

低二酸化炭素症と神経伝達
低二酸化炭素症は神経細胞の興奮を高め痙攣脳波を発生させるので、興奮性アミノ酸(NMDAなど)が局所で産生され、その部位において細胞毒性作用が認められる可能性がある(Fig. 5)。極度の低二酸化炭素症では、NMDA受容体を介した神経毒性の増強やドパミンの増加(特に線条体)が引き起こされる。この現象が起こると、未熟な脳では特に、再灌流傷害が増悪する。そして、低二酸化炭素症には、細胞膜リン脂質にコリンが取り込まれるのを促進することを通じて発揮される直接的な神経毒性作用がある。

脳虚血と再灌流傷害
低二酸化炭素症は神経細胞の虚血と再灌流傷害を増悪させることがある。心停止後の蘇生中に低二酸化炭素症が起こると、脳傷害が悪化し低酸素性虚血性中枢神経系障害が進行する。以上のような知見は、低二酸化炭素症が心筋や肺の再灌流傷害を悪化させるという報告と一致している。低二酸化炭素症が中枢神経系に及ぼす作用は、未熟な脳では特に顕著にあらわれる。

教訓 低二酸化炭素症を導入しても4~6時間ぐらいで頭蓋内圧低下効果は失われます。低二酸化炭素症からnormocapniaへ戻すと頭蓋内圧がリバウンドして上昇します。低二酸化炭素症を導入する場合は、頭蓋内圧を制御する根本的な対処法を実行するまでの短時間のみにとどめ、可及的速やかに動脈血二酸化炭素分圧を正常化するよう心がけなければなりません。

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過換気は脳傷害によくない③ [critical care]

Hypocapnia and the injured brain: More harm than benefit

Critical Care Medicine 2010年5月号より

低二酸化炭素症が脳の低酸素症を引き起こす機序

脳への酸素供給量の低下
脳傷害症例に低二酸化炭素症を適用した場合に最も懸念されるのは、脳灌流の低下である。低二酸化炭素症は脳血管攣縮を増強する。その結果、転帰が悪化したり、すでに低下している脳血流量がさらに低下したりする。低二酸化炭素症は「逆盗血」(傷害部位へ血流が優先的に分布すること)を引き起こすことはないようである。実際、傷害部位の二酸化炭素に対する反応性は増強していることがあり、低二酸化炭素症によって虚血部位から正常部位へと血流が移動し二次的な虚血性傷害が増悪する可能性がある。

低二酸化炭素症は脳血流の減少以外の機序により酸素運搬量を低下させることがある。低二酸化炭素症によるアルカローシスは、気管支収縮を引き起こしたり、低酸素性肺血管収縮を減弱させたりする。これらの作用により動脈血酸素分圧が低下する。そして、酸素分圧にかかわらず、酸素解離曲線が左方移動すると組織への酸素供給能が低下する。

脳酸素消費量の増加
低二酸化炭素症は神経の興奮を高めるため、脳の酸素需要量が増える。その結果脳虚血が増悪する可能性がある(Fig. 5)。すると、脳におけるブドウ糖の消費が増え、脳のブドウ糖が減り、嫌気性代謝がはじまる。外傷性脳傷害症例では低二酸化炭素症によって脳酸素消費量が増加し、痙攣脳波が遷延する。痙攣脳波が発生すると酸素消費量はさらに増加し、細胞毒性のある興奮性アミノ酸(NMDAなど)が産生される。低二酸化炭素症によって神経から放出されるドパミンにも、このような興奮性アミノ酸を増やす作用がある。そして、アルカローシスは、pHが低下したときに内因性の酸産生(乳酸など)を減らす機構が働くのを阻害するため、脳傷害を一段と進行させる可能性がある。

低二酸化炭素症による脳虚血のエビデンス
低二酸化炭素症による脳への酸素供給量減少および酸素消費量増加を裏付ける知見が、複数の臨床研究や基礎研究で得られている。第一に、小児および成人の外傷性脳傷害を対象とした研究で、低二酸化炭素症によって局所脳虚血が発生することが明らかにされている。心停止蘇生後の成人では、低二酸化炭素症によって頸静脈球酸素飽和度が低下し乳酸が増加することが示されている。動物実験では、低二酸化炭素症によって局所脳血流量および皮質における局所組織酸素分圧の低下、脳内の酸素化ヘモグロビンの減少、脱酸素化ヘモグロビンの増加と酸素化チトクロムaa3の減少が認められることが分かっている。第二に、低二酸化炭素症によって虚血性変化が起こることが、MRIや脳波を用いた研究で明らかにされている。第三に、過換気によって脳における乳酸産生(つまり嫌気性代謝)が亢進するという知見が得られている。この現象は、外傷性脳傷害の早期にとりわけ顕著に認められる。アルカローシスは直接的に解糖を促進するので(アルカローシスを緩和するため)、乳酸はより一層増加することになる。

教訓 低二酸化炭素症は脳への酸素供給量減少および酸素消費量増加を招きます。傷害部位の二酸化炭素に対する反応性は増強していることがあり、低二酸化炭素症によって虚血部位から正常部位へと血流が移動し二次的な虚血性傷害が増悪する可能性があります。
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過換気は脳傷害によくない② [critical care]

Hypocapnia and the injured brain: More harm than benefit

Critical Care Medicine 2010年5月号より

傷害脳の血流量と酸素需要量

脳血流量
脳傷害症例では必要量以上に血流が分布する贅沢灌流(luxury perfusion)を防ぐ目的で低二酸化炭素症が適用されることが多い。贅沢灌流があると、脳浮腫が増悪すると考えられている。特に小児ではその傾向が強くあらわれるとされている。さらに、傷害部位では血管調節能が失われるため、低二酸化炭素症による血管収縮作用は傷害部位よりも非傷害部位において顕著に発揮され、脳血流が正常部位ではなく脆弱(傷害)部位へと優先的に分布する可能性がある。この概念を「逆盗血」と呼ぶ。

以上のような概念は現在では広く否定されている。脳への血流量および酸素運搬量は脳障害発生後には一般的には減少し、傷害発生から24時間後までの間は局所脳血流量はたいていの場合極度に低下する。外傷性脳傷害患者のうち31%では、脳血流量は「虚血閾値」を下回り、血流低下により脳虚血と細胞死が起こる可能性がある。経頭蓋ドップラー検査を行うと、外傷性脳損傷患者の三分の二において受傷後早期の血流低下が認められ、この患者群の転帰は不良である。このような低灌流は、脳血管攣縮によって悪化する可能性があり、そうなれば転帰は一層悪化する。とりわけ注目すべき点は、脳傷害で死亡した患者のうち80%において、神経の虚血性変化が目立つことである。

脳の酸素消費量
脳傷害患者では通常、全身の代謝が低下し、脳の代謝に必要な酸素量(脳酸素消費量;CMRO2)も減る。「ミトコンドリア機能障害仮説」によれば、脳血流量が低下するのは、脳酸素消費量が減少した結果の現象であり、つまり、傷害によるミトコンドリア機能障害が脳血流量低下の原因であるとされている。これがもし本当なら、傷害脳は酸素供給量が低下しても問題はなく、脳血流量が(たとえば過換気により)さらに減っても害は生じないことになる。外傷性脳傷害症例では代謝の低下と、おそらくは酸素抽出率の上昇により、低二酸化炭素症による脳血流量低下に耐えうるのかもしれない。しかし、脳全体についての事象についての仮定を、傷害部位と正常部位が混在している脳の局所に当てはめるのには注意を要する。なぜなら、血管内皮障害、微小血管の虚脱、血管周囲の浮腫などにより酸素拡散が局所的に妨げられている可能性があるからである。頸静脈酸素飽和度の上昇は、脳血流量の増加ではなく脳酸素消費量の低下を反映すると考えられる。

低二酸化炭素症によって脳血液量(CBV)が低下する機序

脳傷害急性期に低二酸化炭素症を適用する目的は、頭蓋内容量を低下させることである。しかし、低二酸化炭素症が脳血液量に及ぼす影響は間接的なものであり、脳血流量の低下を介して得られる作用である。PET検査を行うと、脳血液量のうち動脈に分布しているのはわずか30%にとどまるに過ぎないことが分かる。低二酸化炭素症は脳静脈のトーンにはほとんど影響をもたらさず、ダイナミックPET検査では二酸化炭素による脳血液量の変化は、毛細血管や静脈ではなく動脈容量の変化によって引き起こされることが明らかにされている。したがって、動脈血二酸化炭素分圧の変化は、脳血液量よりも脳血流量(つまり脳動脈血流量)の方に強く作用するのである。過換気によって脳血流量を30%以上低下させても、脳血液量はたったの7%しか減少しない。さらに極度の低二酸化炭素症にすると、脳血流量はそれに応じて一層減るが、脳血液量もしくは頭蓋内圧は下がらない。

二酸化炭素が脳血流量に与える作用の態様は、患者特性、元々の血流量および脳神経系の部位によって異なる。脳血流量が均一に分布していない患者や脳血流が豊富な部位では、二酸化炭素分圧が変化すると、脳血流量も急激に上下する。一般的には、動脈血二酸化炭素分圧が1mmHg変化すると脳血流量は3%増加または減少する。二酸化炭素と脳血流量のあいだにヒトと同じような相関が見られるネコでは、動脈血二酸化炭素分圧が1mmHg変化すると、脳皮質の血流量は1.7mL/100g/min(通常の脳皮質血流量は86mL/100g/min)変化し、一方、脊髄の血流量は0.9 mL/100g/min(通常の脊髄血流量は46mL/100g/min)の変化に止まる。ウサギやヒトでも同様の変化が起こることが示されている。翻って、脳血液量の変化は脳血流量の変化と比べるとずっと小幅である。したがって、低二酸化炭素症による脳血液量減少効果はわずかなものであり、脳血液量の減少幅とは釣り合わないほどの大幅な脳動脈血流量の低下という代償を払うことになる。外傷性脳傷害症例では受傷後24時間は脳血流量の低下が認められることが珍しくない。したがって、受傷後早期に低二酸化炭素症を適用するのはとりわけ有害であると考えられる。

