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仕事納め [misc]

常春の職場ICU/ORで過ごしていると、厳しい寒気も心地よく感じます。スタッドレスタイヤを新調し、スキーに出かける準備は万端です。冬は私の好きな季節です。

今年も一年、皆で力を合わせ諸事万事つつがなく切り抜けることができました。これも天佑のたまものです。受けた恵みを数十倍にして天にお返しする意気込みで、また新たな一年も過ごそうと思います。

今日から当ブログは、しばらく冬休みにします。皆さん、清々しい新年をお迎えください。

それでは、ごきげんよう。

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外傷と第Ⅶ因子~考察 [critical care]

Results of the CONTROL Trial: Efficacy and Safety of Recombinant Activated Factor VII in the Management of Refractory Traumatic Hemorrhage

J Trauma 2010年9月号より

考察

CONTROL試験は予定より早期に中止された。したがって、主要エンドポイントについては検出力が不足しているため、得られた結果の解釈について本項で論ずることにする。それはともかく、外傷に関連する大規模無作為化試験は極めて少数しか存在しない。したがって、この研究から学ぶべきことはたくさんある。他の新しい治療法と同じく、rFⅦaの評価における重要な論点は以下の三つに集約される:一、期待通りの効果があるのか?二、安全か?三、結局、患者に有用なのか?

出血量と血液製剤の使用量を減らす方策を考えると、凝固促進作用のある物質が真っ先に思い浮かぶ。本研究では出血を呈する外傷患者にrFⅦaを投与すると血液製剤の使用量が減少することが明らかになった。治験実施計画に適合した患者のみを対象とした外傷患者対象のrFⅦaに関する前向き研究が、過去に行われている。その研究でも同じような結果が得られた。しかし本研究では実施計画から逸脱した患者も対象に含めるITT解析を行い、外傷患者においてrFⅦaが止血作用を発揮することを明快に示したと言える。血液製剤使用量の低減幅は取るに足らないほど少ないと論難する意見もあろうが、重症疾患においては血液製剤の使用量をわずかであっても減らすことが重要であるという報告もある。

本研究の二つ目の重要な目的は安全性の評価である。血液製剤使用量低下効果はrFⅦa投与量が増えるほど大きくなると考えられるため、起こりうるリスクを明らかにすることは大変重要である。重症外傷後は血栓性合併症の発生頻度が高く、凝固能を亢進させる治療は血栓性合併症のリスクを増大させるおそれがある。さらに、比較対照試験ではない研究ではrFⅦaを投与すると血栓性合併症の発生数が増加する可能性が示されている。したがって、外傷患者を対象とした二編の大規模無作為化比較対照試験で(本研究とBoffardらが行った試験;二つ合わせて対象患者数は837名)、安全性評価については検出力が不足していたとはいえ、偽薬群と比べrFⅦa群において血栓性合併症の増加が認められなかったのは非常に重要な点である。本研究ではrFⅦaを使用すると血液製剤使用量が減少し、しかも合併症は増加しないことが確認されたので、外傷患者の中でもrFⅦaの治療効果が最大限得られる特異的な集団を明らかにすべく研究をさらに重ねることが望まれよう。

本研究の三つ目の重要な目的は、rFⅦaの効果と副作用をすべて考え合わせて解析してみて転帰が改善するかどうかを評価することである。本研究の標本数では、死亡抑止効果は認められず、多臓器不全の発生頻度が低下する傾向があることが分かるにとどまった(p=0.06)。外傷症例はばらつきがおおきいため、生存率の向上を検証するのは元来困難である。しかし本研究の場合、当初予測したよりも対象患者全体の死亡率が低かったため検出力不足になってしまったという問題がある。とはいえ、このCONTROL試験は今までに行われた外傷患者対象の前向き試験としては最も大がかりなものの一つであり、予測よりも死亡率が低かったという事実自体に重みがある。先行する前向き研究のデータおよびレジストリデータを基に、偽薬投与群の死亡率をおよそ30%と見積もった。だから、死亡率がこの半分以下であったことは極めて意外であった(Table 2)。理由は二つ考えられる。第一に、登録基準もしくは除外基準が不適切であり予測よりもリスクの低い患者集団を登録してしまった可能性がある。本研究では4単位から8単位の赤血球製剤を登録したにもかかわらず、その後大量輸血が行われたのは、rFⅦa投与症例に限ると貫通外傷ではわずか30%、鈍的外傷では50%にとどまった(Table 2)。大量輸血が行われる症例こそ、止血を図る治療法からより多くの恩恵を受けると考えられるため、本研究の対象患者において大量輸血が実際に行われた患者が多くなかったのは遺憾なことである。

二つ目の理由として考えられるのは、「最新最良の診療」プロトコルを適用しその遵守状況を監視したことによって治療の質が向上し死亡率が低下した可能性があることである。我々が診療プロトコルを作成し適用したのは、各参加施設内および参加施設間の診療内容のばらつきによる臨床転帰のばらつきを最小限に抑えることが最大の目的であった。しかし、このプロトコルでは複数科の専門家による積極的な「ダメージコントロール」止血治療、エビデンスに準拠した人工呼吸管理およびエビデンスに準拠した血液製剤の使用法が義務づけられている(補遺参照)。このいずれもが、本研究で評価対象となった転帰を相加的に改善すると考えられる。さらに、各参加施設のプロトコル遵守状況は絶えず監視され直ちにフィードバックされた。したがって、CONTROL試験は早期に中止され検出力が不足してしまったとはいうものの、我々が作成したエビデンス準拠プロトコルによって出血患者の生存率が大きく改善することが示されたのではないかと考えられる。

