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成人先天性心疾患患者の麻酔~術中管理② [anesthesiology]

Anesthesia for Noncardiac Surgery in Adults with Congenital Heart Disease

Anesthesiology 2009年8月号より

麻酔法
非心臓手術を受ける先天性心疾患患者の麻酔法については、エビデンスに基づいた推奨事項は存在しない。先天性心疾患において認められる異常は多彩であり、いずれの疾患についても適用できる単一の麻酔管理法を掲げるのは不可能である。しかし、術中管理の最大の目標は、動脈血酸素飽和度の低下を防ぎ、体血流量と肺血流量のバランスを保ち、さらにヘマトクリットを適正化することによって組織への酸素運搬を向上させることである。各疾患についての管理法の概要をtable 2に示した。

Table 2 各疾患の麻酔管理の要点

ASD
解剖・生理 左右シャント
問題点 小~中程度の大きさの欠損では無症状のことが多い、心房細動(特に40歳以降で根治術を行った場合)、奇異性塞栓、大きい欠損があると不整脈、運動耐容能低下、まれに肺高血圧を来す(5%未満)
麻酔管理の要点 静脈路から空気を除去する

VSD
解剖・生理 左右シャント、他の心奇形を合併することがある
問題点 
  根治術未実施:大きい欠損は肺高血圧症のリスク(2歳までに50%がなる)、小~中欠損は心内膜炎、肺動脈弁下狭窄、大動脈弁下狭窄、大動脈弁逆流のリスク、右心不全
  根治術後:完全房室ブロック(まれ)、肺高血圧症の持続、不整脈
麻酔管理の要点 
  根治術未実施:左右シャントの管理、右左シャントがある場合は肺血流量を保つ、術後肺炎のリスクが高い
  根治術後:ペースメーカの管理

大動脈縮窄症
解剖・生理 左室の圧負荷と肥大、大動脈の枝から側副血行路、大動脈二尖弁の合併(50-80%)、内皮障害(瀰漫性の大動脈血管壁病変)
問題点 上肢と下肢で血圧に差がある、胸部手術では大出血の危険性、左室肥大と左室拡張障害、高血圧、大動脈瘤、冠動脈が未発達、脳動脈瘤(10%)
麻酔管理の要点 鎖骨下動脈の血管形成が行われていると左上肢の血圧は当てにならない、術後高血圧、頻脈や低血圧を避ける

大動脈弁狭窄症
解剖・生理 左室の圧負荷と肥大
問題点 
  根治術未実施:肺水腫、肺高血圧、心筋虚血、失神、狭窄後拡張
  根治術後:大動脈弁逆流、左室拡張障害
麻酔管理の要点 根治術未実施:頻脈や低血圧を避ける、心筋酸素需要を増やす要因を避ける

修正大血管転位
解剖・生理 左室は肺へ血液を送り、右室が体心室として機能する
問題点 
  根治術未実施:完全房室ブロック、不整脈、解剖学的右室不全、大動脈弁逆流
  根治術後:未実施の場合と同じ
麻酔管理の要点 ペースメーカの管理、体外式ペースメーカの準備、不整脈の治療、心不全の治療

ファロー四徴症
解剖・生理 肺動脈弁狭窄、右室肥大、大動脈騎乗、VSD、チアノーゼ
問題点 
  根治術未実施:まれ(根治術を行わなければ25歳までに死亡)、右左シャント、チアノーゼ 
  姑息術後(BTシャント):左室容量負荷、シャントが小さければチアノーゼ、肺高血圧
  根治術後:洞および房室結節機能障害、不整脈、上行大動脈瘤、肺動脈弁逆流または狭窄の遺残、VSDの遺残、左室機能障害、肺高血圧症の持続、右心不全
麻酔管理の要点
  根治術未実施:頻脈、血管内容量低下、心収縮力増強を避ける
  姑息術後:肺血流量を保つ、体血圧を保つ
  根治術後:不整脈の診断と治療、ペースメーカの管理、体外式ペースメーカの準備

D型大血管転位
解剖・生理 肺動脈は左室から出る、大動脈は右室から出る。VSD, ASD, PDA, 肺動脈弁狭窄、大動脈縮窄症などを合併することがある、冠動脈の解剖異常
問題点 
  根治術未実施:VSD, ASDまたはPDAを合併している
  根治術後(SenningまたはMustard):心房性不整脈、洞結節機能障害(40歳までに50%がペースメーカを要する)、体心室の機能低下、心房または心室レベルでのシャント遺残
  根治術後(動脈スイッチ):心筋虚血、上行大動脈瘤
麻酔管理の要点 
  根治術未実施:肺血流量を維持する 
  Senning/Mustard後:不整脈の管理、心不全の管理 
  動脈スイッチ後:綿密な術前評価(心機能の評価および冠動脈検査)

単心室
解剖・生理 両房室弁が単一の心室に付いている
問題点 
  根治術未実施(まれ):不整脈、鬱血性心不全、両方向性シャント、チアノーゼ、肺高血圧
  根治術後(BTシャント、GlennシャントまたはFontan):不整脈、心不全、肝機能障害、血栓塞栓症、拘束性肺障害
麻酔管理の要点 
  根治術未実施:不整脈の治療、肺血流量の維持
  根治術後:不整脈の治療、肺血管抵抗を低くする、前負荷を保つ、凝固因子の補充

教訓 先天性心疾患患者の術中管理の最大目標は、動脈血酸素飽和度の低下を防ぎ、体血流量と肺血流量のバランスを保ち、さらにヘマトクリットを適正化することによって組織への酸素運搬を向上させることです。
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