脳血管収縮の機序
二酸化炭素は主に脳動脈に影響をおよぼし、二酸化炭素ではなくpHの変化を介した細動脈平滑筋に対する直接的な作用として発揮される。動脈径が太いほど二酸化炭素に対する反応は鈍く、細いほど鋭敏である。血管内皮と血管平滑筋が中心的な役割を果たしている。一酸化窒素、血管作働性プロスタノイド、カリウムチャネルおよび細胞内カルシウムなどが関わるいろいろな機序の関与が指摘されている。中でも、二酸化炭素分圧の変化による血管内皮からの一酸化窒素の放出が中心的な役割を果たしていると考えられている。血管内皮が障害されると一酸化窒素の放出量が減り、ちょうど一酸化窒素合成酵素を阻害したときと同じように、二酸化炭素に対する反応が減弱する。血管作働性プロスタノイド、カリウムチャネルおよび細胞内カルシウムが関わる機序には、一酸化窒素は関与しない。血管内皮細胞に血管拡張性プロスタノイドの合成および放出は、成人よりも小児において重要な機序であると考えられている。血管平滑筋細胞のカリウムチャネル(例;ATP感受性カリウムチャネル)の関与も指摘されている。結局、二酸化炭素は平滑筋細胞の細胞内カルシウム濃度とカルシウム感受性を修飾し、血管のトーンを変化させるのである。

教訓 過換気によって脳血流量を30%以上低下させても、脳血液量はたったの7%しか減少しません。さらに極度の低二酸化炭素症にすると、脳血流量はそれに応じて一層減りますが、脳血液量もしくは頭蓋内圧はそれ以上は下がりません。
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過換気は脳傷害によくない① [critical care]

Hypocapnia and the injured brain: More harm than benefit

Critical Care Medicine 2010年5月号より

従来、脳傷害の急性期管理では、低二酸化炭素症にすることによって頭蓋内圧を低下させることが重視されてきた。頭蓋内圧上昇は一般的には有害で、低二酸化炭素症には害はないと考えられているため、急性脳傷害の患者に対して過換気が広く行われてきた。この理屈を敷衍した結果、過換気にすればするほど脳に良い効果が期待されるという考えが生まれ、急性脳傷害に対し高度の過換気を長時間続ける管理法が提唱された。

本レビューでは、急性脳傷害(外傷性と非外傷性の両者とも)における低二酸化炭素症の適用に関する理論的背景を改めて吟味する。以下の単語を用いてMEDLINEおよびPubMed(1966年~2009年8月1日)を検索した:「過換気」「低二酸化炭素症」「アルカローシス」「二酸化炭素」「脳」「肺」および「心筋」。検索は一語ごとおよび複数の組合せで行った。得られた論文の参考文献も調査した。脳傷害患者管理中の低二酸化炭素症の発生頻度と、低二酸化炭素症による効能と有害作用を評価した。

低二酸化炭素症:定義と程度

動脈血二酸化炭素分圧(Paco2)は、二酸化炭素の産生と排出の差し引きで決定される。体内で産生される二酸化炭素の量が正常以下になることは滅多にないため、低二酸化炭素症は通常は故意または偶発的過換気によって引き起こされる。急性脳傷害症例では、「治療を目的とした」低二酸化炭素症が程度別に分類されている(Table 1)。

急性脳傷害患者を低二酸化炭素症にする理由

Monro-Kellieの法則によれば、頭蓋内の体積は不変なので頭蓋内に含まれる構成要素の総容量は一定である。頭蓋内のいずれかの構成要素が増えれば(例;脳浮腫、血腫、腫瘍など)、その他の構成要素の容量が減って代償される。しかし、構成要素の合計容量が閾値を超えると、頭蓋内圧は急激に上昇する(Fig. 1)。頭蓋内圧亢進(頭蓋内圧>20mmHgが続く状態)は、脳血流減少、直接的な圧迫または脳幹ヘルニアなどを引き起こすため、続発性脳傷害の原因となり得る。

低二酸化炭素症にすると、脳動脈が収縮し脳内血液量(CBV; cerebral blood volume)が減るため、頭蓋内圧が低下する(Fig. 1)。その作用は強力である。外傷性脳傷害患者では、動脈血二酸化炭素分圧(60mmHgから20mmHgの範囲)が1mmHg低下するごとに脳血流量(CBF; cerebral blood flow)は約3%減少する。

臨床で低二酸化炭素症を適用する頻度

成人、小児を問わず急性脳傷害症例では、傷害過程の極早期では頭蓋内圧が亢進していなくても低二酸化炭素症が導入されることが多い。低二酸化炭素症の危険性が認識され、成人対象および小児対象のガイドラインが出回っているにも関わらず、低二酸化炭素症は依然として広く適用されている。成人、小児の各ガイドラインでは、低二酸化炭素症の適応は頭蓋内圧亢進による神経症状の悪化が認められる場合に限定されている。

成人における低二酸化炭素症
欧州に所在する脳傷害患者の治療を行う38ヶ所の施設による共同研究であるBrainITでは、外傷性脳傷害症例のデータベースを構築している。このデータベースを用いNeumannらは人工呼吸症例2269例についての動脈血ガス分析データの解析を行った。予防的過換気の早期導入、つまり、収容後24時間における低二酸化炭素症が54%の症例で導入されていた(Fig. 2)。さらに、頭蓋内圧亢進のない患者の大半が、全人工呼吸期間のうち最長50%にわたり著しい低二酸化炭素症になっていた。動脈血二酸化炭素分圧が30mmHg以下であった患者のうち、脳の酸素化のモニタリングを行われていなかった患者が90%以上を占めた。米国では、米国脳神経外科学会認定専門医の36%が重症外傷性脳傷害患者に対し全例でルーチーンに予防的過換気を行っている。

小児における低二酸化炭素症
小児脳傷害患者の管理では依然として低二酸化炭素症の適用が重視されている。遡及的研究では、小児脳傷害症例のうち52%に低二酸化炭素症が導入されており、2003年に発表された小児頭部外傷ガイドラインで低二酸化炭素症の適応を厳しく限定しているにも関わらず、低二酸化炭素症が多くの症例に導入される状況は変わっていない(Fig. 3)。高度の低二酸化炭素症が導入される頻度が最も高いのは幼児(2歳未満)であり、このような若年者の脳が障害を受けやすく、低二酸化炭素症によって脳室内出血が起こる可能性を考えると、小児症例にも低二酸化炭素症が広く適用される現在の状況は憂慮すべき事態である(Fig. 4)。小児患者では、頭蓋内圧亢進が認められなくても高度の低二酸化炭素症が導入されるのが珍しくはない。これは特に懸念すべきことである。なぜなら、低二酸化炭素症は脳傷害の重症度とは独立して院内死亡率を上昇させるからである(オッズ比2.8; 95%CI, 1.3-5.9)。

脳傷害早期の低二酸化炭素症
脳傷害患者では集中治療部入室前にすでに低二酸化炭素症になっていることがある。ミシガン州の救急医のうちおよそ50%が、重症外傷性脳傷害症例では全例にルーチーンで予防的過換気を実施すると答えており、そうでなくとも偶発的に過換気になってしまうことが珍しくない。このような状況を反映し、米国都市部のレベル1外傷センターへヘリコプターで搬送される患者の70%が到着時に高度の低二酸化炭素症(呼気終末二酸化炭素分圧30mmHg未満)に陥っていることが明らかになっている。Warnerらによるさらに新しい報告では、レベル1外傷センターへの搬送途中で気管挿管が行われた外傷性脳傷害患者のうち、到着時に動脈血二酸化炭素分圧が30mmHg未満であったのは16%、30~35mmHgであったのは30%を占めていたということである。このような病院到着前からの低二酸化炭素症の実施は、外傷性脳傷害の転帰を明らかに悪化させる。

教訓 小児の脳傷害では、低二酸化炭素症は脳傷害の重症度とは独立して院内死亡率を上昇させます(オッズ比2.8)。病院到着前から低二酸化炭素症にすると、外傷性脳傷害の転帰が悪化します。
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無症状の左室機能低下がある患者の術後転帰~考察② [anesthesiology]

Prognostic Implications of Asymptomatic Left Ventricular Dysfunction in Patients Undergoing Vascular Surgery

Anesthesiology 2010年6月号より

ACC/AHAおよび欧州循環器学会のそれぞれが発表している最新の周術期ガイドラインでは、いずれも心不全症状が術後転帰不良の予測因子であることが明記され、心不全症状の有無が手術実施に当たり追加検査等の必要性があるかどうかの判断項目の一つとして組み込まれている。さらに、術前心血管系リスク分類では、症状を伴う心不全が重要な危険因子として取り上げられている。周術期心血管系有害事象発生の「危険性が高い」患者を見分けるには、心不全の症状が今現在あるか否かを重視しなければならない。次いで、虚血性心疾患、脳血管障害、腎機能障害、糖尿病または高リスク手術といった危険因子を考慮すべきである。血管外科手術を受ける患者にのしかかる心血管系リスクを過小評価してしまうのを避けるには、我々がここに示したデータを参考とし、周術期リスク評価に際し無症状の左室機能障害の有無を考慮すべきである。

本研究で得られた結果によると、血管内手術症例では、無症状の左室機能障害があっても術後30日目までの心血管系有害事象および心血管系要因による遠隔期死亡のリスクは増大しない。このような知見が得られたのは、血管内手術はopen vascular surgeryと比べ心筋に対するストレスが少ないという事情が関与していると考えられる。したがって、術前にルーチーンで心エコー検査を行い無症状の左室機能障害の有無が分かれば、血管内手術とopen surgeryのいずれを選択するかを決定するのに有用な情報となるだろう。