以上から、我々は現行の最新最良の方法を組み合わせた診療が外傷患者の生存率向上に寄与することを確信し、一方で、何か一つの薬の投与によって外傷患者の生存率が上昇するとは考え難いという結論に達した。進歩は弛まず続き、それほど決定的ではない転帰のすこしずつの改善がいくつも集合することによって、死亡率や生存率などの決定的な転帰の改善が得られるのである。rFⅦaに止血作用があることは明らかなので、rFⅦaの投与によって顕著な効果が得られる患者群を明らかにする努力は今後も続けるべきである。ただしその場合には、血栓形成を促進する治療法のリスクを常に注意深く警戒し、大血管の損傷が疑われる場合には出血源の直接的制御が出血制御の骨法であることを絶対に忘れてはならない。

教訓 この研究は、治療プロトコルを厳格に適用したため、予測したより死亡率が大幅に低下してしまい、そのせいで早期に中止されました。外傷患者の出血は、何かミラクルな薬でなんとかなるものではありません。CONTROL試験ではrFⅦaの決定的効果は示すことができませんでしたが、エビデンスに基づいた適切な治療法を組み合わせて行うことによって外傷患者の転帰が改善するということが確認されました。
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外傷と第Ⅶ因子~結果② [critical care]

Results of the CONTROL Trial: Efficacy and Safety of Recombinant Activated Factor VII in the Management of Refractory Traumatic Hemorrhage

J Trauma 2010年9月号より

鈍的外傷群

鈍的外傷症例においては、rFⅦa群と偽薬群とのあいだに30日後死亡率の有意差は認められなかった(11.0% vs 10.7%; オッズ比0.97; 95%CI 0.53-1.80, p=0.93)。30日後重症合併症発生率についても同様であった(8.7% vs 9.5%, p=0.75)(Table 2)。第30日における人工呼吸/腎代替療法非実施日数は両群同等であった(rFⅦa群17.2日、偽薬群16.4日)(Table 2)。多臓器不全発生率はrFⅦa群(45%)の方が偽薬群(53%)より低い傾向が認められた(p=0.06)。

主な二次エンドポイントは血液製剤の使用量に関連するものである。鈍的外傷のrFⅦa群は、赤血球製剤、FFPおよび同種輸血合計単位数が有意に少なかった(Table 3)。割り当て薬剤投与から24時間後までのrFⅦa群と偽薬群の輸血単位数は、赤血球製剤が6.9単位vs 8.1単位(p=0.04)、FFPが4.7単位vs 6.9単位、同種輸血合計単位数が17.1単位vs 20.7単位(p=0.03)であった。投与から48時間後までの結果も同様であり、rFⅦa群の方が偽薬群よりも同種輸血合計単位数が有意に少なかった(19.0単位vs 23.5単位, p=0.04)。血小板製剤、フィブリノゲン濃縮製剤およびクリオプレシピテートの使用量については有意差は認められなかった。

鈍的外傷症例を対象とした安全性評価では、rFⅦaと偽薬は同等の結果を示した。担当医によって報告された高度有害事象および予め設定した特に憂慮すべき有害事象(血栓性合併症など)についても有意差は認められなかった(Table 4)。予想に違わず、鈍的外傷後の高度有害事象の合計発生数は多数にのぼり、多くの患者において複数の高度有害事象が発生した:第90日までに、rFⅦa群147名(65.6%)に348件の高度有害事象が発生し、偽薬群177名(70.8%)に390件の高度有害事象が発生した(p=0.23)。第90日までに発生した血栓性有害事象は、rFⅦa群36名(16.1%)45件、偽薬群33名(13.2%)35件であった(p=0.38)。rFⅦa群においては動脈血栓症16件、静脈血栓症29件、偽薬群においては動脈血栓症11件、静脈血栓症24件が発生した(Table 4)。鈍的外傷と貫通外傷をあわせた事後解析では、偽薬群の方がrFⅦa群よりARDS発生数が有意に多かった(p=0.022)。

貫通外傷群

鈍的外傷群と比べ貫通外傷群の方が年齢層が若く、男性が多く、ISSが低かった。貫通外傷症例では、rFⅦa群の方がやや年かさだった(34歳vs 29歳)。それ以外の点、特に出血量やショックの有無についてはrFⅦa群と偽薬群は同等であった(Table 1)。ITT解析において観察された死亡率は、rFⅦa群18.2%、偽薬群13.2%であった。有意差はなかった(p=0.40)(Table 2)。重症合併症発生率はrFⅦa群、偽薬群ともに低かった(2.3% vs 0.0%, p=1.00)。

鈍的外傷群と同様に貫通外傷群でも、rFⅦa投与による輸血量低減効果が認められた。投与24時間後および48時間後までの血液製剤使用単位数はいずれもrFⅦa群の方が少ない傾向が認められたが、標本数が少なかったため有意差が得られた項目は少なかった(Table 3)。割り当て薬投与から24時間後までのFFP使用量についてはrFⅦa群の方が有意に少なく、rFⅦa群3.8単位に対し偽薬群は5.7単位であった(p=0.04)。48時間後までのFFP使用量はそれぞれ4.0単位、6.5単位であった(p=0.02)。

