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敗血症性ショックの治療におけるドパミンとノルエピネフリンの比較~考察② [critical care]

Dopamine versus norepinephrine in the treatment of septic shock: A meta-analysis

Critical Care Medicine 2012年3月号より

今回の研究には以下に挙げるような複数の問題点がある。第一に、対象となった各試験で設定されたエンドポイントが、それぞれ異なっていることである。介入研究の多くでは、主要エンドポイントが血行動態の指標とされていた。こういった研究でも生存/死亡について触れられてはいるが、死亡率を主要エンドポイントとしていた二編の試験と比べると統計学的な意義が乏しいと言わざるを得ない。第二に、転帰が評価された時点も研究によって異なっていた。ただし先行するレビューと比べるとばらつきは小さかった。なるべくうまくまとめ上げて死亡率を評価するため、評価時点を28日後に統一した。対象となった研究のうち最も規模が大きい2編の無作為化試験で、28日後死亡率が主要エンドポイントに設定されていたからである。さらに、大半の観測研究でも28日後死亡率がエンドポイントの一つとして取り上げられていた。そんなわけで、介入研究の全対象患者中92%、観測研究の全対象患者中65%において28日後死亡率が示されていた。周知の通り、治療効果は時間経過と共に変化することがある。しかし、De Backerらの大規模無作為化研究ではそういうことが起こったことを示唆する結果は得られていない。彼らの研究では、ICU退室時(ICU滞在期間の中央値5日)の死亡に関する相対危険度は1.19(信頼区間0.98-1.44)、28日後では1.17(信頼区間0.97-1.42)、6ヶ月後1.06(信頼区間0.86-1.31)、1年後1.15(信頼区間0.91-1.46)であった(1年後まで追跡された患者は1036名)。28日後死亡率を主要エンドポイントとしていた2編の試験のみについてメタ分析を行った場合の点推定値は、介入試験すべてについての分析結果で得られた値と同等であった。第三の問題点は、ドパミンもしくはノルエピネフリンが28日後以降に及ぼす影響について評価することができなかったことである。ただ、昇圧薬の種類がそれほど長く影響を左右する可能性は低いと考えられる。昇圧薬使用期間の中央値はわずか2日であり、Kaplan-Meier曲線上で二群の差が現れるのは第5日からであるが、それ以降はその差が広がることも縮まることもなく平行線をたどる。そして、28日後以降の時点の死亡率について解析しても、28日後における解析の時と同等の結果が得られた。第四の問題点は、各研究の結果を統合するにあたり変量効果モデルを採用したことである。この方法は母数効果モデルと比べて小規模な試験の結果にもちゃんと重み付けができる。そのため本研究の解析対象となった研究のうち規模において抜きんでていた2編が偏重されるのを避けるには変量効果モデルを適用するとよいと考えた。どちらかというと、母数効果モデルでは変量効果モデルよりも信頼区間が狭くなる傾向があるため、帰無仮説が真であるという結果が得られやすい。それにもかかわらず、本研究における介入試験を対象とした解析ではドパミンを使用すると死亡リスクが有意に上昇するという結果が得られた。第五の問題点は、無作為化試験の中にはドパミンもしくはノルエピネフリンの投与時間が二、三時間にとどまるものがあり、そうした研究では割り当てられた昇圧薬の投与終了後に、どんな昇圧薬が用いられたかについては触れられていない(割り当て薬投与終了後に、他の薬剤が使用された可能性がある)。ドパミンまたはノルエピネフリンを短時間にせよ投与すれば転帰が左右されるかもしれないが、短時間しか投与していない試験を我々の解析対象として含めたことによって、ドパミンとノルエピネフリンによってもたらされる転帰の差が明らかになり難くなったかもしれない。だが、割り当てたドパミンまたはノルエピネフリンを出来る限り長時間投与するよう設定された試験3編についてのみ解析を行ってみたところ、先の2編を含めた解析した場合と同じ結果が得られた。最後に第六の問題点を挙げる。本研究では対象を敗血症性ショックの患者に絞ったが、解析した研究のうち2編では敗血症性ショック以外のショック患者も対象とされていた。つまり、ITT解析ではないことに留意しなければならない。ただし、敗血症性ショック以外のショック患者も含めて、対象患者すべてについて解析したところ、当初の解析と同様の結果が得られた(Supplemental Digital Content 1)。

