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重症患者の栄養ガイドライン① [critical care]

Guidelines for the provision and assessment of nutrition support therapy in the adult critically ill patient: Society of Critical Care Medicine and American Society for Parenteral and Enteral Nutrition: Executive Summary.

Critical Care Medicine 2009年5月号より

はじめに
医療施設において、栄養は言い尽くすことができないほど重要である。特にICUでは極めて重大な意味を持つ。重症患者は多くの場合、異化亢進状態にあり、全身性炎症反応が起こっている。全身性炎症反応は、感染性合併症の増加、多臓器不全、入院期間の長期化、死亡率上昇につながる。過去30年のあいだに、栄養素の分子レベルおよび生体レベルでの作用が重症患者のホメオスタシス維持に果たす役割についての理解が、飛躍的に進歩した。昔は、重症患者に対する栄養「補助」は、ストレス反応を受けている患者に外から燃料を補給するという程度の、脇役的治療としか見なされていなかった。その目的は、除脂肪体中の維持、免疫機能の維持および代謝関連合併症の回避であった。最近では、栄養「療法」という見方がされるようになり、ストレスに対する代謝反応の緩和、酸化による細胞傷害の予防および免疫機能の改善がその目的となっている。重症疾患に対するストレス反応を栄養によって軽減する方法は、経腸栄養(EN)の早期開始、主要栄養素および微量栄養素の適量投与そして厳密な血糖管理である。早期から経腸栄養を主体とした積極的栄養療法を行うと、重症度が低下し、合併症が減り、ICU滞在期間が短縮し、転帰が改善する可能性があると考えられている。

経腸栄養の開始
1. 一般的な栄養評価法(アルブミン、プレアルブミン、身体測定)の重症患者における有用性は検証されていない。経腸栄養開始に先立ち、体重減少の程度、入院前の栄養摂取状況、疾患の重症度、基礎疾患および消化管機能を評価する(Grade E)。
2. 摂食意欲が不十分な重症患者には経腸栄養による栄養補助療法を実施する。(Grade C)
3. 栄養補助療法を要する重症患者では、経静脈栄養(PN)よりも経腸栄養が優先的に選択されている(Grade B)。
4. ICU入室後24-48時間以内に経腸栄養を開始する(Grade C)。その後48-72時間かけて投与量を増やし、目標投与量に到達させる (Grade E)。
5. 血行動態が不安定な場合は(多量のカテコラミンを要する状態、もしくはそれに加えて大量輸液または大量輸血を要する状態)、蘇生を要する状態を脱するかand/or状態が安定するまでは経腸栄養は見合わせ(Grade E)。
6. ICU患者においては、腸蠕動音の有無や排ガスや排便の有無によって、経腸栄養開始の可否を決める必要はない(Grade B)。
7. ICUでは、胃または小腸のどちらから栄養投与を行ってもよい。誤嚥の危険性が高いか、もしくは経胃栄養投与がうまくいかない重症患者では、小腸内に経腸栄養チューブを留置して栄養を投与する(Grade C)。胃内の栄養剤残存量が多いことのみを理由に経腸栄養を見合わせる場合は、小腸からの栄養投与に切り替えるのが妥当であると考えられる(どれほどの胃内残量をもって多いとするかは、各病院のプロトコルによって異なる)(Grade E)。(「経腸栄養の進捗状況の監視」の第4項参照)

どんな場合に経静脈栄養を行うか
1. ICU入室後7日目までは、経腸栄養を行うことができなくても栄養療法(標準的治療=経静脈栄養)を行うべきではない(Grade C)。重症疾患の発症以前に、タンパク熱量栄養不良(protein-calorie malnutrition;タンパクも熱量も不足している状態)であったことが明らかである場合を除き、経静脈栄養は行わない。経腸栄養を実施できないのであれば、経静脈栄養は入院7日目以降に開始する(Grade E)。
2. 入院時にタンパク熱量栄養不良が明かであり、かつ、経腸栄養を行うことができない場合は、入院後、蘇生処置を適切に行ってから速やかに経静脈栄養を開始するべきである(Grade C)。
3. 上部消化管の大手術が予定され、経腸栄養を始めることができない場合は、以下のような条件に合致するときにのみ、経静脈栄養を実施する。:

  患者が低栄養のときは、手術の5-7日前から経静脈栄養を開始し、術後も継続する(Grade B)。
  術直後は経静脈栄養は行わない。術後5-7日後から開始する(経腸栄養を実施できない場合)(Grade B)。
  経静脈栄養実施期間が5-7日以下であると見込まれる場合は、経静脈栄養を実施しても転帰を改善する効果は期待できず、むしろリスクが上昇する可能性がある。したがって、7日以上の実施が予想される場合にのみ、経静脈栄養を行う(Grade B)。

教訓 ICU患者においては、グル音がきこえなくても、排ガスや排便がなくても、経腸栄養開始可能です。
コメント(2) 

コメント 2

キコさま

食いしん坊な私なので、首の血管から針を刺されて栄養補給するような重病で入院したくない!と常々思っています。
辰巳芳子先生の「いのちのスープ」が重病患者に常に用意されているような粋な病院があったらいいなぁ。生きる気力が増す気がします。
by キコさま (2009-06-15 11:57) 

vril

辰巳芳子先生の「あなたのために-いのちを支えるスープ」をはじめとするご高著は、私のメイン本棚にずらりと並んでいます。練習を重ね、スープ作りの達人となろうとたくらんでいます。辰巳先生のスープは、滋養とcompassionが凝縮されたものなので、キコさまのご指摘通り、生命力増強作用があると思います。重病人だけでなく、現代の半病人にも効果絶大でしょう。
by vril (2009-06-15 13:53) 

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