心不全の診断および除外に、N末端プロ脳型ナトリウム利尿ペプチド(BNP)をはじめとする各種生化学マーカが利用されることが多くなっている。生化学マーカは、血管外科手術後の転帰を予測するのにも有効であることが示されている。血管外科手術を受ける患者において無症状の左室機能障害を検出するのに、心不全症状の有無を問わずBNPを測定すれば威力を発揮すると考えられる。しかし、無症状の左室拡張障害または左室収縮障害のおそれがある症例をBNPによって判断することに関する診断的価値については議論の多いところである。Luersらが行った最近の研究では、血漿BNP濃度は駆出率低下または高度の拡張障害がある場合に上昇することが明らかにされている。このことを踏まえ、この論文の著者らは、臨床データとBNP値を組み合わせた点数システムを用いると高危険群の患者を効率的に判別することができるという見解を示している。血管外科手術を受ける患者を心不全症状の有無によって分け、それぞれにつき左室機能障害の術前評価にBNPと心エコーのどちらの方がより有効であるかを検証するのが今後の課題である。非侵襲的方法による術前リスク分類が従来重視されてきたが、2003年にGrayburnとHillisは、術前に焦点を当てるべき対象についてリスク評価から治療へと方向転換を図るべきだという見解を示した。術前の左室機能評価を必須とすれば、薬物療法を考慮すべき無症状左室機能障害の患者を同定することができるであろう。β遮断薬少量投与を行い60~70bpmの目標心拍数となるようにする術前管理法が提唱されている。また、術後にはACEI/ARBの投与を開始すべきであるという報告もある。

本研究には考慮すべき問題点がいくつかある。第一に、対象が三次総合医療機関に紹介された患者であるため、血管外科予定手術症例全般を十分に反映していない可能性がある。第二に、二名の評価者がオフラインで超音波画像を吟味したが、評価者間のばらつきが本研究の結果にいささかの影響を及ぼした可能性を否定することはできない。第三に、従来のドプラ法、E/A比および肺静脈血流波形といった方法で左室拡張能を評価したが、以上の方法は前負荷の影響を受けるため精度に限界がある。バルサルバ手技、E/E’比、等容量拡張時間または組織ドプラ法などの方法を行っていればもっと正確に評価ができた可能性がある。

まとめ

本研究では、open vascular surgery症例では無症状の左室機能障害が心血管系転帰の予測因子であることが明らかになった。術前リスク評価を行うに当たっては、AHA/ACCや欧州循環器学会の術前ガイドラインにおいてその危険性が周知されている症状を伴う心不全のみを考慮するに止まらず、無症状の左室機能障害も危険因子として認識すべきである。我々がここに示した結果を踏まえると、現行の標準的な術前左室機能評価は不十分の誹りを免れないであろう。open vascular surgery症例では、心エコー検査を必須の術前検査と位置づけるべきであると考えられる。

教訓 BNPと心エコーのどちらの方が左室機能障害の術前評価において優れているかを明らかにするのは今後の課題です。
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無症状の左室機能低下がある患者の術後転帰~考察① [anesthesiology]

Prognostic Implications of Asymptomatic Left Ventricular Dysfunction in Patients Undergoing Vascular Surgery

Anesthesiology 2010年6月号より

考察

本研究では、無症状孤発性左室拡張障害もしくは無症状左室収縮障害のある患者では、血管内手術ではなく開腹などで行う血管手術後の術後30日目までの心血管系有害事象発生リスクが増大し、心血管系要因による遠隔期死亡率が上昇することが明らかになった。血管内手術実施例では、術後30日目までの心血管系有害事象発生リスク増大および心血管系要因による遠隔期死亡率上昇と相関するのは、症状を伴う心不全のみであるという結果が得られた。ACC/AHAおよび欧州循環器学会の周術期ガイドラインでは、症状のある心不全が術後転帰の重要な予測因子であることが明記されている。しかし、我々が得たデータは、血管外科手術患者では術前リスク評価に際しては、無症状の左室機能障害の有無を考慮すべきであることを示している。

左室機能障害が発生する原因は、血行動態に起因する心負荷増大または心筋傷害が引き起こす神経内分泌反応である。この神経内分泌反応は、(1) 交感神経刺激、(2) ナトリウムおよび水分貯溜、(3) 血管収縮といった現象を引き起こす。以上の変化は当初は適応反応であるが、左室のリモデリングが進むにつれ次第に不適応な現象になる。リモデリングが進行すると、(1) 左室拡張障害では左室肥大(求心性リモデリング)、(2) 左室収縮障害では左室拡張(遠心性リモデリング)が起こる。手術中の血管収縮および血行動態変動の原因はカテコラミン産生量の増加である。手術ストレスおよび周術期輸液によって前負荷および後負荷が増大するが、これは左室収縮障害がある患者において心筋傷害が起こりやすい状況である。手術中は酸素需要量が増えるので、冠動脈狭窄のある患者では酸素需給の不均衡による周術期心筋虚血が発生する危険性が高い。左室拡張能が低下していると、冠動脈血流予備量が少ないため、左室収縮能が低下している患者と同様に周術期心筋虚血に陥りやすい。さらに、求心性リモデリングは左室コンプライアンスの低下を招くため、左室前負荷によって規定される血液量が左室充満の度合いを左右することになる。周術期に左室前負荷が減少すると、頻脈が起こるとともに冠血流量が減るため心筋虚血が発生する可能性がある。

周術期に心筋傷害が発生しても、大半は無症候性なので治療されないまま過ぎてしまう。これが心血管要因による遠隔期死亡の一因であると考えられている。周術期心血管系有害事象発生例の4例中約3例が術前から左室機能障害のある症例であった。過去の諸研究と同様に、本研究でもopen surgeryと比べ血管内手術の方が周術期心筋障害の発生率が低いという結果が得られた。おそらくその原因は、血管内手術の方が心筋に加わるストレスが小さく周術期輸液量が少ないからであろう。頸動脈手術は腹部大動脈瘤修復術や下肢血行再建術よりも心血管系リスクは小さいことを付け加えて銘記されたい。

周術期心筋障害の危険性がある患者の判別には、心筋血流シンチグラフィや薬物負荷心エコーが有用である。また、安静時壁運動異常は、周術期心血管系有害事象の予測因子である。現在までに発表された、心不全の既往が周術期リスクに及ぼす影響についての研究では、左室駆出率低下があり心不全症状を呈する患者が主な対象とされている。Xu-Caiらは左室駆出率が正常でありながら心不全症状のある非心臓手術患者を対象として遡及的研究を行い、このような患者群では遠隔期死亡リスクが高いことを明らかにした。しかし、周術期死亡率の上昇は認められなかった。Matyalらは先頃、血管手術患者313名について検討し、左室拡張障害が心血管系有害事象の予測因子であることを示した。そして、左室収縮障害は周術期心血管系有害事象の予測因子には当たらないという結果を得た。我々が行った今回の研究とMatyalらの研究とのあいだには複数の相違点がある。左室収縮障害が心血管系転帰に及ぼす影響についての結果が相反するのは、この相違点が原因であると考えられる。以下に二つの研究の違いを挙げる:(1) open surgery症例と血管内手術症例を分けたサブ解析の有無、(2) トロポニンT測定を全例で実施するか臨床的に必要な場合にのみ実施するかの違い、(3) 左室機能の分類定義の違い、(4) 追跡期間。無症状の左室機能障害(拡張障害もしくは収縮障害)があるとopen vascular surgery症例の周術期リスク増大につながることを明らかにしたのは、我々の管見の及ぶ限りでは本研究が史上初である。

教訓 周術期心血管系有害事象発生例の4例中約3例は、術前から左室機能障害があります。AAAに対するEVARと開腹術の長期転帰を比較した研究では、遠隔期死亡率と動脈瘤関連死亡率には有意差は認められていません。EVARの方が術後合併症発生率が高く費用もかさみます。ただし、EVARの方が手術死亡率が低いという結果が得られています。
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無症状の左室機能低下がある患者の術後転帰~結果 [anesthesiology]

Prognostic Implications of Asymptomatic Left Ventricular Dysfunction in Patients Undergoing Vascular Surgery

Anesthesiology 2010年6月号より

結果

対象患者

血管内手術ではない血管手術(open vascular surgery; 649名、65%)または血管内手術(356名、35%)を受けた計1005名の患者が本研究の対象となった。open vascular surgery症例の内訳は、頸動脈手術が148例(23%)、腹部大動脈瘤切除術が249例(38%)、下肢動脈手術が252例(39%)であった。血管内手術症例の内訳は、頸動脈手術が90例(25%)、腹部大動脈手術が162例(46%)、下肢動脈手術が104例(29%)であった。open vascular surgery症例は全例が全身麻酔下で行われた。血管内腹部大動脈手術のうち56例(35%)は全身麻酔下で行われた。経皮的手術症例では全身麻酔は行われなかった。

対象患者の大半を男性が占め(77%)、平均年齢は67±10歳であった。平均追跡期間は2.2±1.8年(範囲3-79ヶ月)であった。左室機能障害があると診断されたのは506名(50%)であった。左室機能障害のある患者のうち、403名(80%)は無症状の左室機能低下であり、103名(20%)は症状を伴う心不全であった。無症状の左室機能低下を呈した患者のうち209名(52%)は無症状孤発性左室拡張障害であり、194名(48%)は無症状左室収縮障害であった。症状を伴う心不全であった103名のうち72名(70%)はNYHA分類Ⅱ、28名(27%)はNYHA分類Ⅲであった(このうち12名はあきらかな末梢浮腫が認められた)。NYHA分類Ⅳであったのは3名(3%)で、理学的所見で肺水腫の徴候が認められた。

基準時点における患者特性

基準時点における臨床的特性をtable 1に示した。正常左室機能群と比べ左室機能障害群の方が高齢で、虚血性心疾患、腎機能障害、高血圧およびCOPDのある者が多く、安静時心拍数が高かった。さらに、左室機能障害群の方が、β遮断薬、経口抗凝固薬、ACEI、ARB、利尿薬および亜硝酸薬を内服している患者が多かった。無症状の左室収縮障害および症状を伴う心不全を呈する患者は、女性より男性に多かった。症状を伴う心不全のある患者では、それ以外の患者と比べ、血管内手術が行われた患者の割合が低かった。