貫通外傷症例を対象とした安全性評価の全体的な結果は、rFⅦaと偽薬でほぼ同等であった。担当医によって報告された高度有害事象および血栓性有害事象については、静脈血栓症が偽薬群で有意に多かった(p=0.04)以外は、有意差は認められなかった(Table 4)。報告された高度有害事象の件数は、rFⅦa群18名(39.1%)に35件、偽薬群20名(50.0%)に44件であった。第90日までに血栓性有害事象が発生したのはrFⅦa群が2名のみ(4.3%)であったのに対し、偽薬群では4名(10.0%)であった(p=0.41)。

教訓 鈍的外傷症例においては、rFⅦa群と偽薬群とのあいだに30日後死亡率(11.0% vs 10.7%)、30日後重症合併症発生率、第30日における人工呼吸/腎代替療法非実施日数の有意差は認められませんでした。多臓器不全発生率はrFⅦa群(45%)の方が偽薬群(53%)より低い傾向が認められました(p=0.06)。
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外傷と第Ⅶ因子~結果① [critical care]

Results of the CONTROL Trial: Efficacy and Safety of Recombinant Activated Factor VII in the Management of Refractory Traumatic Hemorrhage

J Trauma 2010年9月号より

結果

中間解析で得た鈍的外傷患者447名の死亡率は、当初予測したよりも低かった。偽薬に対するrFⅦaの優越性を示す際の検出力は11.2%であった(当初設定した閾値は50%であった)。このため、鈍的外傷患者における主要エンドポイントについての結果を得ても無駄である可能性が高いと考え、試験をこの時点で中止した。

対象患者と患者特性

総計573名(鈍的外傷481名、貫通外傷92名)が登録され無作為化割り当ての対象となった。割り当て薬剤は560名(鈍的外傷474名、貫通外傷86名)に投与された(Fig.2)。無作為化割り当ての対象となった患者のうち10名(鈍的外傷5名、貫通外傷5名)は、割り当て薬剤が到着する前に、試験対象としての適格性がないことが判明し除外された。三名(鈍的外傷2名、貫通外傷1名)は割り当て薬剤が到着する前に死亡した。鈍的外傷患者のうち無作為化割り当ての結果rFⅦaを投与された6名は、同意取得に問題があったためITT解析の対象から除外した。鈍的外傷症例ではrFⅦa群221名と偽薬群247名、貫通外傷症例ではrFⅦa群46名と偽薬群40名がITT解析の対象となった。鈍的外傷患者で割り当て薬剤を投与された474名のうち461名について、第90日までの調査を行うことができた(rFⅦa群219名、偽薬群242名)。貫通外傷患者で割り当て薬剤を投与された86名のうち80名について、第90日までの調査を行うことができた(rFⅦa群42名、偽薬群38名)。安全性評価の対象となったのは、鈍的外傷ではrFⅦa群224名、偽薬群250名、貫通外傷ではrFⅦa群46名、偽薬群40名であった。治療ガイドラインの遵守状況が不良であることを理由に登録から外した症例は皆無であった。研究参加施設および研究参加国ごとの被験者の分布は、他の臨床試験で一般的に見られるようなパターンであった。

当初予測したとおり、対象患者の年齢層は若く、大半が男性であった。鈍的外傷、貫通外傷ともに両群の患者基本特性は同等であった(Table 1)。基準時点におけるISS、GCS、血圧、ヘモグロビン濃度、アシドーシスおよび凝固能の指標についても有意差は認められなかった。登録に先立つ赤血球製剤の平均投与単位数は、鈍的外傷症例では両群とも5.6単位、貫通外傷症例ではrFⅦa群5.5単位、偽薬群が5.4単位であった。

教訓 当初予測した死亡率よりも、実際の死亡率が大幅に低かったためこの研究は早期に中止されました。そのため検出力が低いという問題が発生しました。中止までに集積された患者数は計573名です。

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外傷と第Ⅶ因子~方法 [critical care]

Results of the CONTROL Trial: Efficacy and Safety of Recombinant Activated Factor VII in the Management of Refractory Traumatic Hemorrhage

J Trauma 2010年9月号より

方法

設計

CONTROL試験(NCT00184548)は2005年8月から2008年9月にかけて行われた多施設前向き無作為化二重盲検偽薬対照比較試験である(26ヶ国150ヶ所の病院が参加)。Figure 1に研究設計の概略を示した。詳しくは別の文献において発表済みである。外傷を負い、赤血球製剤を4単位以上8単位未満投与された時点で活動性の出血を呈する患者を対象とし、rFⅦaの効果と安全性を評価すべく設計された。患者を半数ずつ2組に無作為化割り当てし、一方にはrFⅦa静注し(初回200mcg/kg、初回投与1時間後および3時間後に100mcg/kg)、もう一方には偽薬を投与した。偽薬もrFⅦaも凍結乾燥粉末として用意され、投与前に無菌蒸留水で溶解した。偽薬の成分は、塩化カルシウム、塩化ナトリウム、グリシルグリセリン、マンニトールおよびポリソルベート80である。割り当て薬剤(rFⅦaまたは偽薬)は本研究の後援企業が提供し、患者一人につき一つずつ割り振られた番号が記された箱に入れて、研究に参加した各病院へ届けられた。コンピュータによるブロック無作為化を行い、ブロック一つ一つを各参加施設に割り当てた。各参加施設は、後援企業が用意したシステムを用いて無作為化割り当ての結果をインターネットまたは電話で確認した。データ管理の責任は後援企業が負った。データは症例報告用紙に記録し、研究監督者および各施設の研究関係者の確認後、Novo Nordiskのデータ管理担当者がNovo Nordisk臨床データベースに登録した。