本研究では観測研究も解析対象とした。しかし、対象となった研究には相当のばらつきがあったことからも分かる通り、観測研究では未知の交絡因子が結果に影響をおよぼしているおそれがあるかもしれない。さらに、ご案内の通り、Boulainらの研究以外ではドパミンとノルエピネフリンを純粋に比較したわけではなく、一つの昇圧薬(ドパミンが二編、ノルエピネフリンが一編)が、他の複数の昇圧薬と比較されたのである。とは言え、大半の試験では対照薬はノルエピネフリンかドパミンであり、それ以外の昇圧薬が用いられた症例は少なかった。以上のような問題点があることは重々承知しているが、観測研究の解析でも介入研究についての解析と同様のインパクトがある結果が示され、重要な情報を供することができた。このことから、介入研究の標本数をはじきだすのに観測研究を参考にすることは妥当であると考えられる。

Povoaらの研究は解析対象から除外せざるを得なかった。この研究は異質性の主因であったため、統計学的な理由で除外した。異質性の元凶となった理由の一つとして考えられるのは、他の研究とは異なる独特な方法で解析が行われていたことである。その方法とは、患者をドパミン投与群とドパミン非投与群(あわせて231名)、ノルエピネフリン投与群とノルエピネフリン非投与群(あわせて334名)に分類して解析を行うというものであり、解析されたのは計565名であった。しかし、対象となった敗血症性ショック患者は計458名であり、解析された患者数を下回っているため、一部の患者が二回解析されていることになる。ドパミン投与群とドパミン非投与群(またはノルエピネフリン投与群とノルエピネフリン非投与群)が比較されていればこの研究にも意義があったかもしれないが、そのようなデータは示されていない。この研究の対象患者の中から、ノルエピネフリンだけが投与された患者とドパミンだけが投与された患者を取り出して我々のメタ分析の対象とすることは不可能であった。そういうことをすれば、重大なバイアスが生ずるからである。ドパミンだけで低血圧から脱することができる患者と比べ、ドパミンを投与しても低血圧が続きノルエピネフリンを要する患者は死亡リスクが格段に高いことが分かっている。文字通りドパミンのみを投与された患者だけを取り出せば、重症度の低い症例だけを選んで解析してしまうことになる。実際、Povoaらの研究ではドパミンのみを投与された患者の28日後生存率が80%であったのに対し、ドパミンが投与された全患者(ドパミンのみの患者とドパミン+ノルエピネフリンの患者)の28日後生存率は59%であった。さらに、この試験は比較的大規模ではあるが本研究での解析における相対的な比重はわずか13%に過ぎない(その上、この試験の対象患者数が本当は458名であったのに565名を対象としているものとして計上しなければならなかったので13%という数字も過大評価していることになる)。つまり、インパクとなる試験を除外したことにはならないのである。

まとめ

今回の系統的解析によって、敗血症性ショックの患者においてはドパミンを用いるとノルエピネフリンを投与する場合と比べて不整脈の発生率が高く、死亡リスクが増大することが明らかになった。
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敗血症性ショックの治療におけるドパミンとノルエピネフリンの比較~考察① [critical care]

Dopamine versus norepinephrine in the treatment of septic shock: A meta-analysis

Critical Care Medicine 2012年3月号より

考察

敗血症性ショック患者にドパミンを投与すると、ノルエピネフリンを投与した場合と比べて死亡リスクが増大することが今回の系統的レビューで明らかになった。また、ドパミンを使用すると不整脈発生リスクも高くなることが分かった。しかも、De Backerらが行った研究のサブグループ解析では、心原性ショック患者においてノルエピネフリン群よりドパミン群の方が死亡リスクが高いという結果が示されているが、これは今回の我々が得た結果と一致している。