30日後転帰

30日間の追跡期間中に、172名(17%)に非致死的冠動脈関連有害事象が発生した。そのうち131名(76%)が心筋虚血、41名(24%)が心筋梗塞であった。正常左室機能群では合わせて51名(10%)に術後30日目までに心血管系有害事象が発生した。一方、無症状孤発性左室拡張障害のある患者では38名(18%)、無症状左室収縮障害のある患者では44名(23%)、症状を伴う心不全のある患者では50名(49%)において術後30日目までに心血管系有害事象が発生した(P<0.001, table 2)。open surgeryが行われた患者群についての多変量解析では、無症状孤発性左室拡張障害、無症状左室収縮障害および症状を伴う心不全はいずれも術後30日目までの心血管系有害事象の発生と相関があることが示され、オッズ比はそれぞれ1.8(95%CI, 1.1-2.9)、2.3(95%CI, 1.4-3.6)、6.8(95%CI, 4.0-11.6)であった(table 3)。術後30日目までの心血管系有害事象に関するその他の危険因子は、年齢、虚血性心疾患、腎機能障害およびCOPDであり、オッズ比はそれぞれ1.8(95%CI, 1.0-1.1)、1.7(95%CI, 1.1-2.6)、3.9(95%CI, 2.2-7.1)、1.8(95%CI, 1.2-2.6)であった。血管内手術が行われた患者群についての多変量解析では、術後30日目までの心血管系有害事象の発生と相関があるのは症状を伴う心不全のみで、オッズ比は9.3(95%CI, 2.3-37.7; table 4)であった。いずれの術式においても、内服薬(β遮断薬、スタチン、ACEI、ARB、利尿薬)の有無による調整を行っても左室機能障害が30日後転帰に及ぼす影響の大きさに変化は認められなかった。

長期転帰

長期追跡期間中に、164名(16%)が死亡した。本研究における転帰項目である心血管系要因による遠隔期死亡に該当したのは107名(11%)であった。正常左室機能患者のうち心血管系要因により死亡したのは15名(3%)に止まったのと対照的に、無症状孤発性左室拡張障害の患者では21名(10%)、無症状左室収縮障害の患者では31名(16%)、症状を伴う心不全の患者では40名(39%)が心血管系要因により死亡した(P<0.001, table 2)。全対象患者の累積生存率をfigure 1に示した(ログランク検定、P<0.001)。術前に左室機能障害を呈し心血管系要因による遠隔期死亡に至った患者のうち、48名(52%)は手術後30日目までの追跡期間中に心筋虚血または心筋梗塞を発症していた。open surgeryが行われた患者群についての多変量解析を行ったところ、無症状孤発性左室拡張障害、無症状左室収縮障害および症状を伴う心不全はいずれも心血管系要因による遠隔期死亡と相関があることが示され、ハザード比はそれぞれ3.0(95%CI, 1.5-6.0)、4.6(95%CI, 2.4-8.5)、10.3(95%CI, 5.4-19.3)であった(table 3)。心血管系要因による遠隔期死亡に関するその他の危険因子は、年齢、虚血性心疾患、腎機能障害および喫煙で、ハザード比はそれぞれ1.1(95%CI, 1.1-1.2)、1.6(95%CI, 1.1-2.8)、2.5(95%CI, 1.3-5.1)、2.0(95%CI, 1.2-3.1)であった。血管内手術が行われた患者についての多変量解析を行ったところ、心血管系要因による遠隔期死亡と相関が合ったのは症状を伴う心不全のみで、ハザード比は11.4(95%CI, 3.7-35.6; table 4)であった。いずれの術式においても、内服薬の有無による調整を行っても左室機能障害が長期転帰に及ぼす影響の大きさに変化は認められなかった。

教訓 open vascular sugeryが行われた症例では、無症状左室収縮もしくは拡張障害が術後30日目までの心血管系有害事象発生および心血管系要因による遠隔期死亡と相関していました。一方、血管内手術が行われた症例では、症状を伴う心不全のみが上記の術後転帰と相関していました。
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無症状の左室機能低下がある患者の術後転帰~方法 [anesthesiology]

Prognostic Implications of Asymptomatic Left Ventricular Dysfunction in Patients Undergoing Vascular Surgery

Anesthesiology 2010年6月号より

方法

対象

下肢動脈、頸動脈または腹部大動脈に対する予定血管手術(開腹手術、血管内手術のいずれをも含む)を受ける患者1005名を連続的に登録した。対象患者の詳細は先行論文に発表済みである。本研究はロッテルダム(オランダ)に所在するエラスムス医療センターで2002年から2008年にかけて行われた前向きコホート研究である。

基準時点における患者背景

術前に各患者の詳細な病歴を聴取した。心疾患の既往を評価するにあたり、狭心症、冠動脈再開通術または心筋梗塞の既往がある場合を虚血性心疾患ありとした。臨床データとして収集した他の項目は、年齢、性別、血圧、心拍数、脳血管疾患(虚血性または出血性脳血管障害の既往)、腎機能障害(血清クレアチニン>2mg/dL)、糖尿病(空腹時血糖値126mg/dL以上または糖尿病に対する薬物療法の実施)、高血圧(非糖尿病患者では140/90mmHg以上、糖尿病患者では130/80mmHg以上、または降圧薬内服)、高コレステロール血症(LDL 135mg/dL以上または高脂血症治療薬内服)、COPD(GOLD分類に従う)および喫煙の有無である。さらに、β遮断薬、スタチン、アスピリン、経口抗凝固薬、ACEI、ARB、利尿薬および亜硝酸薬の内服状況についても記録した。

心エコー検査

対象症例全例で、ポータブル心エコー装置であるAcuson Cypress Ultrasound System(シーメンス)による経胸壁心エコー検査を術前に行った。3V2Cトランスデューサ(3.0/3.5/2.5/2.0MHz)を使用した。患者を左側臥位とし、安静時における傍胸骨長軸像・短軸像および心尖部二腔像・四腔像を観察する標準的な方法で心エコー検査を行った。Biplane Simpson法によって左室収縮終期および拡張終期容量を測定し、左室区出率を算出した。実施者間の測定値のばらつき、一人の実施者における測定値のばらつきはそれぞれ9-12%、6%であった。心尖部四腔像を用い、収縮期および拡張期肺静脈血流波形、E波減速時間およびE/A比を測定した。心エコーデータは研究目的のみに用い、患者管理の参考にはしなかった。

左室機能低下の定義

拡張障害の有無を問わず、左室駆出率が50%未満である場合を左室収縮障害と定義した。E/A比が0.8未満(弛緩障害)または2を超える(拘束型拡張障害)場合を左室拡張障害とした。E/A比が0.8から2の範囲である患者では、肺静脈血流の異常(S/D<1)の有無によって左室拡張能が正常か低下しているかを判断した。心房細動のある患者では、E波減速時間が220msecを超える(弛緩障害)かまたは140msec未満(拘束型拡張障害)の場合を左室拡張障害とした。左室駆出率が50%以上で、左室拡張障害を呈する場合を、無症状孤発性拡張障害と定義した。心不全症状(息切れ、倦怠感、運動耐容能低下、水分貯留の徴候)を伴う左室機能障害がある場合を、有症状心不全と定義した。心エコー検査に熟達した2名が、得られた超音波画像をオフラインで評価した。判断が一致しない場合は、この2名とは別の1名が評価に加わり、多数決で最終判断を決した。

転帰

全症例で術前、術後第1、3、7日および退院前の各時点において心エコー検査とトロポニンTの測定を行った。転帰項目は、30日後心血管系有害事象(心筋虚血、心筋梗塞および心血管系要因による死亡)および心血管系要因による長期死亡率とした。トロポニンTが術前は正常で術後に上昇(>0.03ng/mL)した場合を心筋虚血と定義した。心電図変化(新規のST-T変化と異常Q波)がありトロポニンT値が上昇している場合を心筋梗塞と定義した。トロポニンT値は、全血迅速検査によって測定した(TropT version 2; ロシュ・ダイアグノスティックス)。術前にトロポニンTの上昇が見られた患者は、本研究の対象から除外した。手術30日後に追跡調査のため患者を受診させることにした。来院しなかった患者については、紹介元の医師に情報提供を求めた。手術30日後に、エラスムス医療センターに継続入院または再入院している場合は、エラスムス医療センターのカルテを用いて追跡調査を行った。

長期死亡は、市役所の住民登録を利用して評価した。死因は死亡届または医療記録から特定した。死因は心血管系要因とそれ以外に分類した。主たる死因または副次的死因が心血管系疾患である場合を、心血管系要因による死亡と定義した。具体的には、心筋梗塞、重篤な不整脈(緊急治療を要する調律異常が続く)、鬱血性心不全、脳血管障害および手術に起因する出血性合併症(による術後死亡)が心血管系要因による死亡に分類された。予期せぬ突然死は心血管系要因による死亡とした。本論文著者のうち2名が死因を特定した。2名の判断が一致しない場合は、別の1名が加わり多数決で最終判断を決した。追跡調査から脱落した症例は皆無であった。

教訓 血管手術(openまたはEVARなどのEVS)を受ける患者1005名を対象に、ルーチーンで術前に心エコーを行い、無症状の左室収縮または拡張障害がある患者を拾い上げ、術後転帰との関係を調べました。
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無症状の左室機能低下がある患者の術後転帰~はじめに [anesthesiology]

Prognostic Implications of Asymptomatic Left Ventricular Dysfunction in Patients Undergoing Vascular Surgery

Anesthesiology 2010年6月号より

全世界で年間およそ100万人の成人が非心臓手術を受けている。2020年までにその人数は25%増加すると予測されている。非心臓手術の中でも血管外科手術は、周術期心血管系有害事象の危険性が特に高い。非心臓手術後の心血管系有害事象に関わる危険因子のうち最も重大なものは虚血性心疾患であることが知られているが、症状を伴う心不全も虚血性心疾患と匹敵する危険因子であることが複数の研究で明らかにされている。一般人口における有症状心不全の有病率は約2~3%と概算されている。年齢が進むにつれ有病率は上昇し、70代および80代になるとおよそ10%~20%に達すると考えられている。心不全とは臨床的な症候群をあらわす用語であるが、左室機能低下は左室の機械的特性の障害を意味する。無症状左室機能低下と有症状心不全の有病率は同等であると考えられている。

最新のACC/AHAおよび欧州循環器学会の周術期ガイドラインではいずれも、有症状心不全が術後転帰不良を予測する因子であることが銘記されている。しかし、無症状の左室機能低下がどのように予後を左右するのかは不明である。ACC/AHAの周術期ガイドラインでは、左室機能の評価は術前の必須検査には含まれていない(Class Ⅲ、エビデンスレベルC)。さらに、欧州循環器学会周術期ガイドラインでも、無症状の患者に対する安静時心エコーによる左室機能評価の実施は推奨されていない(Class Ⅲ、エビデンスレベルC)。

本研究では、開腹血管手術または血管内手術を受ける患者を対象としルーチーンで術前に心エコー検査を行い、他の心機能異常を伴わない左室拡張障害または無症状の左室収縮障害が術後の予後に及ぼす影響を検討した。

教訓 無症状の左室機能低下がある場合の術後転帰はよく分かっていません。現行のガイドラインでは術前にルーチーンで心エコーを行うことは推奨されていません。


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集中治療文献レビュー2010年5月② [critical care]

Anesthesia Literature Review  Critical Care Medicine

Anesthesiology 2010年5月号より

Antiplatelet drugs and outcome in mixed admissions to an intensive care unit

Crit Care Med.2010 Jan;38(1):32-7.