対象患者

18歳から70歳の鈍的または貫通外傷後、赤血球製剤を4単位投与し、止血を図るための標準的な治療の実施にもかかわらず体幹もしくは下肢近位からの活動性出血が続く患者を本研究の登録候補とした。活動性出血と判断する条件は、低血圧の持続(収縮期血圧90mmHg以下)、アシドーシス(乳酸>6mmol/LまたはBE -5mEq/L以下)またはバイタルサインを維持するのに1L/hr以上の輸液を要する場合とした。瀕死、重症脳傷害(AIS 4点以上またはGCS 5点以下)、無作為化割り当ての時点で受傷後12時間以上が経過または病院到着から4時間以上経過の場合は除外した。

エンドポイントと安全性の評価

有効性に関する主要エンドポイントは2段階に分けて設定した。第一段階の主要エンドポイントは、鈍的外傷の全死因30日後死亡率における優越性とした。第一段階の主要エンドポイントに該当しない場合は、第二段階の暫定主要エンドポイントである死亡率および重大な合併症についての非劣性を適用した。第30日時点における肺もしくは腎機能障害を重大な合併症とした。予め設定した二次エンドポイントは、割り当て薬剤投与24時間後および48時間後における赤血球製剤、新鮮凍結血漿(FFP)、血小板、クリオプレシピテート、フィブリノゲン濃縮製剤および全ての同種血液製剤の投与単位数および赤血球製剤の大量投与(10単位以上)を要した患者数とした。その他のエンドポイントは、多臓器不全または単一臓器不全発症患者数、第30日までの生存日数のうち多臓器不全または一臓器不全のない日数、ICU非在室日数、退院日数、人工呼吸and/or腎代替療法非実施日数とした。AISスコアはCT所見をもとに算出した。外傷センターの外科指導医または脳神経外科指導医がCTを読影しその評価を行った。重症有害事象の評価は第90日まで実施した。対象事象は、血栓塞栓性合併症、DIC、死亡、敗血症または敗血症性ショック、多臓器不全、ALI/ARDSである。

患者管理と監視

施設ごとの治療方針のばらつきによって主要エンドポイントおよび二次エンドポイントに影響が及ぶのを防ぐため、エビデンスに準拠したガイドラインおよびプロトコル(補遺参照)の遵守を義務づけた。出血制御または創部洗浄を目的とする手術は当初24時間に限ってのみ実施することにした。解剖学的and/or機械的機能の修復を目的とする手術は血行動態が安定するまでは実施不可とした。このやり方は「ダメージコントロール」手術と称されている。状態が安定している患者に対しては、エビデンスに裏付けられた適応に当てはまる場合以外は血液製剤の投与を禁止した。一方、出血があり状態が不安定な患者に対しては、予測的な血液製剤の使用を躊躇することのないよう明記した。エビデンスに準拠した人工呼吸管理(離脱試験を毎日行うことなど)を実施することにした。本研究とは無関係なVanderbilt Coordinating Centerの専門医が以上の治療方針の実施様態を確かめ、割り当て群や治療ガイドラインの遵守状況を当該施設へ直ちにフィードバックした。Vanderbilt Coordinating Centerの調査によって是正が必要であると判断された施設に対しては再教育を行った。遵守状況が不良であれば再教育が行われ、場合によっては当該施設における試験は中止することにした。

教訓 鈍的または貫通外傷で4~8単位の赤血球製剤を投与された患者が対象になりました。主要評価項目は鈍的外傷の全死因30日後死亡率でした。

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外傷と第Ⅶ因子~はじめに [critical care]

Results of the CONTROL Trial: Efficacy and Safety of Recombinant Activated Factor VII in the Management of Refractory Traumatic Hemorrhage

J Trauma 2010年9月号より

一年間に500万人以上が外傷で死ぬ。米国では外傷による死者数は年間174000名にのぼり、およそ三分の一は出血死である。出血によってショックに陥り受傷後早期に死亡することもあれば、出血性ショックを契機に発生した臓器不全が死因となることもある。したがって、出血を迅速に制御することは外傷治療の一番の眼目である。

外傷による出血の制御には、手術や血管内治療が必要なことが多い。しかし、出血量および組織損傷が甚大な場合は、急性凝固能障害が起こり重症疾患や死亡の危険性が著しく高くなる。外傷による凝固能障害そのものによっても大量出血やショック死が起こりうるし、術野の妨げになり主要な出血部位の制御に手間取るという事態も考えられる。したがって、凝固能障害による出血によって、アシドーシス、低体温そして凝固能障害の一層の進行という「地獄のサイクル」が発動し患者が死亡するおそれがある。さらに、凝固能障害が発生すると、ショックの遷延や大量輸血による免疫能低下などにより、敗血症や臓器不全のリスクが増大する可能性がある。