このメタ分析の結果はVasuらのレビューと合致するが、Havelらの研究とはやや異なる。点推定の集積値はいずれの研究も同じような傾向を示し、我々の研究とVasuらの研究(RR, 1.10; 信頼区間, 1.01-1.20)ではその値が有意であったが、Havelらの研究では有意ではなかった(RR, 1.05; 信頼区間, 0.97-1.15)。ここで注意しなければならないのは、我々の研究以外の二編のレビューでは敗血症性ショック以外のタイプのショック患者も対象として解析している点である。ドパミンによって死亡リスクが上昇する心原性ショック患者をも対象としたことが、Vasuらの研究結果に影響を及ぼした可能性がある。Havelらのレビューでも心原性ショック患者が対象として含まれたものの、De Backerらが行った研究の対象となった1036名の12ヶ月後転帰を解析対象データとしたに過ぎないという問題点がある。その上、HavelらはMathurらの研究で示された生存率の逆数をとって死亡率として扱っているが、こういうことをすると帰無仮説が真であるという結果が得られやすくなる。我々の研究では、敗血症性ショック患者に対象を絞り込み、各試験の主要転帰項目評価時点に留意した。そして、前述のように先行研究で示された一般的傾向を追認するとともに、敗血症性ショックという世の関心を集める疾患の患者群についての新規かつ重要な知見を示すことができた。

介入研究と観測研究を比較したところ、興味深い結果が得られた。観測研究を対象とした解析でドパミン群とノルエピネフリン群のあいだに転帰の差が認められなかったのは、各研究の結果と研究デザインにかなり大きな異質性があったことが主な要因である。大半の観測研究において、異なる色々な昇圧薬が代替対照薬とされていた。このため余計に研究間のばらつきが広がり、比較が難しくなった。ドパミンのみを投与された患者とノルエピネフリンのみを投与された患者とでは様相が異なる。なぜなら、ドパミンよりもノルエピネフリンの方が昇圧作用が強力で、ドパミンとは違って患者の示す反応が比較的一定していてばらつきが少ないからである。したがって、昇圧薬を一種類のみ投与された患者と、複数種類投与された患者とでは、もともとの重症度に差がある可能性があり、そうであるとすればドパミン群とノルエピネフリン群の比較は一層難しくなる。とは言え、多変量解析やマッチング解析を実施した複数の観測研究において、ノルエピネフリン群よりドパミン群の方が死亡リスクが高いという結果が得られている。異質性の主犯となった研究を除外して解析した場合、ドパミン投与による死亡リスク増大の程度が観測研究と介入研究とで同等であったことは注目に値する。

本研究の最大の強みは、主要データベースを用いて言語による制限をせずに網羅的文献検索を行ったため、該当研究を取りこぼした可能性が低いことである。臨床試験登録や2005年から2010年に開催された主要学会の抄録からは本研究の解析対象となる試験は見つからなかった。先行するVasuらおよびHavelらのメタ分析とは異なる単語を用いて検索を行ったが、結局彼らが対象としたのと同じ臨床試験に行き着いた。他にも、対象患者の合計数が比較的多かったことや、先行研究とは違って敗血症性ショック患者のデータのみを対象としたことが本研究の長所である。

教訓 先行研究では、心原性ショック患者においてドパミンはノルアドレナリンよりも死亡率を上昇させることが明らかにされていますが、敗血症性ショック患者でも同様の結果が得られました。
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敗血症性ショックの治療におけるドパミンとノルエピネフリンの比較~結果 [critical care]

Dopamine versus norepinephrine in the treatment of septic shock: A meta-analysis

Critical Care Medicine 2012年3月号より

結果

検索の結果498編の研究が見つかり、そのうち487編は除外され11編が分析対象として残った。このうち5編は観測研究で、6編は介入研究であった。

観測研究

ドパミンまたはノルエピネフリンを他の昇圧薬と比較検討した観測研究が、検索の結果5編同定された。対象となった敗血症患者は計1360名であった(Table 1)。このうち一編はノルエピネフリンと、その他の複数の昇圧薬(ドパミンを含む)を比較した研究であった。残り四編ではドパミン使用群とドパミン非使用群が比較された。一編は、ドパミン群とノルエピネフリン群とがマッチングされていた。