循環血液中の血小板が活性化すると、微小血管内で血小板が凝集し、血小板数が減少する。重症患者の主な死因である敗血症ではこのような現象が発生することが珍しくない。抗血小板薬を重症患者に投与すると、炎症反応の修飾による効果が得られる可能性がある。しかし、抗血小板薬を用いれば出血の危険性が増すため、危険性と有効性を厳密に比較考量する必要がある。

本研究は、入院後24時間以内にICUに入室した症例615例を連続的に収集し分析した遡及的コホート研究である。およそ25%の患者に抗血小板薬(アセチルサリチル酸またはクロピドグレル)が投与されていた。

大半の症例が救急部(52%)または内科もしくは外科病棟(19%)からICUへ入室した症例であった。約60%の患者がICU入室時または入室中に活動性の出血を呈した。抗血小板薬を処方されていなかった患者と比べ抗血小板薬内服中の患者の方が高齢で、入室時のAPACHEⅡスコアが高かった。

全体としては、抗血小板薬処方の有無によるICU入室期間、感染・敗血症発生率および人工呼吸実施率の有意差は認められなかった。回帰分析を行いAPACHEⅡスコアおよび年齢の差を調整し分析したところ、普段から抗血小板薬を処方されている患者の方が死亡率が有意に低いことが分かった。この効果は外科系患者で特に顕著に認められた。

解説
重症患者における抗血小板療法の取り扱いは複雑な問題をはらんでいる。臓器不全のある患者では、出血の危険性と血栓症発生の危険性を慎重に評価しなければならないからである。本研究のデータから、重症患者の一部では抗血小板薬によって死亡率が低下することがはじめて明らかになった。おそらく、抗血小板薬を投与すると、微小血管の血栓および臓器不全を防ぐ効果が発揮されるからであろう。今後、前向き比較対照試験でこの知見が確認されれば、ICU患者の日常臨床に大きな影響を及ぼすであろう。

Association of Telemedicine for Remote Monitoring of Intensive Care Patients With Mortality, Complications, and Length of Stay

JAMA. 2009;302(24):2671-2678.

ICUに集中治療医が常駐していると、合併症発生率および死亡率が低下する。しかし、集中治療医の常駐が、いつでもどこでも可能なわけではない。したがって、遠隔医療の技術を利用し、離れた場所から集中治療医が複数のICUを同時に監視するやり方を採用する施設が増えている。しかし、この技術の導入には多額の費用を要する上、有効性を検証したデータはほとんど存在しない。

この観測研究は、米国の大規模医療保険団体の一つに所属する5か所の病院のICU 6施設で行われた。本研究では、遠隔ICU導入前のICU患者2034名と遠隔ICU導入後のICU患者2108名を比較し、遠隔ICUの有効性を評価した。遠隔ICU導入後の患者のうち655名(31.1%)に関しては、治療に関わるすべての決定権が各施設の担当医に付与されていた。残りの遠隔ICU患者については、危機的状況が発生した場合のみ各施設の担当医が主体的に関与することが許可されていた。

遠隔ICU導入前と遠隔ICU導入後の院内死亡率はそれぞれ12.0%、9.9%であった。ICU死亡率はそれぞれ9.2%、7.8%であった。重症度による調整を行ったところ、院内死亡率(RR 0.85)およびICU死亡率(RR 0.88)のいずれについても遠隔ICU導入前後の有意な変化は認められなかった。遠隔ICUを導入すると、重症度が高い患者の生存率は上昇するが、重症度がそれほど高くない患者では、生存率の改善が得られないかまたは転帰が悪化するという結果が得られた。両群ともICU在室期間は同等であった。

解説
集中治療領域では、遠隔医療が医療の質の向上や医療費の削減につながるかどうかは、はっきりしていない。ICU患者の遠隔監視を行っても、全体としては死亡率の低下やICU在室期間の短縮といった効果は得られないことが明らかになった。しかし、遠隔ICUが従来のICUと異なり転帰を改善するかどうかを評価する際には、ICU患者を均質な集団としては扱えないという点が大きな問題となる。

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集中治療文献レビュー2010年5月① [critical care]

Anesthesia Literature Review  Critical Care Medicine

Anesthesiology 2010年5月号より

Early exercise in critically ill patients enhances short-term functional recovery

Crit Care Med. 2009 Sep;37(9):2499-505.

人工呼吸を4~7日実施した症例のうち25-33%に、臨床的な筋力低下が認められるとされている。その結果、ICU在室期間が延長したり、退室1年後に至っても身体機能あるいはQOLが低下した状態が続いたりすることが懸念される。最近の知見では、重症患者でも早期から運動療法が可能であることが示唆されていると。だが、鎮静中のICU患者における運動療法の有効性を検証した文献は僅少である。

運動療法を毎日実施すると、身体機能やQOL低下といった悪影響を予防または緩和する効果を得られるかどうか、また安全性に問題はないかということを検証するため無作為化比較対照試験を行った。循環動態および呼吸状態が運動療法の実施(ICU入室後5日目から実施)が可能な程度に良好で、ICU在室期間が7日以上におよぶと予測される重症患者90名が対象となった。対象患者全員に対し、呼吸理学療法と上肢および下肢の他動運動または自動運動による運動療法を毎日実施した。以上に加え、治療群に割り当てられた患者はベッドサイドで自動的または他動的自転車漕ぎを一日20分間行った。

患者の大半(79%)は、外科系ICU入室患者であった。その主な内訳は、心臓手術後(39%)、移植手術後(25%)、および胸部手術後(16%)であった。対象患者の80%に対し、PSVが行われていた。自転車漕ぎ実施回数の中央値は7回で、自転車漕ぎ実施頻度の中央値は4回/週であった。運動療法中および直後に重篤な有害事象が発生した症例は皆無であった。

退院時におけるいずれの転帰(6分間歩行距離、等尺性大腿四頭筋筋力、身体機能の程度に関する主観的感覚など)も、治療群(自転車漕ぎ実施群)の方が有意に良好であった(P<0.05)。

解説
術後患者であっても、運動療法が禁忌でないことが確認され、実施中には監視を怠らないという条件が満たされれば、運動療法を行うことを考慮すべきであることが本研究で明らかにされた。治療群では、自転車漕ぎによって鍛えられる筋肉が関与する身体機能および筋力の改善が認められた。何本もドレーンが留置され、まだ創部も治癒しきっていない術後患者において、早期離床および作業療法が可能、安全そして有効であるかどうかは不明である。しかしながら、本研究で行われた自転車漕ぎによる運動療法は、人工呼吸患者の筋力低下を防ぐ方法を確立する上での最初の一歩と言える。

Plasma tryptophan and tyrosine levels are independent risk factors for delirium in critically ill patients

ICU入室患者における譫妄発生率は、少ない報告では20%、多いと80%にものぼる。譫妄は予防可能であるが、発生してしまえば、入院期間の延長、医療費増大および死亡率上昇といった事態を招き、長期にわたる禍根を残す可能性もある。譫妄の病態生理はまだよく分かっていないが、セロトニン、ドパミン、アセチルコリンおよびノルエピネフリンの関与する神経伝達に生ずる変化が原因の一つであると考えられている。この予備研究では、神経伝達物質の前駆物質であるトリプトファン、フェニルアラニンおよびチロシンといった大型中性アミノ酸が重症患者における譫妄発生リスクに及ぼす影響が検討された。

大型中性アミノ酸の血漿中濃度を人工呼吸開始後第1日および第3日に測定した。デクスメデトミジンまたはロラゼパムによる鎮静の比較を目的として行われたMaximizing Efficacy of Targeted Sedation and Reducing Neurological Dysfunction (MENDS) trialの登録患者を本研究の対象患者とした。ICU譫妄評価法(CAM-ICU)を用いて譫妄の発生状況を毎日判定した。

評価対象となった患者全員(97名)が、基準時点において高い重症度を呈していた(APACHEⅡスコア中央値28点)。多くの症例(42%)が、敗血症またはARDSによるICU入室例であった。交絡因子調整後の譫妄発生リスクが高いのは、トリプトファン/大型中性アミノ酸比が高いまたは低い(P=0.0003)、チロシン/大型中性アミノ酸比が高いまたは低い(P=0.02)場合であることが明らかになった。その他の予測因子は、高齢、APACHEⅡスコア高得点およびフェンタニル使用量増大であった。

解説
トリプトファン(セロトニンの前駆物質)およびチロシン(ドパミンとノルエピネフリンの前駆物質)をはじめとするアミノ酸の代謝の変化が、ICU患者の譫妄の病態生理と関わっているという説が、本研究で裏付けられた。この結果は厳密な方法による前向き試験によって今後検証される必要があるが、ICU患者における譫妄の予防および対処法の確立に資する病態生理および治療に関する新たな知見を本研究が示したと言えよう。

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麻酔文献レビュー2010年5月② [anesthesiology]

Anesthesia Literature Review Perioperative Medicine

Anesthesiology 2010年5月号より

Impact of Advancing Age on Abdominal Surgical Outcomes.