外傷患者における凝固能障害についてはまだ十分に解明は進んでいないが、血液製剤を投与し凝固能検査の結果が「正常」に戻るようにすることが治療の主体である。だから、外傷後の凝固能障害による出血を減少させる薬剤があれば、出血の直接的な制御を図る際の重要な脇役となりうると考えられる。遺伝子組み換え活性化第Ⅶ因子(rFⅦa, NovoSeven, Novo Nordisk A/S, Bagsvaerd, Denmark)は、傷害や虚血のある部位の血管内皮上に発現する組織因子があると凝血塊の形成を促すという生理学的作用を持つ。また、活性化血小板に直接結合し、トロンビンバーストを増強し安定した止血栓の形成を促すという薬理学的作用もある。遺伝子組み換え活性化第Ⅶ因子の適応として認められているのは、インヒビターを持つ血友病患者に対する使用であるが、外傷患者における凝固能障害の管理の補助療法として効果があるというまことしやかな話が流布し、血友病患者以外にも広く使用されるようになってきている。外傷患者を対象とした大規模前向き第2相試験では、受傷の48時間後まで生存した患者においてはrFⅦaの投与が出血量減少につながり、血栓性合併症の増加は認められないという結果が得られている。これを受けて行われた第3相試験に当たるCONTROL試験は、重症外傷により危機的出血を呈する患者を対象としてrFⅦaの評価を行った。本試験では、出血による死亡、輸血量および臓器不全の抑止効果および安全性の検証を行った。

教訓 遺伝子組み換え活性化第Ⅶ因子(rFⅦa)は、傷害や虚血のある部位の血管内皮上に発現する組織因子があると凝血塊の形成を促します。また、活性化血小板に直接結合し、トロンビンバーストを増強し安定した止血栓の形成を促します。
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集中治療文献レビュー 2010年11月② [critical care]

Anesthesia Literature Review

Anesthesiology 2010年11月号より

Association between clinical examination and outcome after cardiac arrest. Resuscitation 2010;81:1128-32

心停止後の予後を判定する手法のうち神経学的臨床所見が重要視されているが、新しい関連データは取り入れられていない。心停止後の昏睡患者における従来の神経学的評価項目(対光反射、角膜反射および運動反応)と生存との相関を評価するため、連続症例のカルテを遡及的に調査した。さらに、本研究では低体温療法がこれらの神経学的評価項目に及ぼす影響についても調査した。

4年間272名の患者の、病院到着時、心停止24時間後および72時間後の神経学的所見(GCS)をカルテを用いて調査した。対象患者の平均年齢は61歳で、男性が過半を占め(57%)、院外心停止が多かった(59%)。全体では33%が生存し、転帰が良好であったのは20%であった。心停止24時間後または72時間後のGCS 運動スコアが3点未満であっても、生存退院し転帰が良好である症例もあった。低体温療法を行っても転帰と臨床所見の相関に変化は生じなかった。

解説
この遡及的研究では、院外心停止または院内心停止の24時間および72時間後の臨床所見が予後診断に役立つことが強調されている。本研究の知見から、心停止の予後診断スコアを構築する際に臨床所見が有用であると考えられる。

Effects of tranexamic acid on death, vascular occlusive events, and blood transfusion in trauma patients with significant haemorrhage (CRASH-2): a randomised, placebo-controlled trial. Lancet 2010;376:23-32

出血は外傷後の院内死亡の主因であり、また、多臓器不全の死因ともなり得る。化学的合成物質であるトラネキサム酸には線溶を阻害する作用があり、重度の血管損傷により過度の止血反応が生じた患者における出血量を低減することができる可能性がある。一編の体系的総説で予定手術患者におけるトラネキサム酸の有用性が示されているが、外傷患者における効能については不明である。

CRASH-2 (the Clinical Randomisation of an Antifibrinolytic in Significant Hemorrhage 2)試験は、重篤な出血を呈するか、または受傷後8時間以内で出血のリスクが大きいと判断される成人外傷患者を対象とした多施設偽薬比較対照試験である。患者にはトラネキサム酸(10,093名;初回投与は10分で1g、その後1gを8時間かけて投与)または偽薬(10,114名)が投与された。大多数が男性で(84%)、平均年齢は34歳であり、鈍的外傷症例が多かった(68%)。全死因死亡率は、トラネキサム酸群の方が有意に低かった(14.5% vs 16.0%; P=0.035)。出血関連死もトラネキサム酸群の方が有意に少なかった(4.9% vs 5.7%; P=0.0077)。多臓器不全、頭部外傷もまたは血管閉塞に起因する死亡については、二群間に差は認められなかった。

解説
この多施設無作為化偽薬比較対照試験では、トラネキサム酸群の方が大量出血を伴う外傷患者の28日後死亡率が低いことが明らかになった。この研究で得られた知見を踏まえ、受傷後8時間以内の外傷患者で出血が認められる場合は、トラネキサム酸の使用を考慮すべきである。

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集中治療文献レビュー 2010年11月① [critical care]

Anesthesia Literature Review

Anesthesiology 2010年11月号より

Delirium as a predictor of long-term cognitive impairment in survivors of critical illness. Crit Care Med 2010; 38:1513-20

重症疾患で人工呼吸管理を含む集中治療が奏功し生存した患者の多くに、深刻な認知機能障害が発生する。しかし、このような患者における認知機能障害発生に関わる特異的な危険因子や予測因子は、よく分かっていない。

この前向きコホート研究(Awakening and Breathing Controlled trialの一部)では、内科系ICUに入室し人工呼吸管理を12時間以上行われた患者を対象に、ICU入室1年後まで認知機能の変化を評価した。

対象となった126名のうち解析ができたのは77名(78%)に止まった。残りは死亡や追跡調査からの脱落によって解析ができなかった。年齢の中央値は61歳で、多くが重症敗血症/ARDS(51%)または心筋梗塞/鬱血性心不全(20%)によるICU入室例であった。ICU在室中に84%が譫妄を発症した。生存者全体で71%において1年後の時点で認知機能の低下が認められた。譫妄のあった期間は認知機能悪化の独立予測因子であったが、人工呼吸期間との相関は認められなかった。