有意な異質性が研究間で認められた(p<0.001; I^2=79.3; 信頼区間50.9%-91.3%)。ノルエピネフリン群に対するドパミン群の死亡に関する集積相対危険度を算出したところ、有意差は認められなかった(RR 1.09; 信頼区間0.84-1.41; p=0.72)(Fig. 2)。漏斗プロット(funnel plot)解析(Supplemental Fig. 1)またはEgger検定(p=0.78)を行ったが、出版バイアスはないと考えられた。Povoaらが行った感度解析では、異質性の原因は一編の試験が原因であるという結果が得られている。この試験を除外したところ、確かに異質性は認められなくなり(p=0.22; I^2=32.3; 信頼区間0.0%-75.9%)、ノルエピネフリン群と比べドパミン群の方が死亡リスクが大きかった(RR 1.23; 信頼区間1.05-1.43; p<0.01)(Supplemental Fig. 2)。この一編を除外してEgger検定を行ったが、やはり出版バイアスは認められなかった(p=0.35)。いろいろな共変数についての情報が示されていた論文が少なかったため、メタ回帰分析を実施することはできなかった。

介入研究

介入研究は6編見つかり(Table2)、対象となった敗血症患者の合計は1408名であった。そのうち732名がドパミン群、676名がノルエピネフリン群に割り当てられた。最も規模の大きかった2編で、28日後死亡率が主要エンドポイントに設定されていた。血行動態の指標をエンドポイントとしていた残りの4編よりも、この2編の方がドパミンまたはノルエピネフリン投与期間が長かった。また、血行動態を評価した4編では、標本数があまり多くなかった。研究間に有意な異質性は認められなかった(p=0.77; I^2=0; 信頼区間0.0%-25%)。エピネフリンに対するドパミンの死亡に関する集積相対危険度は有意に高かった(RR 1.12; 信頼区間1.01-1.20; p=0.035)(Fig. 3)。ファネルプロット解析(Supplemental Fig. 2)とEgger検知(RR, 0.43)のいずれにおいても出版バイアスは認められなかった。ドパミンまたはノルエピネフリンの投与期間が最も長かった3編のみに限って解析を行っても同様の結果が得られた(RR, 1.11; 信頼区間0.99-1.23; p=0.06)。エンドポイントが28日後死亡率とされた2編についてのみの解析でも結果は同じであった(RR, 1.10; 信頼区間0.99-1.22; p=0.09)。

有害事象およびその他の転帰項目

介入研究のうち2編では不整脈発生率が検討されたが、観測研究のうち不整脈を扱ったものは皆無であった。不整脈発生率を検討した2編はいずれもドパミン群の方が不整脈発生率が有意に高いことを報告している。そのため、ノルエピネフリンに対するドパミンの不整脈発生に関する集積相対危険度は有意に大きいという結果が得られた(Supplemental Fig. 4)。

ICU滞在期間および入院期間は、介入研究二編でのみ報告されていた。ドパミン群とノルエピネフリン群のあいだに、ICU滞在期間(RR, -0.3; 信頼区間, -1.5-1.0; p=0.67)、入院期間(RR, 0.0; 信頼区間, -2.8-2.6; p=0.95)のいずれについても有意差は見られなかった。

その他の有害事象や転帰についてのデータが記されていたのはDe Backerらの研究のみであったため、解析することはできなかった。

教訓 観測研究、介入研究ともにドパミンの方がノルアドレナリンよりも死亡リスクが高いことが分かりました。
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敗血症性ショックの治療におけるドパミンとノルエピネフリンの比較~方法 [critical care]