Arch Surg. 2009;144(12):1108-1114.

米国では年間約200万人の高齢者が腹部手術を受けている。高齢者では術後の回復が遅れる可能性があるが、転帰についての臨床データは一貫した傾向を示しているわけではない。この遡及的研究は、ありふれた腹部手術(胆嚢摘除術、大腸摘出術、子宮全摘など)を受けた高齢患者における有害転帰発生リスクを評価する目的で行われた。

ワシントン州退院症例データベースが利用された。65歳以上の患者計101,318名が腹部手術を受けた。術後90日までの合併症発生率および死亡率を評価した。対象患者の平均年齢は74.4歳で、術式として多かったのは大腸切除術(31.2%)および胆嚢摘除術(30.4%)であった。大半(75.4%)が日帰り手術であった。主な基礎疾患は、COPD(12.2%)、糖尿病(8.9%)そして鬱血性心不全(6.5%)であった。

合併症の90日間累積発生頻度は17.3%であり、90日死亡率は5.4%であった。人口統計学的特性、患者背景、術式、癌の有無および入院理由(予定か緊急か)などに関わらず、同等の結果が認められた。

解説
腹部手術を受けた65歳以上の高齢患者では、65歳未満の患者と比べ、術後90日までの死亡を含む術後合併症の発生リスクが高い。対象患者(65歳から90歳超まで)の年齢区分ごとの分析では、年齢が進むほど合併症発生率および死亡率が上昇する傾向があることが分かった。腹部手術が考慮される高齢患者に手術リスクを説明する際に有用なデータが、この研究で明らかになった。

Nutritional risk is a clinical predictor of postoperative mortality and morbidity in surgery for colorectal cancer.

Br J Surg. 2010 Jan;97(1):92-7.

消化管手術後の入院患者のうち50%までが低栄養状態に陥ると言われている。低栄養は、術後合併症発生の危険性増大、入院期間の延長、医療費高騰および死亡率上昇を招く。

スイスの研究グループが行ったこの前向き研究では、入院時に栄養状態を判定することによって、結腸直腸予定手術後の死亡もしくは合併症の発生を予測できるか否かの検討が行われた。平均年齢65歳の186名について、臨床因子、Reillyの栄養危険度判定スコア、栄養危険度スクリーニングスコア(2002)、腫瘍の大きさおよび術式が記録された。

基礎疾患として多かったのは、心血管系疾患、代謝性疾患および呼吸器疾患であった。全体の入院期間中央値は20.2日、平均体重減少量は2.97kgであった。栄養危険度は術後合併症の独立した予測因子であることが明らかになった。

解説
術前の低栄養は、結腸直腸手術後の転帰を予測する因子である。しかし、栄養危険度を判定する方式によって予測精度は異なる。栄養不良が特定の合併症(例;創感染または創離解)の発生原因であるのかどうかを明らかにするには、さらに研究を行う必要がある。補充療法を行って栄養状態を改善することによって、合併症が減るか否かは不明である。

A Sensitive Cardiac Troponin T Assay in Stable Coronary Artery Disease

N Engl J Med. 2009 Dec 24;361(26):2538-47.

急性冠症候群が疑われる患者では、トロポニン値が高いと冠動脈虚血イベントを繰り返す可能性が高い。トロポニン値の上昇がわずかであっても、有害転帰の危険性は増大する。安定した冠動脈疾患のある患者の大半における血漿中心筋トロポニンT濃度は、一般に普及している検査法では検出可能レベル以下であるため、リスク分類に使用するには支障がある。

新しく開発された高感度分析法では、従来法における検出可能濃度の1/10の血漿中トロポニンT濃度でも測定することができる。表記の研究は、安定した冠動脈疾患があり左室機能が良好な患者3679名を対象に行われた大規模無作為化比較対照試験(Prevention of Events with Angiotensin Converting Enzyme Inhibition trial)のサブグループ解析にあたる。この大規模試験では、新しい高感度分析法によって心筋トロポニンT濃度の測定が行われた。追跡期間中央値5.2年における心血管系事故の発生頻度別に結果を解析した。

心筋トロポニンT濃度が検出限界(0.001mcg/L)以上であったのは3593名(97.7%)であり、健常者における測定値の99パーセンタイル値(0.0133mcg/L)以上であったのは407名(11.1%)であった。トロポニンT以外の独立予測因子について調整したところ、心筋トロポニンTが上昇している患者群では心血管系の原因による死亡および心不全の累積発生頻度が高いことが明らかになった。トロポニンT濃度と心筋梗塞発生頻度とのあいだには相関は認められなかった。

解説
安定した冠動脈疾患の患者における心筋トロポニンT濃度は、通常は検出限界以下である。高感度分析法によって測定した心筋トロポニンT濃度が(正常対照群と比べて)高い患者では、心血管系の原因による死亡や心不全に至ることが多い。トロポニンTのこのようなわずかな上昇が、周術期の心血管系合併症および死亡リスクの上昇と結びつくのか否かを明らかにするには、さらに研究を重ねて検証する必要がある。

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麻酔文献レビュー2010年5月① [anesthesiology]

Anesthesia Literature Review Perioperative Medicine

Anesthesiology 2010年5月号より

Can Aviation-Based Team Training Elicit Sustainable Behavioral Change?

Arch Surg. 2009;144(12):1133-1137.

人々が気持ちよく協同して働き過誤を減らすにはどうすればよいのか、という課題に対する航空業界の取り組みの一環に、人的資源管理(Crew Resource Management; ユナイテッド航空がNASAの協力を得て開発した危機管理法)がある。1977年に起こったジェット機二機の衝突事故という大惨事が契機となり、同様の事態が二度と発生しないようにこのような防止策が開発された。医療関連事業体の多くは、周術期の人的過誤を減らすためこの人的資源管理手法を採用している。本論文では、高次機能病院と医学部関連地域病院の二施設で多職種周術期プログラムを導入した成果が述べられている。このプログラムでは、チーム構築演習(チーム意識の涵養)、公開討論会およびビデオなどの方法で指導が行われた。

プログラムの一環として、術前チェックリストが導入された。このチェックリストに搭載されているのは確認を怠ると致命的となりうる項目(”killer item”)である。つまり、過誤を防止し、合併症を抑止するのに必要な項目ということである。このリストには、手術部位および術式、抗菌薬の投与が済んでいるか、深部静脈血栓症予防策としてどのような対策が講じられているか、などのチェック項目が含まれている。チェックリスト使用状況および受け入れ状況の調査が行われた。当初、外科医は抵抗を示したが、チェックリストの項目がすべて満たされないのに手術を行おうとする外科医に看護師は荷担しなくてよいとの通達が下された。遵守度と認容度は次第に上昇した。特に、抗菌薬の投与忘れや、重要な手術器具がない、といった過誤発生例が明るみに出るにつれ受け入れが進んだ。

人的資源管理プログラムを受講するうちに、関係者は過誤の報告を進んで発表するようになり、自分に足りないところを自覚するに至った。このようなプログラムを導入すれば、人々の行動を変えることは可能である。しかし、過誤を防ぎ合併症を減らすことができるという成果を示すには長い月日が必要であろう。

解説
手術室は航空機のコックピットと多くの点で似ている。チェックリストを活用することによって人的過誤が減る可能性がある点も共通している。各施設において、このようなチェックリストの利用を考慮し、医師以外の職種にもチェックリストの確認に参加するよう呼びかけるべきである。医師以外の職種も、周術期医療を担うチームの重要な一員であり、過誤を発見したり予防したりするのに必要な人材である。

Duration and magnitude of the postoperative risk of venous thromboembolism in middle aged women: prospective cohort study

BMJ 2009;339:b4583

術後数週間は静脈血栓塞栓症の危険性が高い。術式によって危険性の度合いは異なり、最も高いのは整形外科大手術および癌手術後である。静脈血栓塞栓症の発生リスクが高い状態が続く期間およびリスク増大の度合いを知るため、英国女性130万人を対象とした前向きコホート研究を行いデータを収集した(“Million Women Study”)。

静脈血栓塞栓症の既往があるか、または手術が複数回にわたり行われた症例は除外した。肺塞栓または深部静脈血栓症の主要診断、肺塞栓または深部静脈血栓症による入院および死亡のそれぞれについて調整後相対危険度および標準化罹患率を求めた。

対象患者(n=947,454)の平均年齢は56歳であり、大半(85%)が閉経後であった。追跡調査の平均期間は6.2年であった。肺塞栓で入院した患者は2487名で、1%未満であった(0.6%)。深部静脈血栓症と診断された患者は3529名で、やはり全体の1%未満であった。死亡時にはじめて深部静脈血栓症と診断されたのは270名であった。手術を受けていない患者と比較し、手術後6週間の期間に静脈血栓塞栓症で入院する患者の割合は、入院手術では70倍、日帰り手術では10倍にのぼった。術後7~12週間経過すると、それまでよりは静脈血栓塞栓症の危険性は低下するものの、依然として高止まりしていた。入院手術症例のうち相対危険度が最も高かったのは、THR/TKRおよび癌に対する手術であった(術後1-6週間の相対危険度はそれぞれ、220.6および91.6)

解説
この研究では100万名を超える患者を対象として術後静脈血栓塞栓症のリスクが検討された。その結果、英国の中年女性が入院手術を受けると、140名中1名が手術12週間後までに静脈血栓塞栓症を発症することが明らかになった。手術を受けてない同年代女性では、6200名中1名が静脈血栓塞栓症により入院するに過ぎない。術後静脈血栓塞栓症の予防策が充実してきているにも関わらず、中年女性では依然として術後静脈血栓塞栓症の発症リスクが高いことが分かった。

Erythropoiesis stimulating agent administration improves survival after severe traumatic brain injury: a matched case control study.