解説
重症疾患罹患中に発生する急性認知機能障害(譫妄)がICU退室後数ヶ月もしくはそれ以上の期間続く慢性認知機能障害とに強い相関があることが分かった。明らかな原因があり治療によって改善される譫妄や(代謝性疾患、敗血症、薬物中毒、薬物離脱症候群など)、原因不明の譫妄も含めたあらゆる種別の譫妄について、同じような予後予測能があるのかどうかは不明である。譫妄を減らす手法によって慢性認知機能障害の発生率が低下するかどうかも分かっていない。

Association of Corticosteroid Dose and Route of Administration With Risk of Treatment Failure in Acute Exacerbation of Chronic Obstructive Pulmonary Disease. JAMA 2010;303:2359-67

米国のCOPD成人患者の6%以上において、副腎皮質ステロイドの全身投与が呼吸機能の改善、治療失敗リスクの低下および入院期間の短縮といった効果につながることが示されている。しかし、最良の投与経路および至適投与量については、はっきりしていない。

多施設遡及的薬剤疫学コホート研究を行い、少量ステロイド経口投与と高用量ステロイド経静脈投与のいずれかが行われた患者を対象に、転帰を比較した。Premier社Perspectiveデータベースに登録されている414か所の病院にCOPDのためICU以外の部門に入院した患者からデータを1年にわたって収集した。第2病日以降の人工呼吸管理開始、院内死亡率もしくは退院後30日以内のCOPD急性増悪による再入院から成る複合評価項目を治療の失敗と定義した。

対象患者(79985名)の年齢の中央値は69歳で、過半が女性であり(61%)、他の基礎疾患として多かった者は高血圧であった(60%)。大多数の患者(92%)に、高用量ステロイドの経静脈投与が行われていた。少量ステロイド経口投与が行われた患者群の方が白人が少なく、個人健康保険に加入していない者が多く、基礎疾患の数が多い傾向が認められた。全体では、高用量ステロイド経静脈投与群の1.4%、少量ステロイド経口投与1.0%が入院中に死亡した。治療失敗の複合評価項目に合致した患者の割合は同等であった(それぞれ10.9%、10.3%)。今回の解析では、副腎皮質ステロイド投与量と治療失敗リスクのあいだに有意な相関は認められなかった。

解説
この大規模研究では、ICU以外の部門に入院したCOPD増悪患者が対象となった。少量ステロイド経口投与が、高用量ステロイド経静脈投与と比べ転帰を悪化させるわけではなかった。この研究結果は、高用量ステロイド経静脈投与によるリスクを減らすのに有用であると考えられる。ただし、前向き臨床試験を行い、本研究で得られた知見を確認する必要がある。

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麻酔文献レビュー 2010年11月③ [anesthesiology]

Anesthesia Literature Review

Anesthesiology 2010年11月号より

Frailty as a Predictor of Surgical Outcomes in Older Patients. J Am Coll Durg 2010; 210:901-8

高齢者人口が増えるにしたがい、相当な年配の患者に手術が行われる機会が増えている。こうした患者では術後合併症のリスクが高いと考えられる。ひとたび術後合併症が発生すれば、死亡、要介護状態への移行、生活の質の低下など次から次へと問題が起こる可能性がある。しかし、高齢者の生理学的予備能についての術前リスク測定・評価法は標準化されていない。

手術を受ける高齢患者の手術リスクを予測するのに虚弱さの程度が役立ち、現行のリスク評価モデルの改善につながるという仮説を検証することを目的とした前向き研究を行った。術前評価のため受診した65歳以上の患者を対象に、一定のやり方による術前面接を行い、妥当性がすでに確認されている点数化方式(体重減少、筋力低下、易疲労性、身体活動低下、歩行速度低下)を用いて虚弱レベルを評価した。4-5点であれば虚弱、2-3点であればやや虚弱、0-1点では虚弱ではないと判定した。

対象となった594名のうち、虚弱が10.4%、やや虚弱が31.3%、虚弱ではないと判定されたのが58.3%を占めた。いずれの分類も白人が大多数であり(82.8%-83.9%)、虚弱と判定された患者の方がより高齢であった(平均年齢:虚弱76.3歳、やや虚弱74.5歳、虚弱ではない71.3歳)。虚弱レベルは、術後合併症(オッズ比2.54)、入院期間延長(オッズ比1.69)、高度介護施設や介護付き高齢者居住施設への退院後入所(オッズ比20.48)の独立した予測因子であることが分かった。

解説
入院患者では虚弱レベルが高いほど転帰が不良であることが明らかにされているが、周術期患者についてはその相関は不明である。この研究では虚弱であると術後合併症、入院期間および介護施設への退院後入所のリスクが増大することが分かった。この件については長期追跡調査および多施設研究の実施が望まれる。

Infection Control Assessment of Ambulatory Surgical Centers. JAMA 2010;303:2273-9

日帰り手術施設の数は50%も増加し、同施設で行われる手術・検査件数も600万件以上にのぼっている。しかし、日帰り手術施設における医療関連感染の集団発生や感染予防策の不徹底などが散見されることが知られるようになり、各施設で行われている医療の質に問題があるのではないかという懸念が広がっている。