Dopamine versus norepinephrine in the treatment of septic shock: A meta-analysis

Critical Care Medicine 2012年3月号より

方法

“sepsis” “septic shock” “shock” “dopamine” “noradrenaline” “norepinephrine” “vasopressor agent” “outcome” “mortality” の単語についてMEDLINE、Embase、ScopusデータベースおよびCochrane臨床試験データベースを網羅的に検索した(最終アクセス日 2011年6月30日)。Google Scholarを用いた検索も行った。さらに、臨床試験登録(clinical trials.orgおよびcontrolled-trials.com)および2005年から2010年に開催された主要学会(Society of Critical Care Medicine, American Thoracic Society, International Symposium on Intensive Care and Emergency MedicineおよびEuropean Society of Intensive Care Medicine)の抄録についても検索した。敗血症患者に多剤と併用または単剤でドパミンまたはノルエピネフリンを投与し転帰を比較した研究をすべて対象とした。動物実験、小児患者を対象とした試験、クロスオーバー比較試験は除外した。論文によって死亡率の評価時点にはばらつきがあった。今回のメタ分析では28日後死亡率を転帰評価項目とした。というのも、今までで最大規模の無作為化試験における主要エンドポイントが28日後死亡率だったからである。28日後死亡率を示していない研究については、28日後にもっとも近い時点の死亡率を代替とした。あわせて、有害事象、ICU滞在期間および臓器不全のない日数(昇圧薬非使用日数、人工呼吸器非装着日数および腎代替療法非実施日数)についての情報も収集した。
(以下略)

教訓 敗血症患者に多剤と併用または単剤でドパミンまたはノルエピネフリンを投与し転帰を比較した研究を探しだし、28日後死亡率を検討しました。
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敗血症性ショックの治療におけるドパミンとノルエピネフリンの比較~はじめに [critical care]

Dopamine versus norepinephrine in the treatment of septic shock: A meta-analysis

Critical Care Medicine 2012年3月号より

敗血症性ショックは致死的な病態であり、その死亡率は50%に迫らんとする勢いである。大量の輸液を投与しても昇圧薬を投与しなければ低血圧を是正することはできないことが多い。現在使用されている昇圧薬のうち最も頻用されているのは、ドパミンとノルエピネフリンである。いずれもアドレナリン作動薬であるが、薬理学的特徴は異なる。両剤ともαアドレナリン受容体を刺激し血圧を上昇させるが、ノルエピネフリンよりドパミンの方がこの作用は弱い。だがβアドレナリン受容体刺激作用はノルエピネフリンよりドパミンの方が強いので、心拍出量を増大させる作用はドパミンに分があるかもしれない。とは言え、βアドレナリン受容体を刺激すると頻脈や不整脈を誘発したり、細胞代謝を亢進させたり、免疫を抑制したりする可能性がある。また、ドパミンはドパミン受容体を刺激するので、内臓および腎血流を増やすと考えられているが、重症患者においてはこの作用は臓器不全の予防にはつながらないことが明らかにされている。ドパミン受容体が刺激されると、視床下部-下垂体機能が変化しプロラクチンと成長ホルモンの血中濃度が大幅に低下する。

現行のガイドラインでは、敗血症性ショック患者に使用する昇圧薬の第一選択はドパミンもしくはノルエピネフリンのいずれかとされている。複数の観測研究において、ノルエピネフリンと比べドパミンを使用した場合の方が死亡率が高いという結果が報告されている。ただし逆の結果を示した研究も一編だけ存在する。Cochraneグループが2004年に行ったメタ分析では、敗血症性患者を対象としてドパミンとノルエピネフリンの比較を行い、転帰についての情報を記した無作為化比較対照研究は、わずか三編しか報告されていないことが分かった。対象患者の総計は62名に止まった。そして、この三編はいずれも検出力が不足しており、その時点までに蓄積されたエビデンスからはドパミンとノルエピネフリンのいずれか一方が他方より優れているかを明らかにすることはできないという結論に至った。以降、ドパミンとノルエピネフリンを比較する臨床試験が次々に行われ、この件に関する知見は格段に増えた。そのうち、ドパミンが転帰に及ぼす影響について照準を合わせた試験が二編発表されている。敗血症性ショック患者1044名を含む1679名のショック患者を対象とした大規模多施設無作為化比較対照試験では、ノルエピネフリン群とドパミン群のあいだに転帰の差はないが、ドパミン群の方が不整脈の発生率が高いという結果が得られた。もう一つの単独施設試験でも同様の結果が報告されている。VasuらおよびHavelらが著した最近の体系的レビュー二編において、ドパミンとノルエピネフリンがショック患者の転帰におよぼす影響が取り上げられている。しかしこの二つのレビューでは敗血症性ショック以外のタイプのショック患者も含んだデータを検討して、結果を導いている可能性がある。こういった新しいエビデンスが発表されたことが動機付けとなり、ドパミンとノルエピネフリンが敗血症性ショック患者の転帰に及ぼす影響を比較した観測研究および介入試験についてのメタ分析を行うことにした。