Ann Surg. 2010 Jan;251(1):1-4.

非外傷性頭蓋内出血、統合失調症および進行型多発性硬化症の患者を対象とした臨床研究で、赤血球造血刺激因子製剤(エリスロポエチン製剤、ESA;Erythropoiesis stimulating agent)に神経保護作用があることが明らかにされている。しかし、重症外傷性脳損傷症例におけるエリスロポエチン製剤の有効性については、in vitroの前臨床試験データを根拠に期待されているに過ぎない。この遡及的対症例対照研究は、エリスロポエチン製剤が持つ臨床的有効性の可能性を詳らかにする目的で行われた。

外科系ICUに収容された重症外傷性脳損傷患者(AISスコア3点以上)89名に対し、エリスロポエチン製剤が投与された。一例に対し、過去12年間に発生したエリスロポエチン製剤非投与重症外傷性脳損傷対照症例一または二例(全体で178症例)を設定した。

外科系ICUに入室した1651例のうち89名にエリスロポエチン製剤が投与された。基準時点における背景因子や合併症に関してはエリスロポエチン製剤使用群と非使用群のあいだに差はなかった。全入院期間およびICU入室期間はエリスロポエチン製剤使用群の方が有意に長かったが、死亡率はエリスロポエチン製剤の方が有意に低かった(7.9% vs 24.2%, p=0.001)。

解説
外傷性脳損傷動物モデルを用いた実験で、エリスロポエチン製剤を投与すると神経学的転帰が改善することが示されている。ここに示した遡及的症例対照研究では、エリスロポエチン製剤を投与すると重症外傷性脳損傷患者の生存率が上昇することが明らかになった。以上から、この結果を検証する無作為化比較対照試験が行われることが望まれる。
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グラム陰性菌による院内感染~治療③ [critical care]

Hospital-Acquired Infections Due to Gram-Negative Bacteria

NEJM 2010年5月13日号より

多剤耐性グラム陰性菌感染症に対して現在行われている他の治療法には、βラクタム薬の長時間(3~4時間)投与もしくは持続投与とVAPに対する抗菌薬エアロゾル療法がある。多剤耐性菌によって引き起こされる感染にはこうした治療法が特に有効である(Table 5)。例えば、入院患者における薬力学および薬物動態データによれば、セフェピム、ピペラシリン/タゾバクタムおよびカルバペネム系薬といったβラクタム薬の投与時間を長くすると、殺菌作用が有意に増強する(セフェピムおよびピペラシリン/タゾバクタムの%T>MICは少なくとも50%、カルバペネム系薬の%T>MICは40%になる)。MICの高い(8~16mcg/mL)細菌では持続投与によって特に殺菌能が強化される。さらに、in vitro実験では持続投与を行うと耐性菌の出現が抑制されることが示されている。βラクタム薬長時間投与の臨床データはまだ少ない。いくつかの遡及的研究では転帰が改善されることが示されているが、前向き試験では一貫した結果は得られていない。トブラマイシン、アミカシンおよびコリスチンメタンスルホン酸ナトリウムの吸入薬は、全身毒性を減らし感染部位へ効率的に薬物が到達するようにする目的で使用されている。重症もしくは難治性肺炎や多剤耐性菌による肺炎に対しては、抗菌薬を全身投与するだけでなく、吸入も併用する治療法が一つの選択肢として考えられる(Table 5)。抗菌薬の吸入療法では気管支攣縮のような呼吸器系合併症の報告がある。投与前に気管支拡張薬を投与すれば気管支攣縮を防ぐことができるかもしれない。FDAは、コリスチンメタンスルホン酸ナトリウムの吸入薬を投与する際は、薬剤の準備ができ次第すぐに使用し、活性型コリスチンによる肺毒性発現の予防に努めるように、との注意を喚起している。抗菌薬吸入療法およびβラクタム薬の長時間投与については、臨床的有効性および安全性を明らかにするには、前向き試験の実施が必要である。特に、ブドウ糖非発酵グラム陰性菌に対するこれらの治療法の効果についての研究結果が待たれる。

Table 5 耐性グラム陰性菌による重症感染症(VAPおよび血流感染を含む)に対する推奨治療法

ESBL産生腸内細菌科細菌
メロペネム1-2gを8時間ごとに静脈内投与;イミペネム500mgを6時間ごとに静脈内投与;ドリペネム500mgを8時間ごとに静脈内投与または1時間もしくは4時間かけて投与

カルバペネマーゼ産生腸内細菌科細菌
コリスチン2.5~5.0mg/kg/dayを2~4分割して投与(コリスチンメタンスルホン酸ナトリウムであれば6.67~13.3mg/kg/dayに相当);チゲサイクリン初回は100mgを静脈内投与、以降は50mgを12時間おきに静脈内投与

カルバペネム耐性緑膿菌およびAcinetobacter baumannii

カルバペネム耐性緑膿菌
コリスチン(使用法はカルバペネマーゼ産生腸内細菌科細菌と同じ)

カルバペネム耐性Acinetobacter baumannii
コリスチン(カルバペネマーゼ産生腸内細菌科細菌に対する使用法と同じ);アンピシリン/スルバクタム 1日あたり~6gのスルバクタム投与量になるように静脈内投与;チゲサイクリン(カルバペネマーゼ産生腸内細菌科細菌に対する使用法と同じ。ただしこの投与量は血流感染の場合は当てはまらない。)

カルバペネム耐性菌に有効である可能性のある治療法

長時間投与 
メロペネム3時間かけて1~2g静脈内投与8時間ごと;ドリペネム4時間かけて500mg~1g静脈内投与8時間ごと;イミペネム3時間かけて1g静脈内投与8時間ごと

併用療法
上記薬剤に加え、リファンピシン、ミノサイクリン、ドキシサイクリンまたはアジスロマイシンを併用

カルバペネム耐性菌による肺炎
コリスチンメタンスルホン酸ナトリウム吸入薬100万~300万 IU/dayを分割投与(滅菌生食で希釈する)。通常のネブライザーを使用する。;アミノグリコシド系薬吸入

教訓 多剤耐性グラム陰性菌感染症に対して現在行われている代替治療法には、βラクタム薬の長時間(3~4時間)投与もしくは持続投与とVAPに対する抗菌薬エアロゾル療法があります。
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グラム陰性菌による院内感染~治療② [critical care]

Hospital-Acquired Infections Due to Gram-Negative Bacteria

NEJM 2010年5月13日号より

グラム陰性菌に対する抗菌薬として新しく認可された薬剤には、グリシルサイクリン系抗菌薬の静注用製剤であるチゲサイクリンおよびカルバペネム系抗菌薬の静注用製剤であるドリペネムがある。ドリペネムはメロペネムと類似の抗菌活性を持つ薬剤である。チゲサイクリンはミノサイクリン誘導体で、抗菌スペクトラムはミノサイクリンより広域である。皮膚、軟部組織および腹腔内の難治性感染に適応がある。ESBLやカルバペネマーゼを産する腸内細菌科細菌、アシネトバクター属およびStenotrophomonas maltophiliaなどの治療に難渋するグラム陰性菌に対して、チゲサイクリンがin vitroでは抗菌活性を発揮することが明らかにされている(緑膿菌およびプロテウス属の細菌はチゲサイクリンには自然耐性を示す)。しかし、以上のような多剤耐性菌のチゲサイクリンによる治療経験はまだあまり蓄積されていない。チゲサイクリンの尿中濃度は低いので、尿路感染症の治療には適していない。さらに、無作為化二重盲検試験でチゲサイクリンはVAPに対してはイミペネム/シラスタチンに劣るという結果が得られている。チゲサイクリンは投与後急速に血中から組織へ移行するので、通常の使用量(初回100mg、2回目以降50mgを12時間ごと)では最高血中濃度は低い(0.63mcg/mL)。したがって、MICが1mcg/mL以上の細菌による血流感染に対する有効性は低いので注意が必要である。

グラム陰性菌治療において抗菌薬の単剤使用と多剤併用のどちらが優れているかという問題をめぐっては、未だ議論百出の状態である。過去の研究やメタ分析の結果は評価が困難であるが、最近の新しいエビデンスはこの問題に明確な答えを示す兆しを見せている。経験的治療について言えば、多剤併用の方が起因菌として疑われる細菌に対して抗菌活性を持つ薬剤が投与される可能性が高い。多剤耐性菌の発生頻度が高い施設ではこの傾向が特に顕著にあらわれる。しかし、多剤併用の場合でも選択する抗菌薬は自院の感受性データに基づいて決定しなければならない。なぜなら、たとえばフルオロキノロンと第三世代セファロスポリンの交差耐性を持つ細菌が多く検出される場合には、抗菌薬の選択の仕方如何によって多剤併用の有効性が失われるからである。起因菌の感受性が判明しているのであれば、単剤使用と多剤併用とはどちらも同じような転帰(耐性菌出現率や感染再発率)をもたらす。ただし、緑膿菌に対するアミノグリコシド系薬の単剤投与は例外である。アミノグリコシド系薬以外の薬剤の単剤投与の方が、アミノグリコシド系薬単剤投与より有効性が高い。また、単剤使用が多剤併用より劣る可能性がある状況として、嚢胞性線維症の患者に対する単剤使用が挙げられる。したがって、グラム陰性菌による院内感染の重症例の経験的先行治療では各施設の状況に即した抗菌薬の多剤併用が推奨される。そして、感受性が判明した暁には単剤使用に切り替える(de-escalation)。従来、緑膿菌感染の重症例に対しては二剤併用が広く支持されてきたが、感受性のあるβラクタム剤を選択するのであれば単剤使用でも十分であることが明らかにされている。

教訓 グラム陰性菌による院内感染重症例の経験的先行治療では各施設の状況に即した抗菌薬の多剤併用が推奨されます。そして、感受性が判明した暁には単剤使用に切り替えます(de-escalation)。


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グラム陰性菌による院内感染~治療① [critical care]