基本的な感染予防策およびメディケア保健安全基準が日帰り手術施設でどれほど守られているかを調査するため、日帰り手術施設の査察で得られた抽出標本を用いメディケア/メディケイド事業局が感染予防策の実施状況について監査を行った。各州の調査当局へ通達したところ、7州が今回の調査への参加を表明した。このうち、地理的分布、州内の日帰り手術施設の数および調査に要する費用を考慮して選ばれた3州が調査対象となった。感染予防策を構成する以下の5つの柱についての評価を行った:手指衛生、安全な注射法および薬剤取り扱い、使用済み器具の取り扱い、清掃および血糖測定装置の取り扱い。

メリーランド州(32施設)、ノースキャロライナ州(16施設)およびオクラホマ州(16州)の日帰り手術施設で調査が行われた。調査対象施設数は各州におけるメディケア/メディケイド事業局認定日帰り施設のそれぞれ9.4%、21.1%および39.2%を占めた。大半の(67.6%)日帰り手術施設において5つの感染予防策のうち少なくとも一つを怠っていた。感染予防策5項目のうち3項目以上を怠っていた施設が17.6%を占めた。適切に実施されていなかった感染予防策として多かったものの内訳は、血糖測定装置の取り扱いの不備(46.3%)、使用済み器具の取り扱いの不備(28.4%)、一つのバイアルを複数の患者に使用(28.1%)であった。手術・検査実施件数や施設の種別と、不備のあった感染予防策の種類に相関は見られなかった。

解説
最近、日帰り手術施設における感染の集団発生が報告されている。この研究では、メリーランド州、ノースキャロライナ州およびオクラホマ州の特定の日帰り手術施設を対象に抜き打ち調査を行った。手指衛生、個人用感染防護具の使用、安全な注射、薬剤取り扱いおよび使用済み器具の取り扱いについて不備があることが明らかになった。

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麻酔文献レビュー 2010年11月② [anesthesiology]

Anesthesia Literature Review

Anesthesiology 2010年11月号より

Operative Blood Loss, Blood Transfusion, and 30-Day Mortality in Older Patients After Major Noncardiac Surgery. Ann Surg 2010; 252:11-7

輸血総量のおよそ半分は高齢者に投与されている。しかし、術中に輸血を開始する際の現行のヘマトクリット閾値については、全年齢層の集団についても高齢者のみの集団についても大規模臨床試験のデータによる裏付けは乏しい。

本研究では、Veterans Affairs National Surgical Quality Improvement Program(退役軍人局全国手術成績改善プログラム)のデータベースを用いて、心臓以外の大手術を受けた高齢患者の30日後死亡率に術中輸血が及ぼす影響を遡及的に調査した。1997年から2004年のあいだに非心臓手術を受けた65歳以上でヘマトクリット0.54未満の患者のデータを対象とした。

計239,286名の患者のうち、9.4%に対して術中に1単位以上の赤血球製剤が投与された。ほとんどが男性で(98%)、平均年齢は73歳であった。輸血が行われなかった患者群と比べ輸血が行われた患者群の方が、術前ヘマトクリットが低く、白人が少なく、基礎疾患(重度の全身疾患、心疾患、神経疾患、呼吸器疾患または血液疾患など)を有する頻度が高い傾向が認められた。術中に投与された赤血球製剤の平均量は2.6単位であった。輸血群と非輸血群の全死亡率には差は認められなかった(10.2% vs 16.7%)。傾向スコアで照合した対照群と比べると、輸血が行われた患者の方が30日後死亡率が高いという結果が得られたが、危険因子の調整を行って解析したところ、輸血が有益であった患者も存在した。

解説
輸血開始のヘマトクリット閾値については未だ決着はついていない。予想に違わず、術前ヘマトクリットが低い(24%未満)、術中出血量が多い(500mL以上)またはその両者に該当する高齢患者では、輸血が行われた場合の方が死亡率が低かった。しかし、術前ヘマトクリットが30%以上で出血量が500mL未満の患者では、輸血が行われると死亡率が上昇するという結果が得られた。このような条件に合致する患者では、輸血が有害である可能性があることが示唆される。

Postoperative pneumonia in elderly patients receiving acid suppressants: a retrospective cohort analysis. BMJ Clin Res Ed 2010;340:c2608

Acid suppressants and postoperative pneumonia. BMJ Clin Res Ed 2010;340:c2254

胃酸分泌抑制剤には好ましい効果がある一方で、胃および食道における細菌の増殖を促進するため誤嚥性肺炎の危険性を増大させるという一面がある。しかし、胃酸分泌抑制剤を投与した場合と投与しなかった場合について、術後肺炎の発生率を比較した大規模臨床試験は行われていない。

胃酸分泌抑制剤が予定手術患者における術後肺炎の増加につながるかどうかを検証することを目的に、カナダ保健情報研究所のデータベースを用いて全人口を対象とした遡及的コホート研究を行った。16年間に予定手術のため急性期病院へ入院した高齢患者についての連続データを解析した。

対象となった593,265名の患者のうち、多くが腹部(26%)または筋骨格系(22.7%)の手術を受けた。全体の21%が術前に胃酸分泌抑制剤を内服した。使用された製剤のうち多かったのはオメプラゾール(21%)とラニチジン(37%)であった。術前に胃酸分泌抑制剤を服用しなかった患者と比べ、服用した患者の術後肺炎発生頻度は約30%高かった。しかし、薬剤の種別、投与量、投与期間もしくは術式などの様々な要因について調整した後に解析したところ、胃酸分泌抑制剤使用による術後肺炎発生リスクの増大は確認されなかった。