教訓 ドパミンはドパミン受容体を刺激するので、内臓および腎血流を増やすと言われてきましたが、重症患者においてはこの作用は臓器不全の予防にはつながりません。ドパミン受容体が刺激されると、視床下部-下垂体機能が変化しプロラクチンと成長ホルモンの血中濃度が低下します。
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術後疼痛管理ガイドライン② [anesthesiology]

Practice Guidelines for Acute Pain Management in the Perioperative Setting: An Updated Report by the American Society of Anesthesiologists Task Force on Acute Pain Management

Anesthesiology 2012年2月号より

Ⅳ. 周術期における疼痛管理法

・周術期の疼痛管理に従事する麻酔科医は、硬膜外腔またはクモ膜下腔オピオイド投与、オピオイド静脈内投与によるPCA、区域麻酔法といった治療手段の中から、各症例について危険性と便益を十分検討した上でいずれかを選択する。
 ○「必要に応じ」オピオイド筋注というような疼痛時指示ではなく上に挙げたような鎮痛法が望ましい。
・麻酔科医は自らの技能習熟度を踏まえ、個別の状況において安全に実施することができる鎮痛法を選択する。
 ○安全に実施できるということは、選択した鎮痛法の開始後に発生した有害事象を見つけて対応することができるという意味である。
・持続投与法を選択した場合は、薬剤が蓄積することにより有害事象が発生するおそれがあるため特に注意を払わなければならない。

Ⅴ. 疼痛管理における多角的手法

・麻酔科医は可能な限り多角的(multimodal)な疼痛管理を実施すべきである。
 ○禁忌でなければNSAIDs、COX1阻害薬またはアセトアミノフェンを定時投与する。
 ○局所麻酔薬による区域麻酔を考慮する。
・有害事象の発生リスクを極力抑えつつ、最大限の効果が得られる量を投与する。
・使用する薬剤、投与量、投与経路および投与期間は、症例ごとに決める。

Ⅵ. 患者群ごとの注意

・小児患者
 ○子供の痛みに対しては昔からおざなりな対処しか行われてきていない。この慣習を克服するため、強力かつ積極的な疼痛管理を行わなければならない。
 ○痛みを伴う手技や手術を受ける子供の周術期管理の一貫として、発達程度に応じた適切な疼痛の評価と治療を実施する。
 ○鎮痛法は、年齢、体重、基礎疾患に応じて決定し、禁忌でなければ多角的鎮痛法を行う。
 ○疼痛が情動に及ぼす影響を踏まえ、可能であれば行動療法を導入する。
 ○多くの鎮痛薬は鎮静薬と併用すると相乗効果を発揮するため、術中および回復期には適切な監視が必須である。
・高齢患者
 ○周術期管理の一環として疼痛の評価及び治療を行う。
 ○患者の認知能力に適した疼痛評価法を用いる。除痛が達成できていないことを患者自身が伝えることができないことがあるため、積極的に詳細な評価と問いかけを行う。
 ○高齢者は疼痛や鎮痛薬に対して若年患者とは異なる反応を示す場合があり、多くは基礎疾患に起因することを認識していなければならない。
 ○高齢患者は往々にして普段から何らかの薬剤(サプリメント健康食品などを含む)を服用していることもあり、疼痛管理による傾眠などの副作用が重大な事態に発展することがある。有害事象を避けつつ適切な疼痛管理を行うには投与量を慎重に調節する必要がある。
その他の患者群
 ○重症患者および認知能力や意思疎通に問題のある患者に対しては、最適な周術期疼痛管理を確実なものとするため、特別な対処が必要となることがあることを認識しておかなくてはならない。
 ○血圧や心拍数が上昇したり興奮が見られたりする場合は、疼痛以外の原因が除外されているならば鎮痛薬を診断的に投与することを考慮すべきである。