Hospital-Acquired Infections Due to Gram-Negative Bacteria

NEJM 2010年5月13日号より

治療の選択肢

経験的先行投与に用いる抗菌薬に関する自院の薬剤感受性状況を知ることは死活的に重要である。院内感染に対する経験的先行治療についての推奨事項および薬剤耐性面無陰性菌による感染症の根本治療については、それぞれTable 4および5に示した。

ポリミキシン系薬(コリスチンおよびポリミキシンB)は既に姿を消した古い薬であったが、近年再び復活し使用されるようになり、注目を集めている。ポリミキシン系薬は1940年代後半に発見された。グラム陰性菌の細胞壁外膜の構成成分であるリポ多糖に対して作用する。ポリミキシン系薬に自然耐性を示す細菌は、セラチア、プロテウス、Stenotrophomonas maltophilia、Burkholderia cepaciaおよびフラボバクテリウムである。ポリミキシン系薬の使用が憂慮されるようになった原因は腎毒性であり、その後新しい抗菌薬が続々と出現し急速に姿を消した。しかし、カルバペネム耐性菌、特に緑膿菌、A. baumanniiおよびカルバペネマーゼ産生腸内細菌科細菌に対する重要な選択肢としてポリミキシン系薬が再び脚光を浴びている(Table 4)。ポリミキシン系薬の投与量の決定は依然難しい問題である。なぜなら、現代の我々が当たり前だと考えるような厳密な新薬開発過程をポリミキシン系薬は経たことがないからである。in vitro研究ではコリスチンの抗菌活性は最高血中濃度に依存することが示されているので、一日一回投与にすると最も有効性が得られると考えられる。しかし動物実験では、一日一回投与だとコリスチン耐性菌の選択、細菌の再増殖および毒性増大が認められることが明らかにされている。したがって、現時点では一日2~4回の分割投与が推奨される。

Table 4 院内感染を引き起こすグラム陰性菌に対して推奨される経験的先行治療
*経験的先行治療ではブドウ球菌もしくはレジオネラも想定して抗菌薬を選択しなければならない。本論文ではこれらの細菌への対応については記していない。また、本表では腎機能が正常な成人患者に対する投与量を示した。

院内肺炎(VAPおよび医療関連肺炎を含む)

肺炎発生前の入院期間5日未満(多剤耐性菌感染の危険因子がない場合)

以下のいずれか一つを選択:セフトリアキソン 1gを24時間ごとに静脈内投与; アンピシリン/スルバクタム3gを6時間ごとに静脈内投与;レボフロキサシン 750mgを24時間ごとに内服または静脈内投与;モキシフロキサシン 400mgを24時間ごとに内服または静脈内投与;エルタペネム 1gを24時間ごとに静脈内投与

肺炎発生前の入院期間5日以上または医療関連肺炎

以下の抗緑膿菌βラクタム薬のうち一つを選択:セフェピム2gを12時間ごとに静脈内投与;セフタジジム2gを8時間ごとに静脈内投与;ピペラシリン/タゾバクタム4.5gを6~8時間おきに静脈内投与;チカルシリン/クラブラン酸3.1gを6時間おきに静脈内投与;メロペネム1~2gを8時間ごとに静脈内投与;イミペネム500mgを6時間ごとに静脈内投与;ドリペネム500mgを8時間ごとに静脈内投与または1時間または4時間かけて投与;アズトレオナム1gを8時間ごとに静脈内投与(アズトレオナムはセフタジジム以外のβラクタム薬にアレルギーのある患者における代替薬。セフタジジムにアレルギーがある場合はアズトレオナムにも交差反応を示すことがある。)
上記に加え以下のいずれかのうち一つを選択:
シプロフロキサシン400mgを8~12時間ごとに静脈内投与;レボフロキサシン750mgを24時間ごとに静脈内投与;ゲンタマイシンまたはトブラマイシン5~7mg/kgを24時間ごとに静脈内投与;アミカシン15~20mg/kgを24時間ごとに静脈内投与

血流感染(医療関連感染を含む)

院内肺炎と同様

尿道カテーテル関連尿路感染

以下のいずれかのうち一つを選択:
セフェピム1gを12時間ごとに静脈内投与;セフタジジム1gを8時間ごとに静脈内投与;ピペラシリン/タゾバクタム3.75gを8時間ごとに静脈内投与;メロペネム500mgを8時間ごとに静脈内投与;イミペネム500mgを8時間ごとに静脈内投与;アズトレオナム500mgを8時間ごとに静脈内投与(アズトレオナムはセフタジジム以外のβラクタム薬にアレルギーのある患者における代替薬。セフタジジムにアレルギーがある場合はアズトレオナムにも交差反応を示すことがある。);シプロフロキサシン400mgを12時間ごとに内服または静脈内投与;ゲンタマイシン5~7mg/kgを24時間ごとに静脈内投与

教訓 ポリミキシンは一度は姿を消した薬ですが、最近再び脚光を浴びています。ポリミキシンはグラム陰性菌の細胞壁外膜の構成成分であるLPSに対して作用します。セラチア、プロテウス、Stenotrophomonas maltophilia、Burkholderia cepaciaおよびフラボバクテリウムはポリミキシンに対する自然耐性を持っています。ポリミキシンには腎毒性があります。
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麻酔科学会(福岡) [misc]

明日から麻酔科学会ですね。私は、銃後の守りを担う留守番隊の任務を仰せつかりました。先週は二回にわたり深夜にAAA破裂の麻酔に緊急出動したので、学会期間中は優雅に過ごせるのではないかと期待しています。

先日、ウェブ上をうろついていたところ、素晴らしい動画をみつけました。身の引き締まる思いがする素敵な動画です。三島由紀夫は、伝えるべきものを豊饒に持ち合わせている上に卓抜なる英語力をも兼ね備えている希有な作家ですね。sudden explosionを今風に「キレる」と理解しました。小市民生活の私が文字上でしか触れることのない残忍とか野卑といった英単語が三島によって音にされると、新鮮な衝撃です。しかし、こういう直球で真面目な三島もよいのですが、文学的素養を涵養する余地大いにありの私は彼のポップな一面が垣間見える「レター教室」がお気に入りです。

それでは、明日と明後日はお休みします。ごきげんよう。


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グラム陰性菌による院内感染~尿路感染 [critical care]

Hospital-Acquired Infections Due to Gram-Negative Bacteria

NEJM 2010年5月13日号より

尿路感染症

院内尿路感染の起因菌として最も多いのはグラム陰性菌である。ほぼ全例が尿道カテーテル留置症例である。尿道カテーテル留置第2日以降、一日経過するごとに細菌尿発生リスクが5~10%ずつ上昇する。細菌尿が発生しても大半の症例では無症状であり、最も有効な対策は抗菌薬投与ではなくカテーテル抜去である。泌尿器科手術や人工物挿入が予定されている患者では、稀ではあるが無症状の細菌尿から局所および全身合併症に発展することがあるため、抗菌薬の投与を開始すべきである。免疫抑制患者でも同様である。尿道カテーテル関連尿路感染症の合併症としてよく知られているものに血流感染があるが、発生頻度は低い。

米国の最新データでは、尿路感染症の起因菌のうち大腸菌が最多であり、以下多い順に緑膿菌、クレブシエラ属、エンテロバクター属、A. baumanniと続く。大腸菌は、アドヘシン(細胞への付着を媒介する微生物分子)、フィムブリエ(線毛;特殊な付着性小器官)、バイオフィルムといった様々な特殊機構を利用し、宿主防御を障害することによって尿路に感染する。キノロン系薬および広域スペクトラムセファロスポリン系薬は尿路感染症の第一選択薬として用いられることが多いため、これらの抗菌薬に対する耐性菌の出現は大きな問題である。従来、米国を含め、SHV型およびTEM型のESBLs産生菌が院内感染起因菌の多くを占めている。しかし、世界中でESBLs産生菌の様態が変わりつつあり、CTX-M型ESBLs産生菌が増えている。その中でも特にCTX-M-15型ESBL産生菌が拡大している。尿路感染を起こすST131系列の大腸菌はCTX-M-15型βラクタマーゼ産生するものが多い。ESBL遺伝子を伝播するプラスミドには、フルオロキノロン系薬に対する耐性を決定する因子も一緒に伝播するという困った性質がある。院内尿路感染症による合併症を減らし薬剤耐性グラム陰性菌の蔓延を防ぐには、エビデンスに準拠した感染予防策の遵守が強く求められる(Table 3)。抗菌薬含浸または銀被覆尿道カテーテルの使用については、データが十分に蓄積されていない現状では推奨できない。

Table 3 いろいろな院内感染の予防ガイドライン

カテーテル関連尿路感染症

尿道カテーテル管理手順を文書化し実行する。この文書にはカテーテル挿入時のガイドラインについても記載する。
尿道カテーテルは必要な場合に限って挿入する。適応がなくなれば抜去する。
尿道カテーテル以外の方法による排尿管理を考慮する。コンドーム型カテーテルを使用したり、尿道カテーテルの挿入-抜去を必要に応じて繰り返したりする方法を状況に応じて選択する。
無菌持続閉鎖式蓄尿バッグを用いる。
尿道カテーテル洗浄が必要な場合を除き、尿道カテーテルと蓄尿バッグ付属チューブの接続を外さない。
尿流出が閉塞しないようにする。
蓄尿バッグは定期的に空にする。蓄尿バッグ内の尿を回収するための容器は患者一人ずつ別のものを用いる。蓄尿バッグの栓が尿回収容器に触れないように注意する。
外尿道口の部分を抗菌薬溶液で清拭する必要はない。通常の清拭で十分である。
銀被覆または抗菌性カテーテルはルーチーンで使用してはならない。
尿道カテーテル留置患者では症状がなければ細菌尿のスクリーニング検査を行わない。
可能な限り尿道カテーテルの洗浄を避ける。
尿路感染症の予防を目的とした抗菌薬全身投与は行わない。

教訓 尿路感染症の起因菌は多い順に、大腸菌、緑膿菌、クレブシエラ属、エンテロバクター属、A. baumanniです。尿道カテーテルを留置すると、一日経過するごとに細菌尿発生リスクが5~10%ずつ上昇します。
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