解説
術後肺炎は予定手術後に発生する重篤な合併症の一つである。特に高齢者では深刻な問題となりうる。本研究は、予定手術を受ける高齢患者の術後肺炎発生率について、胃酸分泌抑制剤長期使用の有無によって比較した遡及的研究である。この研究では、胃酸分泌抑制剤による術後肺炎リスクの増大は認められなかった。しかし、本論文が掲載された雑誌の論説で指摘されているように、同様のいくつもの研究で相反する結果が報告されている。その多くが遡及的研究である。したがって、このテーマについて明確な答えを得るには前向き研究を行う必要がある。

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麻酔文献レビュー 2010年11月① [anesthesiology]

Anesthesia Literature Review

Anesthesiology 2010年11月号より

Adherence to Surgical Care Improvement Project Measures and the Association With Postoperative Infections. JAMA. 2010 Jun 23;303(24):2479-85

Surgical Care Improvement: Should Performance Measures Have Performance Measures. JAMA. 2010 Jun 23;303(24):2527-8

周術期管理向上プロジェクト(Surgical Care Improvement Project; SCIP)で策定された周術期感染および合併症発生率低減を目的とする様々な手法が、多くの施設で活用されている。しかし、この手法の有効性を検討した各施設からの報告によれば、結果にはばらつきがある。

本研究では2006年7月1日から2008年3月31日までにPremier社(患者の安全性の向上と医療コストの削減を両立させることを目的とし、2006年時点で1,700の病院および43,000の医療関連組織にサービス提供を実施する医療関連団体。提携を活かした団体購入およびサプライ・チェイン・マネジメント、保険およびリスクマネジメント、情報および業務改善ツールという3つのサービスを提供している。)のPerspectiveデータベースに収集された398ヶ所の病院のデータを用い、SCIPが策定した6つの感染予防策と術後感染発生率との関連を評価した。対象となった感染予防策は以下の通りである:執刀前一時間以内に抗菌薬の予防投与を行う、抗菌薬投与を手術終了24時間後までに終了する、心臓外科手術患者では術後毎朝6時に血糖値を測定する、適切な除毛、結腸直腸手術後は直後から体温保持を心がける。

405,720名のデータが得られた。このうち、62.4%が女性、68.7%が白人、45.7%がメディケイド患者であった。予定手術が過半(67.8%)を占めた。大半の手術が、都市部(81.0%)の非教育病院(68.3%)で行われた。術後感染が発生したとして申告されたのは3996例であった。術後感染発生例は、非発生例と比較し高齢で、少なくとも一つの基礎疾患を有する者が多く、緊急入院例が多かった。さらに、感染申告例の多寡は病院特性と有意な相関があり、北東部の都市に所在する大規模教育病院で多かった。全体的には、感染予防策の遵守率は2年のあいだに上昇した。だが、SCIPの感染予防策一つ一つの申告遵守率や抗菌薬の使用法の申告遵守率が上昇しても、感染リスクは低下しないという結果が得られた。実際、本研究の対象データが収集された2年のあいだに術後感染発生率はかえって上昇したのである。

解説
術中に抗菌薬を投与し記録に残すのは、今や麻酔科医の常識になっている。SCIP感染予防策のいずれについても、遵守率と感染発生率の相関は認められなかった。SCIPの提唱する方法を徹底しようとする努力が払われているが、遵守率は向上したものの、術後感染に関わる転帰は改善していない。

Postoperative handover: problems, pitfalls, and prevention of error. Ann Surg. 2010 Jul;252(1):171-6.

患者の引き継ぎを効率的に行うことは、医療の質や患者の転帰を向上させる重要なステップである。米国の医療過誤による損害請求事例の20%が患者引き継ぎに関わる過失であり、手術患者を対象とした最近の研究では、麻酔担当者の67%において重要情報の伝達に遺漏があることが報告されている。

術後の患者引き継ぎにおける情報伝達と意思疎通の問題を明らかにし、患者引き継ぎにおけるコミュニケーションの標準化につながる新しい手順を開発・評価するため、半構成的面接調査による2段階の質的研究を行った。データ収集段階では、経験年数の異なる外科医(7名)、麻酔科医・麻酔看護師(5名)および看護師(6名)を対象に、外科および患者安全を専門とする研究者が面接を行った。コード分類過程における単体分割と信頼性を保証するため、研究内容を関知しない複数の担当者がコード分類に携わった。評価段階では、デルファイ法を採用し50名の外科系専門医の意見を集約した。

面接調査によって、患者引き継ぎには不備があることが明らかになった。その理由は、引き継ぎという行為のプロセスが正式に決められておらず、統一もされず、人によってばらばらなやり方で行われているから、というものであった。面接対象者のほぼ全員が、患者引き継ぎの場面には外科医と麻酔科医(または麻酔看護師)が立ち会うべきであると答えた。手術室看護師が立ち会うべきと言う意見も過半を占めた。次に、28項目から成るチェックリストを構築し有効性を評価した。重要度スコアの平均が4.0を超えた21項目を術後引き継ぎ手順(案)に収載し以下のような見出しを付けた:患者情報、手術情報および麻酔情報。

解説
医療従事者間の情報伝達と意思疎通を適切に行うことは、患者ケアの向上に欠かせない。術後患者の引き継ぎは、多くの場合、標準的な方法が決められておらず統一されていない。引き継ぎの標準手順を導入しコミュニケーションを改善することは、医療過誤の防止に他の何よりも有効である可能性がある。本研究で開発された方法によって、ある麻酔科医から別の麻酔科医へと麻酔を引き継ぐ際の過誤が減るかどうかはさらに研究を重ねて検証する必要がある。

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