教訓 安全に疼痛管理を行うには、選択した疼痛管理に起因する有害事象を遅滞なく発見し、迅速かつ適切に対処することができなければなりません。
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術後疼痛管理ガイドライン① [anesthesiology]

Practice Guidelines for Acute Pain Management in the Perioperative Setting: An Updated Report by the American Society of Anesthesiologists Task Force on Acute Pain Management

Anesthesiology 2012年2月号より

Ⅰ. 術後疼痛管理に関する方針と手順

・周術期の疼痛管理に関わる麻酔科医は他の職種と適切に協力し、病院職員に対する継続的な教育と訓練に取り組み、自施設内で実施可能な疼痛治療の手段を有効かつ安全に活用できるよう知識と技量を身につけさせるように努めなければならない。
 ○教育内容はベッドサイドで行う疼痛評価をはじめとする基本事項から、高度な疼痛管理法(例, 硬膜外鎮痛法、PCA、各種区域麻酔法)や薬を使わない鎮痛法(例, リラックス法、イメージ法、催眠法)などを網羅する。
 ○最適な疼痛管理を実現するには、新規入職者を自施設の技能水準に適合させたり、全職員の技能水準を維持したり、疼痛管理の手順に何らかの変更を加えた場合にそれを周知するには、教育と訓練の継続的な実施が必須である。
・麻酔科医とその他の医療従事者は統一化された実効的な方法に従い、疼痛強度、疼痛管理法の効果の程度および副作用を定期的に評価し記録するという手順を徹底する。
・麻酔科医には、病棟看護師、外科医またはその他関係する医師からの周術期疼痛管理に関する問い合わせにいついかなるときも応ずる責務がある。
 ○周術期鎮痛法によって何らかの問題が生じた場合には、病棟看護師、外科医またはその他関係する医師は患者評価について麻酔科医に協力する。
・周術期疼痛管理に従事する麻酔科医は、急性痛管理の手法にならって周術期疼痛の治療に当たる。
 ○こうした疼痛管理に関わる麻酔科医は、各施設における統一した方針や手順の策定に関わるべきである。

Ⅱ. 術前評価

・術前評価の段階で、疼痛管理について想定し疼痛に関する既往歴を聴取し理学的所見をとり、疼痛管理の計画を立てる。

Ⅲ. 術前準備

・周術期疼痛管理の術前準備としては、常用薬の適切な調節または継続による禁断症候群の防止、以前からある疼痛の治療、術後疼痛管理に備えた治療の術前からの開始などが挙げられる。
・周術期疼痛管理に従事する麻酔科医は他職種と適切に協働し、患者及びその家族の教育に取り組み、快適な疼痛管理の実現、疼痛の程度や様態の報告、および推奨される鎮痛法の適正実施に関して、患者とその家族には重要な役目があることを伝えなければならない。
 ○有害作用や薬物依存についてのリスクを過大視しがちな巷間に流布する誤解を払拭する。
 ○PCAやPCEAなどの高度な鎮痛手段を患者が使いこなせるように教育するには、術前評価時に鎮痛法について説明したり、鎮痛に関する選択肢について解説したパンフレットビデオを提供したり、術後回診時にベッドサイドで話したりするとよい。
 ○鎮痛法について患者を教育する際には、疼痛や不安感を自分で軽減するための行動療法についての指導を行ってもよい。

教訓 術後疼痛管理を適切に行うには、職員、患者およびその家族に対する教育が重要です。
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